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2019年2月20日

平成31年3月例会報告

日時  : 3月14日 木曜日 18;30 ~ 21;00
テーマ :城野先生のDVD「東西古今人間学」の鑑賞会 第2回
場所  : 港区立商工会館
参加費 : 1000円
司会  : 古川 元晴

(ビデオの概要)
今回のビデオは、城野先生が、自らの「戦略・戦術」論に基づいて、信長の今川義元との「桶狭間の戦い」を事例に、信長の「戦い方」を具体的に分かりやすく解き明かしたものです。その概要は、「3月例会ご案内」に記したとおりですので、それを参照しつつ、この例会報告をお読みください。

参考までに、『東西古今人間学』の著書における構成は次のとおりで、読者に何をどのように伝えたいのかが明快に計算されていることが、よく分かります。

第1章 桶狭間の合戦の信長に学ぶ
(一)信長の戦略決定
信長という人物 見ると聞くでは大違い 信長の客観条件 戦略決定 二方面作戦 一級・二級・三級の人物 行動判断は材料集めから 
(二)信長の戦術決定
清洲の城 敵を知り、己を知る 地形・気象を考える 指揮官の性格を見る 軍隊の性格を見る 戦略重点を知る 信長の実像
 第2章 信長に学ぶ科学的計算性
(一)戦いに挑む信長の姿勢
科学的計算性 内部崩壊で滅ぼす 人材養成のうまい信長 人材を養成する条件 武田信玄を見抜く 信玄と家康の戦 時機を待つ 循環法 
(二)もう一人の信長
三千挺の鉄砲 信長の温情 ねねから信長への手紙 

第1 参加者のビデオを観ての感想
*ビデオという映像の効用
・城野先生の本を沢山読んで感銘を受けているが、先生の凄さがこのビデオで実感できる。このビデオを繰り返し幾度も観る方が、沢山の文献を読むよりはるかによく分かると思った。
 ・日本中の経営者に、このビデオを観て欲しい。難しいことを言わなくても、このビデオを観れば城野先生の戦略・戦術の考え方がよく分かる。

*戦略と戦術の違い
 ・戦略と戦術の違いを、極めて明確に説明してくれている。これほど分かりやすい説明はない。会社の会議などでよく「目的」ということが議論されるが、これを「戦略」ととらえれば、両立しない2つのうちの一つを選ぶというこであることがよく分かる。そのような違いを理解しながら「目的」を議論しているだろうか。
 ・「戦略」については、やると決めたらトコトンやることが肝要だし、「戦術」については、「細心の科学的計算」の重要性がよく分かった。

*大胆な戦略
 ビデオの中で、城野先生は、石田三成の人物像を再評価する必要があるとして、秀吉の朝鮮出兵時に石田三成が率いた兵が20万人だったといっているが、先生本人が率いた兵がそれを上回る50万人ということで、改めて先生は凄いと思った。ただ、今川の兵2万5000人に対し、信長の兵は3000人ということで、これだけの兵力の差があるときに、自分は本当に信長のような大胆な戦略をとれるだろうかと思った。企業における戦略というのは、そう簡単ではないようにと思うので、よく学ぶ必要がある。

*「人間学」
 城野先生の「人間学」は、先生が、自らの中国での戦争体験の中から生まれた人生観、価値観に基づいて造り上げてきたものである。もっとも、現在は「戦い」の時代ではなく、共存共栄を目指すべき時代になっている。

第2 参加者間で議論した論点
*「人間性」について
社会生活の中では、理屈ではないその人の人間性、資質、才能等が問われている。また、人が何かを成し遂げようとすれば、人間関係をどうするは避けて通れない要素である。組織においては多彩な人材をどう評価し活かすかが最大の課題となる。

*日常生活における「戦略・戦術」について
 ・我々は、城野先生の「戦略・戦術」を日常生活にどう活かしているか。
・難しく考えずに、日常生活の中で戦略・戦術を実践し、問題を解決する力を高めていくことが肝要ではないか。

*今の日本
 ・「技術立国」として、製造業において一時は世界を席巻したはずの日本だが、今なぜ世界から遅れ出しているのか。
・組織におけるトップの資質が問われてる時代になっているが、なぜ日本では人材が育たないのか。

*「経済成長」について
 ・「経済成長」は必ず実現しなければならない課題か。今、「経済成長」は、どれだけ人を幸せにできているのか。
 ・何が人を幸せにするのかについて、根本的に見直してみる必要があるように思われる。

