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2017年9月24日

平成29年10月例会報告

日時  : 10月12日 木曜日 18;30 ~ 21;00
テーマ :【Ⅿ】Ⅹ【h】=± の意味の解説
場所  : 港区商工会館
参加費 : 1000円
担当  : 榊原 高明

城野先生の重要な指針の一つである「両面思考」は物事を多面的に見る視点を持てるので、しばしば利用してきました。
ただ、メスとドスの関係の様に、何故同一のものが、プラスに働いたり、マイナスに作用するのか、その理由を考え続けてきました。
その結果、森 政弘さん(当時 東工大教授、ロボット博士として有名)の著書の中で、この疑問解明のヒント--「無記(むき)」という仏教用語に出会いました。
無記とは、善でも悪でもないもの。それ以前のものの意味。
表題の 【Ⅿ】Ⅹ【h】=± とは――
【Ⅿ】:無記(むき-Muki)
【h】:人間(human) 
± :結果、プラス面マイナス面、善と悪

1. 無記とは
 森さん曰く:この知慧は大自然のもの。釈尊の発明ではなく、釈尊が発見された天地の真理。仏教は「無記」を発見した。これは人類の知恵の歴史の上で特筆すべきことである。
⑴あらゆるものについて、善悪、役に立つ、立たないの価値観を持ち込まない。
⑵悪作用を示すものも、制御して使えば善なる作用をする。(悪の善転)
⑶善も悪への転落の可能性を有する。(善の悪転)

2. 無記の具体例
⑴ 【メスとドス】
無記:先端が薄く尖ったへら
プラス面:メス(善)
マイナス面:ドス(悪) 
同じ刃物が、なぜプラスに働いたり、マイナスに作用するのか。その理由は式【Ⅿ】Ⅹ【h】=± の
【h】=人間の項にある。無記にどう人間が係るか、それ次第でプラスにもマイナスにも作用する。刃物に初めから両面あった分けではない。
我々はつい善とか悪といった価値は外側の物体に付着していると思いがちである。善悪は客体の属性だと信じ込んでしまい易い。
城野先生流に解釈すれば、ドスが悪いからと言って、刃物をこの世から抹殺したら、メスも存在しなくなる。もし、あなたが盲腸になってしまい、手術を受けようとしてメスがなかったら、ゾットしませんか。
いいメスというのはよく切れるということ。よく切れるメス、鋭いメスが、いいメスなので、そういうネスで手術すれば痛くない。ところが、よく切れるメスは、ドスに使った時に非常に危ないドスになる。ということは、「善」から「悪」へ転じたときに、善性の強いものは悪性が強くなることになる。
この逆に、もし緊急時にメスがなかったとしても、よく切れる「危ない」ドスがあれば、よいメスになる。
したがって善から悪へ、悪から善へ転じた後は、悪性の強いものは善性が強いし、善性の強いものは悪性が強いといえる。
「物事には善悪、良い悪いの両面がある」と単純にいってしまうのは誤りである。物事に善悪両面はない。極論的に言ってしまえば、ものごとには「無記」の一面だけしかない。

⑵ 【自動車】
無記:(仮)車輪と動力源のついた乗りもの
プラス面:救急車、運輸の主力、自家用車
マイナス面:走る凶器、交通事故、大気汚染 
マイナス面が発現するのは、ハンドルを握る人間の心、また技術レベルが低いことによる。

⑶ 【窃盗犯】
無記:戸締りに詳しい
プラス面:防犯協会顧問として有能(善)
マイナス面:犯罪者、ドロボウ(悪) 
通常は犯罪者を顧問にするなどの発想は出てこないでしょう。しかし、窃盗犯の無記が、「戸締りに詳しい」と観れば、改心した窃盗犯はこんなに心強い協力者はいないはず。これを「悪の善転」と言います。改心した窃盗犯が大物=大悪であればあるほど、大いに役立つ=大善に転ずることができる。
怖いのは、同じ理屈で大善は大悪に転ずる可能性があること。
普通なら、悪人を善人に変えるに際しては、彼の悪い部分を取り除くという発想になる。人間の個性に善なる個性と悪なる個性があるという二元論である。しかし、上記の例では、彼の個性を矯めて押え込んだり、除去したわけではない。彼の個性は窃盗時代と防犯協会時代とで、何ら変わっていない。彼の個性とは「戸締りに詳しい」であり、その個性が防犯に活用出来たわけである。
彼を防犯協会の顧問に採用した担当者はさほど鋭い洞眼の持ち主であったのであろう。

