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2015年7月14日

平成27年6月例会報告

日時  : 6月11日 木曜日 18;30 ~ 20;30
テーマ :城野先生の著書から学ぼう「第三の経済学」を輪読しよう第2回
場所  : 港区立商工会館
担当  :古川 彰久

城野宏著「第三の経済学~『経済学』の崩壊と新生」を参加者で輪読し、情勢判断学を活用してどのように経済問題に対し取り組むことができるのか、お互いに学びましょう。

城野先生の中国から帰国後の略歴を見てみよう。
1964年(昭和39年)
4月最後の中国3戦犯として、51歳で帰国。
1969年(昭和44年)
城野経済研究所発足。情勢判断学・脳力開発を提唱。
1970年(昭和45年)
4回にわたり日本のトップ企業からなる経済使節団を率い、団長としてアラブ諸国を歴訪。故サダト大統領など各国首脳と会談、日本アラブ協会理事長として親善・経済発展に尽力する。故チトー大統領(ユーゴスラビア)とも親交があり、両国の経済発展に寄与した。
 財団法人日本教育文化協会理事長、産業新潮社会長に就任。

26年間も日本を留守にしていたとは思えない行動力であります。
城野先生のお考えの中に、日本経済における重要な事項として、資源問題をどのように対応するのかという視点があります。
前回、小生が取り上げた「アラブ・アフリカ認識の転換と新しい日本国家戦略」はまさに日本の国としてやるべきことを率先して実行されたということで、城野先生の行動力の表れといえましょう。

今回の参加者の中で、すでにこの書物を読んだ方から、どの内容を見ても、これまでの経済論評でない、実践の中での洞察力の素晴らしさが指摘されました。

今回は、榊原氏から、「経済論争と国際謀略」が取り上げられました。以下に要点を抜粋しよう。

1. 二つの経済論
日本でも、種々雑多、無数の経済論議が繁盛しているが、その方向を大別すれば、日本経済をいかに発展させ、国民生活をいかに高めるか、という議論と、それをいかに衰亡させ、いかに低めるかという議論の二つになってしまう。現状維持論は、周辺の万物がすべて発展拡充にある環境の中では、結局は衰亡低下の議論に属することになる。
経済論議は、まず第一に、出されている主張が、はたして右の二つの戦略方向のいずれに属するものであるかを判定することからはじめねばならぬ。

2. 日本経済の中心的問題
現在の日本経済において、四つの中心的問題がある。円切り上げ、外貨、労使関係と公害問題である。

3. 方策のない公害論議
工業産物は大部分が人間生活に有益で、人間の生存に適当な環境を作るのに役立った。だからこそ、自然のままに放置すれば、人類の生存を阻害した微生物、動植物、気候地形条件を変革し、急速に世界人口を増大し得たのである。日本の死亡年令平均が六十才をこえ、スウェーデン、スイス等の人口の少ない「福祉国家」と並ぶまでになったのは、近代工業によって生存環境を適切になし得た証拠である。しかし工業産物の一部は、人体にマイナス作用を及ぼす。人も物も量が増え、その悪影響の面が現れた。その悪の部分を公害というのである。
日本は積極的に外貨を使い、他国の公害減、減の優れた技術はどしどし導入してよいのである。また日本人自身も具体的研究と施設に努力すべきだし、その努力のないところはさせるようにするのが、政治家、文化人、経済人の役目であろう。そういう具体的方策がないから、輸出を減らせ、貿易至上主義を改めろ、経済成長をおさえろ、働くな、企業をつぶせということになってしまう。その仰せのとおりやったら、それこそ日本人の生活をますます切下げ、福祉、社会資本充実などにますます手がまわらなくなってしまうだけである。

4. 必要な労使関係の再編成
労使関係も日本の現実に即して、国際謀略を排除する必要がある。
労働者、資本家という名称の分け方が、誤解をもたらすのかもしれぬ。実質的には全般の経営統制を取る管理人員と、実戦部隊である生産、流通の実働者との担任区分にほかならない。「労使関係」も、こうした実態に即して、道理も法令も再編成してみる必要がある。

5. 国際謀略の判定基準
国際謀略は、自分で見破らなければならない。
すべての事物にはプラス面とマイナス面の両面をもち、どちらか一方だけで存在することは出来ない。だから、常にプラス面の発揮に重点をおき、マイナス面との間の調和をはかる以外に策のとりようはないのである。一方にだけふれる議論は何らかの私心に基づくものと判定してよい。
経済論議における国際謀略は、かなりの費用をかけて進行しているようである。日本の真の知識人は、この謀略を見破り、国民大衆が自ら見破ることのできるように啓蒙してゆく義務と責任がある。経済の実際活動に従事している財界人は、特に自己の実際体験を披歴して、日本経済の実態を啓蒙する任務があり、また同時に、公害も口舌の論よりも、企業自ら実践をもって克服の方法を開発し、天下に示す仕事があるのである。

城野先生がこの本を書かれた昭和四十八年当時の経済情勢を背景に、戦略戦術論を分かり易く説かれています。
参加者それぞれの体験をもとに活発な意見交換が行われました。
経済は常に世界的な規模で動いていきますので、その時々の情勢を適格に把握し、その中で各自がどのような行動をとったら良いのか、戦略判断が大切なことを再認識いたしました。