« 2011年11月 | メイン | 2012年1月 »

2011年12月28日

平成23年11月例会の報告

日時  : 11月9日  水曜日
      18:30 ~ 21:00
場所  : 港区立商工会館
テーマ:DVD「東西古今人間学」鑑賞会第4回

今回の鑑賞会も前回同様に、まずは第2巻第4回の前半を1時間強かけてお聞きし、先生のお話をベースにして、お互いに情勢判断学にご関心のある方々ですので、意見交換する時間を設けたほうが良いと考え、後は参加者の意見交換の場といたしました。     
今回の報告としては、お聞きした第2巻第4回の要旨を私なりに整理し、意見交換の要旨を整理しました。

DVD「東西古今人間学」第2巻第4回要旨

赤壁の戦いにみる人間学

1.戦略は大胆に決める。
  北から曹操軍100万が攻めてくる。これに対して南は、劉備軍5万と孫権軍10万から15万、両方合わせても15万から20万程度。
  これではとても敵わないから降参しようという意見が出てくる。一方、断固戦おうという意見も出てくる。どっちを取りますかということになってくる。その時に戦術問題のみに目をくれていると、100万に対して、15万から20万では敵わないから何か勝つ方法が無いのか、方法が見つからないと決められないと言っていたら駄目なのです。
  やるのはそこにいる人間ですから、これまでの経験や知識に縛られているので、新しい方法、戦術はやって見なければ分からない。
  決心覚悟により、戦略を決定することにより、戦略到達目標を設定できれば、新しい方法、戦術はいくらでも出てくる。
  孔明と孫権の会談において、曹操軍100万人に対して、当方20万人であり、どうしたらよいのかと孫権が尋ねてきたので、孔明は降参したらばいかがですかと応えた。更に孫権がそれなら劉備はなぜ降参しないのかとたずねたのに対し、我が主君劉備は漢の皇室の縁戚であり、天下の英雄ですから曹操ごときに膝を屈することは無いのだと答えた。これに孫権は憤然として席を立ったとしている。
  孔明からすれば、将たる孫権が明確にすべきは戦略であるのに、戦略を明確にせずに、どうしたらよいのかと方法を求めてきたことによる。
  その後、孔明は孫権の覚悟を引き出し、協同して曹操軍に当たることとなる。
  
2.戦術は細心に。
  戦略は大胆に決めるが、戦術は細心に、コツコツと積み上げていくことが大切。状況把握のために点検と確認をする。
  有利な点、不利な点等具体的に自分の目で、確定的事実を掴み、分析をする。
  曹操軍100万といっても、直轄軍は20万程度で、残りの80万は北方で曹操軍の傘下に入った寄せ集めであり、戦っても自分を守るのに精一杯で、100万といっても連帯心は無い。
  戦場は揚子江であるが、曹操軍は殆ど陸軍で、海戦の経験も無い。一方呉軍は海軍部隊である。
  総司令官の周瑜が陣配りをした。その会議で周瑜は孔明に今何が1番大事かと尋ねた。これに対し、孔明は石弓の矢を揃える事でしょうねと応える。そのようなやり取りの結果、孔明は周瑜に対し、石弓の矢10万本を3日以内に確保する約束する。
周瑜は孔明を亡き者にするチャンスと考え、孔明が約束を守れない場合には、命を差し出すと約束させ、魯粛に見張らせる。
  孔明は3日目の夜に、各船には麦藁を積み全面を幔幕で覆い、2~30隻の船団で、曹操軍の面前に押しかけ、銅鑼を叩き大声を上げる。その日、夕方から揚子江の上を深い霧が立ち込め、船の状態が曹操軍からははっきり見えず、狼狽した曹操軍はまだ海戦の準備も出来ていないこともあり、石弓矢を打ち込んできた。打ち込んで来た石弓矢を集めると10数万本になったとのことである。
  3日目の夜に河の上には靄が立ち込めることをどうして分かったのかとの問いに、孔明は、天候、気象が分かっていなければ将とはいえないとのことである。