第3 まとめ・・司会者としての雑感
1 城野先生の「戦略・戦術」論と脳科学との関係
 ・城野先生の「戦略・戦術」論は、ご承知のとおり、「脳の働き」という観点から、人間の普遍的な行動原理として提唱されたものです。
  ・人が行動しているときに、脳の中で脳科学的にどのようなことが起きているのはよく分からなくても、人のいろいろな行動を具体的に観察すれば、その人の脳がどのように働いているかは理解できるということです。
  ・また、そのことは、脳科学が進歩すればするほど科学的に裏付けられて来るであろうという趣旨のことを、城野先生は生前に言っていました。そして、現在の脳科学の進展状況については、昨年10月の例会報告において、「脳力開発と脳科学との関係」という観点から、脳科学者池谷祐二著『脳には妙なクセがある』に基づいて、私なりに論じたとおりです。

2 天下統一のような「大戦略」はどこから生まれるか
 *「戦略」と口で言うのは簡単ですが、信長の天下統一のような「大戦略」は、どこから生まれるのかです。
・城野先生は、『東西古今人間学』中の「戦略決定」(31頁)において、「戦略決定というのは意志決定ですから、戦術的に成り立つか成り立たないかの前の決定なんです。」「勝つ戦いができるかどうかというのは戦術の問題で、戦術から戦略を考えてはいけないんです。」「戦術で戦略を決めてはいけません。もしそうしたらなら必ず失敗します。戦略を決めたら戦術はいくらでも出てきます。」と述べています。
  ・一方、「戦略のない戦術は無意味、戦術のない戦略は空論」ということで、ビデオの中で、戦術における科学的計算性の重要性を繰り返し強調し、信長の優れた科学的計算力を評価しています。
  ・要するに、新しい「戦略」を立てることによって新しい戦術が生まれるということが出発点になるとしても、科学的計算力が伴わないと空論に終わるということで、戦略に沿って科学的計算力を高める地道な努力が求められるということです。したがって、結局は、その人の人間性や資質、才能といった「人間の器」の問題に帰着することになりますので、自らの「人間の器」を高めるように、日々の日常生活の中で努力して戦略・戦術の実績を積んでいく(実力をつける)ことによって、その先にその人なりの「大戦略」が生まれてくるということのようです。

3 戦国時代と現代とを比べる
 *戦国時代
  戦国時代というのはどういう時代だったのかですが、このビデオで見たとおり、各大名が、戦略・戦術を駆使して、領土の拡大あるいは防衛のために、激しい戦いを繰り広げ、その中から「天下統一」の戦略をもった信長、秀吉、家康によって、天下統一が実現された時代ということです。なお、戦国大名にとって、当時の最大の戦略である「天下統一」というのは、日本国内だけの統一であり、かつ、武力支配による統一でした。
 *現代
  これに対し、現代はグローバル化の時代であって、世界全体を視野に入れなければならないし、武力支配で他国を支配できる時代でもなくなっています。すると、現代の最大の戦略は、「全世界で通用する実力を有する人・企業・国等」ということになるようです。ある業界分野(通信・情報等)においては、圧倒的な実力で「世界統一(制覇)」を実現する動きが加速していて、その弊害も指摘されてはいますが、武力による支配とは本質的に異なることは事実でしょう。
 *共通点
  このように時代は常に変化していますが、「戦略・戦術」の考え方そのものは、人間の脳の働き(脳の法則)に基づく普遍的なものですから、変わるわけがありません。
  難しい困難な時代になっているということで、できない理由はいくらでも見つかります。だからこそ、困難を乗り越えて楽しく生きるためには、ますます「戦略・戦術」を駆使して、現状を変革していくことが求められているということでしょう。

4 最後に・・自分の挑戦
 以上を踏まえて、まずは自らの日常生活を楽しくするために、大胆に発想を転換して新しい戦略を立て、かつ、それに沿った戦術を科学的計算性を駆使して組み立てて着実に実践することに挑戦したいと思います。

2019年2月 2日

平成31年2月例会報告

日時  : 2月14日 木曜日 18;30 ~ 21;00
テーマ :城野先生のDVD「東西古今人間学」の鑑賞会
場所  : 港区商工会館
担当  : 古川 彰久

