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2006年6月26日

品川女学院 現地見学

6月例会 6月26日(月)13:15?15:00
場所:品川女学院 品川女学院実地見学
集合場所 京浜急行線 北品川駅改札口
     品川駅の隣、改札口は1箇所です
     集合 13:15 時間厳守
訪問 13:30?15:00
校長・教頭先生に質疑応答 14:30?15:00

レポート  榊原 高明

 はじめに;品川女学院再生成功事例研究の現場見学の機会を与えて頂きました、漆校長、鈴木教頭に感謝申し上げます。また、この実現に尽力下さいました矢澤さんに感謝いたします。
 情判学、脳力開発的分析、総括は次号の発表ですので、今回は現場的臨場感をお伝えすべく、Q&A形式で報告します。

1.鈴木教頭のお話
 28歳になったとき社会で活躍している女性を育てる(28プロジェクト)を強く打ち出しています。
 社会と学校との係わりを重視しています。社会の教育力を取り込むことを積極的に行っています。
 本校の生徒の特徴は、笑顔の子、元気でイキイキしている子が多いこと。その分マナーとのバランスが課題になっています。

――校内見学を終え漆校長のお話をお伺いしました。

2.漆校長のお話
 私の一番古い記憶では4歳のときに学校の先生になろうと決めていました。生まれる前から先生になろうと思っていたのではないかと思うほどです。
 教員になったら必要と思ういろいろな資格や知識を蓄積しました。

Q1:“ご自身が貴校の経営者になると思われていましたか”
 A:漠然とは思っていました。始めは他校の教員になりました。母が体調を崩し、学校が厳しい状況にあるのを知り、戻る時期は今しかないと思って、予想より早く本校に戻りました。
 一番初めに着眼したのは、学校は誰が主役か、ということです。もちろん生徒ですが、彼らに良かれと思っていてもそうなっていない事もいろいろ行われていました。中に居ては見えないそういう事を、一つ一つ直していく必要があるのではないかと感じていました。

Q2:“古い感覚では、女子教育は良妻賢母といった面がありますが、ノビノビとした教育ということですが、何か転換があったのではないでしょうか”
 A:我々は良妻賢母を否定していません。
家庭と職業の両立を目指しています。本校の創立の時、創立者が、女性が社会で必要とされる力を付けようから始まっています。そのただ、必要とされる力はその時代々で変わってきます。

Q3:“企業とのつながりを重視していますが、その狙い、成果は”
 A:企業というよりは社会との繋がりを重視しています。生徒たちに常に将来社会とどのような係りを持ち、自分はどういう人間で、何に向いているか、という事を意識させたい。

Q4:“卒業生の中には、高校時代のほうが良かったと感じる生徒もいるのではないか”
 A:確かにいます。大学の方が進んでいない面もあります。
 今考えているのは、卒業生達ともずっと本校と係り持ち、ともに成長できるシステムです。例えば、投資家役の卒業生の前で起業のプレゼンをして文化祭の模擬店出店を競わせるとか、卒業生同士がネット上で繋がれることや、卒業生と生徒が参加できるサロン的な場所も考えています。
 日本は第二次雇用マーケットが成熟していない。仕事を手放してしまうと、30歳前後で大変孤独で悩むわけです。創立者のことを思い出しますが、「だから国が悪いと言ってもしょうがない。本校で何が出来るか考えること」。28歳以降もフォローし続けようというのが本校の考えです。

Q5:“大学でも自分を見失っている者が多い。貴校のビジョンを大学で活かす事について”
 A:18歳を越えれば自分の責任は自分で取るべきだと思います。中高時代にある程度きちんとしたビジョンを持った人間にする事が大切。大学ももう少し他校との連携など柔軟性があってもいいのではないでしょうか。

Q6:“先程のような大事な時期にやるべき教育が出来ていないので、自分がやらなければ、との使命感があったのでは”
 A:国もやらない、大学もやらない、だから自分がやるという気持ちです。

Q7:“学校を変えようとされた時、反対者を辞めさせることはしなかったとブログにありますが”
 A:経営については素人でした。そのようなことを知らなかったこともあります。皆さん学校のためと思っていることが、ずっと中に居ると客観的に判断出来にくくなります。それで、なるべく、外の人に話してもらったり、外の情報を中で共有すると、まずいと気付いてくれます。方法論ではぶつかることはありました。
 前校長の人柄が良く、率先垂範型で、謂わくば彼のリーダーシップに皆が乗って、そこに私がどんどん新しいことをくっ付けていったと思います。

Q8:“学内の認識が世の中とギャップがあることを気付かせた訳ですね。
 A:塾の先生や外の人からこのままでは危ないとか、いろいろ聞かされていました。外から来たので違い気付いたということです。
 聞いて、教わったことを一つ一つすぐ実践していったらこうなった、偶然上手く行ったという感じです。いろいろな要素が上手く回らなければ、とてもここまで来られません。

Q9:“6年間だと中だるみが出ると思うが”
 A:仕事とか将来の刺激をいつも与えるようにしています。

Q10:“貴校の生徒さんは楽しそうで、元気が良いと感じますが、教育だけではこうはならないと思いますが”
 A:あれは本校の企業風土というか文化になっています。これは改革後だと思います。
 前校長の希望ですが、毎日楽しくなければ始まらない、その後で勉強などいろいろやれば良い、との考え方です。

Q11:“世界を心にという面白い表現がありますが”
 A:世界の中の日本という理解が大事です。世界で活躍するには、まず自分の国の伝統を理解し、自国の文化に誇りを持つことを基本スタンスにしています。その為に、茶道、華道、着付けなどを教えています。

Q12:“最後に、これからの漆校長の夢などをお聞かせ下さい”
 A:学校が学校の枠を超えて、一つのプラットフォームのようになり、そこに卒業生や社会人、企業人がいてお互いが繋がる場造りをしたい。できれば、近くの財閥の広い敷地を活用して総合学園を作ってみたい。そうすれば、親と上手く行かない子や地方の子も入学できます。そういう、人と人とが繋がる場所を学校という場で作りたいと思います。

――“本日はお忙しい中本当に有難うございました”

* 漆校長については、厳しい状況にあった学校をここまでにされた改革者、かなりアグレッシブな女性をイメージしていましたが、見事に裏切られました。女性的でとても魅力的な方でした。教育者としての情熱と自信がひしひしと伝わってきました。  生徒さん達のイキイキとした素晴らし い表情、笑顔が印象的でした。このよう な立派な教育をされている学校があるこ とを知り嬉しく思いました。