3.次の戦術として、周瑜と孔明の間で、火攻めという相対的な方針が決まる。次に一つずつ条件を作っていかねばならない。
  敵に有能な海軍指揮官がいては困る。すぐに対処されてしまう。調べてみると、荊州の劉表の下にいた司令官、蔡瑁・張允で海軍のことは詳しいとのことで、曹操軍の海軍提督になっていた。これをどうしたら除けるかなと考えているところに機会がやってくる。方針を持っていると機会が掴める。
  周瑜の同窓生、蒋幹が曹操の幕僚という身分を隠して、周瑜を訪ねてきた。周瑜は蒋幹を歓待し、巧みに蔡瑁・張允からのニセ手紙を掴ませ、曹操に蔡瑁・張允を殺させる。
  次にどうするのか。火攻めの効果を挙げるためには、船を繋げさせねばならない。曹操に繋げるように仕向けねばならない。
  人間と人間との関係をどう作るか。人間の動きの測定が出来れば人を利用できる。
蒋幹が再び周瑜を訪ねてくると、周瑜は蒋幹を山の中の一軒家に軟禁してしまう。蒋幹を?統に合わせるように仕向け、蒋幹は?統を曹操に引き合わせ、曹操は?統の才能にすっかり感心し、水軍についても意見を求める。軍医の話から、船酔い対策を導き、船が揺れないように鎖でつないで、大艦船を構築させてしまった。
  後は火をつければよいのですが、どうやって火をつけるかという問題が残ります。こちらの火付け役の船が、向こうにまったく阻止されないで、どのように近づけるかという問題です。ここで、反間苦肉の謀が出てきます。
  周瑜の部下で黄蓋という大将が軍議の席上、周瑜と対立し、皮肉の刑を受け、曹操の下に糧秣輸送船を奪い黄竜の旗を立て降参するということを、友人の参謀?沢が曹操に受け入れさせた。
  もう1つ足りないものがあります。それは風です。いつも西北の風が吹いているので接近しようとしても逆風ですし、火をつけても向こうに燃えていかないで、こちらが焼かれることになってしまう。だからどうしても東南の風が必要なのです。そこで三国志演義の中では、諸葛孔明七星団を築き、奇門遁甲の術を使って、3日3晩の東南の風を借りようというのです。大体孔明という人は天文気象に通じていたので、いつ頃東南の風が吹くかということは予測していたのでしょう。
  東南の風が吹き出したとたんに全軍進撃!
  計画通り目的を達成し、劉備と孫権は大勝利を得た。

4.戦略は大胆に決めねばならないが、戦術も大胆にやったら、失敗する。
  戦術は細心に、一つ一つ積み上げていかねばならない。一つの条件が出来ると次の条件が出てくる。一つ一つの条件を変えていくことが仕事である。積み上げていく継続性が無ければ成功しない。その継続性も同じことを継続していくのではなく、一つの条件を満たせば新しい条件が出てくるので、一段一段積み上げていかねばならない。
  人間をどのように配置し、人間をどのように評価し、どういう風に人間を使うかという問題が大切である。
  人間と人間との関係をうまく構築すると出来ないと思っていたことが出来てしまう。

<鑑賞後の懇談会要旨>

1.今回のお話の中で、感銘を受けたのは人の使い方である。自分の配下をうまく使うのに、その人の心を読むことが大切だと思う。更に、敵さえもうまく使い動かすというのはすごい。謀略が高度の戦術として使われている。

2.城野先生の戦略論と日本の教育について。
  城野先生の戦略論にしろ、脳力開発にしても、それぞれの人が自らチャレンジして獲得していかねばならないが、これまでの日本の教育は画一的な知識教育が主体で、人を育てるとか、生きる力を伸ばしていくという視点が欠けている。

3.国のあり方とリーダーシップについて。
  日本の場合には、農耕社会を基盤にしているから、大陸的な狩猟社会とリーダーシップのあり方が異なっているといえる。
  このようなことから、現在のような政治のリーダーシップの無さに繋がっているし、国歌に対する姿勢にも表れているようだ。

4.鎖国論とグローバル化について。
   ギリシャ問題に象徴される国家財政の破綻が世界的な傾向になってきている。
企業や金融が国家の枠を超えて、グローバル化が進展している。今後世界連邦的な方向へ進むのかどうか。
  このような環境において、TPP論議が盛んであるが、どちらかというと鎖国論的な意見が多いようだ。
  我が国としての戦略を見極めるリーダーシップが不可欠のようだ。
 
  以上