« 2008年9月 | メイン | 2008年12月 »

2008年10月10日

「ストレスを物語として扱う」

日時  : 10月7日  火曜日
      18:30 ~ 20:30
場所  : 港区立商工会館 6階
テーマ : 「ストレスを物語として扱う」
担当  : 情勢判断学会運営委員
NPO法人 家族のこころのケアを支援する会 研究員 田中 達也

今年度のテーマ「ストレス」を、心理カウンセラーを目指して勉強中の立場からお話しさせていただきます。

 心理カウンセリングには様々な技法があります。いわば流派のようなものです。
 その中で私は「家族療法」という療法の実践者を目指し、勉強をしています。
 さらに、私たちの研究グループは、新しいカウンセリングの技法として注目を集めている「ナラティヴ・セラピー」の習得を目指しています。

 ナラティヴ・セラピーは、家族療法から発展したカウンセリング技法です。
 この技法の大きな特徴は、速効性です。
ナラティヴ・セラピーは、これとは別に発展した「短期療法」ともコンセプトは似ていますが、相談者の状態を早期に改善に導くこと、相談者の経済的負担を軽減すること(精神分析やロジャーズ療法では数年かかることもある)を目的として開発されました。
 その効果は、私の師匠である家族療法家の斎藤利郎の実践により明らかです。通常、半年以上はかかるカウンセリングプロセスが、3?6回の面談で終了することができるようになったのです。現在は、この技法をもっと日本人に馴染むものにするため、研究改良を重ねているところです。

 ナラティヴ・セラピーの技法をひと言でいえば、「問題の外在化」です。この言葉でほぼすべてを言い当てているといえるでしょう。この技法では、相談者が抱える問題は「内在化」されていると考えます。
「私、うつなんです」
「私の育て方が悪かったから、息子が引きこもりになってしまったのです」
相談者は大抵、自分がいかにかわいそうな人間であるか、あるいはいかに罪深い人間であるかを語ります。しかし、それは外部から相談者に侵入してきた問題であり、相談者自身の人間性とは関係ないものだという解釈をおこないます。相談者は全く問題ではない、問題なのは相談者に侵入した問題自身だ、と考えることにより、相談者の状態を改善に導くための技法が、ナラティヴ・セラピーなのです。
 そのために、ナラティヴ・セラピーでは独特の言語表現を用います。「外在化言語」と呼ばれる表現で質問を積極的に行い、相談者の問題を外在化に導きます。

 「ストレス」も、最初は外部からの刺激として認識されます。しかし、それが強度で、しかも長期にわたると、自分自身の欠陥として自分の中に取り込まれ、心の問題を引き起こすことになるのです。ですから、ストレスを外部からの侵入者として留めておけば、深刻な心の問題に発展することはないということなのです。
 その意味で、ナラティヴ・セラピーの基本的な考え方を知っていただくことは、ストレスに負けない心づくりに有効ではないかと考えます。

 今回の発表は、こういった特徴を持ったナラティヴ・セラピーの立場からストレスを見つめ、その対応について考えていきたいと思います。
 どうぞよろしくお願い申し上げます。