⑷ 【経済】
無記:人の営み(城野先生流)
プラス面:世の中の進歩発展
マイナス面:不況、バブル発生、格差拡大 
高名な経済学者が、「バブルは人々の倫理レベルが低下した時に発生する」と述べ、よく知られている。しかし、【Ⅿ】Ⅹ【h】=± の式から、これは当たり前の原因として導き出される。大先生のお言葉を待つまでもない。

⑸ インターネット
無記:(仮)全世界をつなぐ高速通信網
プラス面:人々の生活を便利に、楽しく
マイナス面:ハッキング、フィッシング詐欺、
身代金詐欺、出会系サイト、サイバー攻撃 
グーグル、Fb、ツイッター、LINE、インスタグラムなどを世界中の人々が便利に利用し、役立っている。しかし、一方上記のマイナス面も大きく、身近に一般の人々の脅威にもなってきている。
楽しいことや、便利なサービスを提供しようとしてビジネスを考えることや、活用することは前向き発想だから容易である。しかし、マイナス面はネガティブなイメージであるため暗く、オモシロクナイと感ずるのではないか。しかし、これは大いなるビジネスチャンスになり得る。この世に悪がある限り、必ずインターネットで悪事を働くやからが出現する。であるなら、何か新しい世の中を大きく動かすような技術やサービスが出現した場合、マイナス面を抑制するビジネスが絶対必要になる。米国には巨大なセキュリティー会社が多数存在する。また、サイバー攻撃を監視する仕事に就く技能者は高級が約束されていると聞く。
このように世の中を観れば、「無記」的思考はビジネスシーンでも活用出来るものと考えられる。

3.将来の大きな課題「AI」
無記:人工の脳
AIは人類が今だかって経験したことがない、ある意味人類の存亡に関わる重大問題ではないかと考えます。
情判的に言えば、プラス面を主流とし、マイナス面を支流とする最低限のプログラム--例えば、「AIは人間を絶対攻撃しない」のインストールを義務化するなどが必要でしょう。

4.心の制御が大切
【Ⅿ】Ⅹ【h】=± の式から、【Ⅿ】に係る人間の心のあり方が重要であることが理解されます、
森さん曰く、「最も重要なのは心を磨き、精神性を高め、欲望を抑えなければならない」。--これが一番難しい。

5.無記の応用
⑴西堀栄三郎さんが南極越冬隊長だった時、越冬用の燃料を貯蔵タンクへ送るパイプがなかった時、パイプの無記:「液体が漏れない長いもの」と考え、布を巻いてこれに水を掛け凍らせてパイプにすることで無事燃料をタンクへ移すことができた。
無記思考は、本質が見え、思い込みや固定観念を排除して、新たな観点に立つことが可能となる。
悪を善に転用する発想にも気づき易くなる。

⑵国家の発展
無記:(仮)国家経営
プラス面:国の発展、国民が幸せに
マイナス面:独裁国家、国民が辛い生活
赤道直下で一年中非常に暑く、国土は淡路島ほど、ほとんどは小さな漁村、そして国民の教育レベルもそれほど高くない――それがシンガポールだった。
しかし、今や一人当たりのGDPは日本を上回っており、世界の経済成長率でも上位にランクされています。ここまで、この国を発展させた指導者、リーダーは、リー・クアンユー氏でした。
彼は徹底した自由経済を行い、世界中から有能な人材と資金を集め、それを国家目標である金融や観光、そして先端分野への投資に回し、貧しかった国家をここまで立派に成長させました。
日本人はシンガポール人より程度が低いのでしょうか。台湾で会社を経営した経験から、そのようなことは絶対にありません。台湾でいろいろな経営者と会ったり、企業を見たりして感じたのは、日本の経営者のレベルが、世界のそれに達していないと思われてなりません。口ぐせで、「日本は経営者不況」とつい言ってしまいます。国家についても同じで、リー・クアンユーのようなリーダーさえ出れば、平均的に高いレベルにある日本人がシンガポールに負ける理由がありません。ノーベル賞受賞者もこれだけ出ているのですから。
改めて、【Ⅿ=国家】Ⅹ【h=トップリーダー】=±
の式を見てしまいます。

6. 【Ⅿ】Ⅹ【h】=± を考察して
自然は無記そのもの
仮に、人類が地球に存在していなければ災害という言葉もありえない。
見方によっては、地上に善悪をもたらす人類は、地球の異物ではないのか。例えば、化学物質による汚染や、半減期が7億年と言われるウラン235などの核廃棄物を生み出し続けている。

7.今後について
表題の式の応用例を集め、更に精度を高めて進化させていきたいと思います。
                   以上