 1.城野先生の「東西古今人間学」の紹介
 城野宏著「東西古今人間学」の序文から抜粋
私が「人間学」と言っているのは、人間の動き、人間の行動のことなんです。そして、人間の行動というのは脳力開発からくるということなんです。
人間の脳というのは、外的刺激に対して反応するんです。そして、この反応が戦略的選択をしているわけなのです。つまり、ある刺激があった場合、脳は刺激を避けて逃げていくか、それとも近づいていくか、二つに一つなんです。ほかの行動を取ろうとしてもできないんです。どうしても二つに一つの選択しかできないんです。
人間の脳の構造からして、古代の人間と現代の人間に違いがあったかというと、それはほとんど違わないんです。
古代人も現代人も、御飯を食べ、衣服を着、家に住まう。人間生活の根本になっていることは、今も昔も同じなんです。
特に、人間と人間の関係といいますか、人間と人間の関わり合いから見ていけば、古代の人達も現代の人達もほとんど差のない反応をみせたに違いないんです。ですから人と人の関係が人生であり、そして仕事でもあるといえると思います。
人間の行動は、科学や物理学みたいに実験できないんです。
ところが古代の人達は実験してくれているんです。歴史上の人物達が人間の行動学を実際に示してくれているんです。古代人も現代人も脳の反応は同質なのですから、我々にとって古代の人達が取った行動、活動というのは大いに参考になるんじゃないかと思うんです。

2.DVD「東西古今人間学」の紹介
城野夫人のご努力により、城野先生のご講演「東西古今人間学」がDVDとして、発刊されました。
「東西古今人間学」のご講演1回約2時間、6回分がDVD3巻に収められています。
城野先生が昭和60年にご逝去されて、既に34年目を迎えており、懐かしいお姿と肉声を聞きながら、直接学べることはありがたい限りであります。
何分古い画像ですので1部画像の乱れはありますが、城野夫人のご好意により、特別価格3500円(税・送料込み)で販売しております。なお。今回、鑑賞会への参加者で購入希望者には、2000円(5セット限定)でお分けしました。

3.今回のDVD鑑賞会
第1巻の前半分約1時間を鑑賞し参加者で意見交換を行いました。
前半分の要旨
(1)足を使い、頭を使い、人間と人間との関係を作ること大切である。仕事をするには協力する仲間を作る必要がある。
相手の人間がどのようなものか見て取る。自分という人間がどのようなものか見て取る。人間を見て取るのが人間学である。
(2)東西古今人間学では、日本、中国、ヨーロッパの傑出した人物につき、その動きを研究し、どうしたらうまくいき、どうしたらうまくいかないのかを探し出す。
(3)普遍性の基礎の上に、違い(特殊性)を見ていく。人間は基本的にはどこでもいつでも同じ(普遍性)であり、環境が異なる(特殊性)。どのように手と口を動かしているか、記録から判定する。
(4)天下を統一する戦争においても、日本と中国・ヨーロッパとは戦略は同じでも戦術は異なる。
漢の高祖・劉邦、秦の始皇帝は敵を全部滅ぼす。
ヒットラーの場合も、対抗馬を殺す。
経済とは飯を食わせて、住居に住まわせ、 着物を着せることである。牧畜と農耕では異なる。
(5)牧畜には水が不可欠であるが、水を確保するのに、共同よりも自分を守ることが優先される。ここに個人主義の考えがでてくる。又、一方で、分散しているものを集めて仲間を作るために神が要ることから宗教が必要となる。
(6)農耕の場合には、協力してやっていくことが要求される。日本では、高天原の時代には灌漑水道が作られたといわれる。米を作るには水路が必要であり、田植えを短期間に行うにも共同が前提となる。更に台風の季節に行う収穫作業も共同が必要である。このような社会では、宗教よりも、村八分が一番怖い。
(7)人間の普遍性と特殊性について、日本、中国、ヨーロッパにおける、みなが知っている有名な人を取り上げ、その人たちの行動に関する事実を集めてみて、これまでみなが抱いてきたイメージと比べ、本当はどうなのかを確かめてみよう。
(8)たとえば、石田三成について、皆さんのイメージはどうだろうか。やり手だが人望がなかったとのことだが、本当はどうなんだ。
関が原の戦いで敗れたとはいえ、西軍の指揮官として、大大名を傘下に集めている。人気があって、信頼があったということではないか。
石田三成は朝鮮戦争で指揮を取っている。 この戦争で20万の軍隊を船舶輸送で送った上に全部収容した。このようなことは古今未曾有のことといえる。

5.参加者による意見交換会
 今回の参加者は11名でしたが、このうち発足当時からの参加者は古川兄弟、石田氏、榊原氏の4名で、堤氏と松本氏は1年ほど前からご参加いただき最近ご講演もいただきました。利島氏と大畑氏は最近ご参加いただき、今回初めてご参加いただいたのが鎌田氏、新開氏、中川氏の3名でした。
 DVD鑑賞後にお互いに自己紹介を兼ねて、「脳力開発」や「情勢判断学」への想いを語っていただきました。
 松本氏をはじめ、最近参加された若い方々の多くは自立して事業を営まれており、チャレンジ精神があり、城野先生の戦略・戦術論を事業運営に役立たせようと参加されています。