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2014年1月12日

平成25年12月例会の報告

日時  : 12月11日 水曜日 18;30 ~ 21;00
テーマ :「顔面表情読解を通した円滑なコミュニケーションのあり方第2回-微表情と嘘」
場所  : 港区立商工会館
担当  : 清水 建二

12月開催の情勢判断学会では、本年9月開催の微表情セミナーに引き続き、多くの方に参加して頂きました。皆様の洞察力優れたご意見・ご質問のお陰で、大変盛り上がった会となりましたこと、ここに感謝申し上げます。それではこれより平成25年12月11日に開催されました情勢判断学会の報告をさせて頂きたいと思います。

12月に開催されました表情読解セミナーの概要は表1の通りです。
1 「嘘という現象―嘘とは何か?」では、人を傷つける嘘や自己の利益追求を目的とした嘘だけではなく、日常的につく嘘や他者を思いやる嘘を取り上げることで、嘘現象の複雑さを考えました。
2 「嘘を見抜くことの効用」では、犯罪に関わる嘘・日常的な嘘を問わず、嘘をつく人の身になって考えることで、他者理解―人間の利己心・思いやりの心・気遣い―を促進するきっかけになることを考えました。
3「 嘘発見の歴史-古代の嘘探知法・言語分析・非言語分析・ポリグラフ検査法・脳波測定法」では、嘘を探知するために人間の英知がいかに注がれてきたかを時系列、分野別に紹介させて頂きました。
4「 嘘探知の精度―どのくらい正確に嘘を見抜けるのか?」では、嘘探知率の現状、精度を分野別に比較しました。
5「 非言語分析と嘘」では、世間で見聞きする嘘探知法が本当か否かを検証し、嘘を探知するのに有用な非言語上の手掛かりを最新科学の知見を基に解説させて頂きました。
6「 微表情と嘘」では、話者の言動、つまりセリフと微表情の不一致度合いを探知することによって嘘探知の精度を向上させる可能性を探りました。
7「 質疑応答」では、ベルギーに本社を置くthe Center for Body Language (http://www.centerforbodylanguage.com/)の創設者でありボディーランゲージの専門家でもあるPatryk & Kasia Wezowski夫妻にSkypeを通じて登場して頂き、顔の表情及び嘘探知法について質疑応答をして頂きました。最後に、私と参加者の皆様との間でも質疑応答をさせて頂きました。

「嘘発見の方法」と聞くと何か、他人の心を覗く、他人の心を操る、といった否定的なイメージが感じられると思います。本セミナーではそういった否定的な側面から嘘を捉えるのではなく、嘘を理解し、嘘現象の多様性を捉えることで、他者をより理解し、より良いコミュニケーションに活かすことの出来る方法を考えることに傾注しました。結論といたしましては、①「嘘を見抜く絶対的な方法は、最先端科学の知見を利用してもない」ということ、②「様々な嘘の中でも感情に関わる嘘は見抜きやすい」ということ、③「嘘発見のカギは、表情と言葉のタイミング、ズレを感知する」ということ、④「相手の立場に身を置くことで、嘘をつかなければならない相手の思い、人間の心というものの一端を理解出来る」ということです。

参加者の皆様のご協力のもと、穏やかな雰囲気の中でセミナーを進行させて頂くことが出来ました。素晴らしい会に招いて頂きありがとうございました。またの機会を楽しみにしております。

表1 表情読解セミナー概要
タイトル 概要
1 嘘という現象―嘘とは何か? 刑事罰に関連する嘘から日常的な嘘等、様々な嘘から嘘という現象を考える。
2 嘘を見抜くことの効用 事件や事故そして出来事の真相解明という直接的な効用から他者理解を促進させる効用を考察。
3 嘘発見の歴史-古代の嘘探知法・言語分析・非言語分析・ポリグラフ検査法・脳波測定法 今日まで人類がどのように嘘を発見する方法に精力を注いできたか、古代の嘘探知法から21世紀の最新科学の知見に基づく嘘探知法を紹介。
4 嘘探知の精度―どのくらい正確に嘘を見抜けるのか? 現代の嘘発見法の嘘探知率はどの程度なのか、それぞれの探知法の精度を比較。
5 非言語分析と嘘 嘘とそれを示す手掛かりとの関係を解説。
6 微表情と嘘 微表情を利用した嘘探知の方法を解説。
7 質疑応答 顔面表情及び嘘探知法に関する質疑応答。

参考
4 「嘘探知の精度―どのくらい正確に嘘を見抜けるのか?」
精度(単位:%)
真実 嘘
言語分析 72 66
非言語分析:
一般※1 63 48
非言語分析:
プロ※2 56 56
ポリグラフ検査 83-99 76-88
脳波測定 88 82
参照:Aldert Vrij. (2008). Detecting Lies and Deceit Pitfalls and Opportunities. Second Edition. John Wiley & Sons, Ltd., p.391を基に作成
※1「一般」とは、普段、嘘を見抜くことを仕事の一部にしていない人々のことを示している。
※2「プロ」とは、普段、嘘を見抜くことを仕事の一部としている人々のことを示している。例えば、警察官、検察官、弁護士、FBI捜査官、CIA、シークレットサービス等の職業が含まれている。
※3データは全て実験室研究によるもの

6 「微表情と嘘」
問:以下の人物の感情状態を推定して下さい。
hyoujou.jpg

「そのご提案は素晴らしいですね。」
(感情が先に生じ、続いてセリフが述べられた状況)

解説
通常、言葉は感情の後に述べられます。従って言葉が述べられる前に現れるほんの一瞬の表情―微表情―を感知することによって、その人の真の感情状態を知ることが出来ます。
本ケースでは、「そのご提案は素晴らしいですね。」というセリフの前に「軽蔑(正確には笑顔で偽装された軽蔑)」の表情が確認できます。「軽蔑」とは相手を見下す感情ですので、言葉では、「素晴らしい」と言いつつも、本心では自分の考え、提案の方が優れており、相手の提案を見下している、もしくはその片方の感情状態であることが推定されます。結論的には、相手がこちらの提案を受け入れる可能性は低いと判断出来ます。

ちなみに私もビジネスミーティングで多々このケース、この「表情+セリフ」に出会います。私の体験の範囲で限定的に申し上げるならば、この表情を観察した時に、私の提案が通ったことはこれまで一度もありません(笑)。

講師紹介
清水建二 ? 微表情トレーナー、認定FACSコーダー
the Center for Body Languageで認定された日本人初の微表情トレーナー。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、東京大学大学院でメディア及びコミュニケーション論について学ぶ。学際情報学修士。大学院での学問を基に表情研究をはじめ、米国の研究機関よりFACS(顔面動作符号化システム)コーダーの認定を受ける。微表情に関する各種認定証を保持している。
 METVのトレーニングページ及びトレーニングマニュアル、書籍に関する日本語訳を担当している。微表情を用いた効果的なコミュニケーション方法を広く日本に広めるために日夜、研究、セミナー等の活動に従事している。

清水建二の紹介及び問い合わせ先に関するページ
http://www.microexpressionstrainingvideos.com/kenji-shimizu/

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