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2006年9月21日

護身道の真の目的について

護身道の真の目的について


レポート 時藤 稔明

護身道のパンフレット作成、指導員研修をキッカケに護身道の目的、目指す方向を再認識しましたのでご紹介します。

1.天真書法塾で書道を始めましたが、そこで先生が言われるのは「きれいな字を書くことが目的ではなく、書を通して霊性・人間性を高めることが目的。結果として気の通った、吹き抜けたすばらしい書が書けるようになる。だから極端に言えば書は手段の一つに過ぎず、武道でも絵画でもなんでもよいのです。」また「中国書道史上における3500年にいたる各時代の大名人の書を臨書して、臨書して、突き抜け、相手になりきるとそこは自分の世界だった、という境地になるまでやって欲しい。」と言われ、私は「これを体験してみたい。止めない、続ける。」と決意しました。

2.ある会社が優良企業に体質革新したときの重要な考え方のひとつに次のようなものがあります。「マーケティングの目的は、人のより豊かな生活を実現するために行われる総合的企業活動により、新たな価値を創出し市場を創造することである。売上げ、利益、シェアはその結果であり、マーケティングの目的ではない。」

3.ソフトボールで世界のショートと言われた安藤選手が7月26日読売新聞夕刊で「オリンピックを目標にすると、目標を達成したり、オリンピックに出られなくなると自分が崩れダメになる。ソフトボールを通して人間性を高めることを目的にしている。結果としてオリンピックで優勝できれば嬉しいが。」と言っておられます。

これらの3つの話から、護身道は護身術を身につけることはひとつの目的ですが、真の目的は「(1)技を通じて脳力開発を学び、積極的な人生姿勢になり、楽しく暮らせるようになること。(2)技を通じて身体法則を学び、身体が楽になり、健康になること。」ということを再認識しました。


(1) 脳力開発については、今年の4月から護身道の稽古の中で月一回、30分間「脳力開発講座」を行っています。
城野先生は「護身道は単なる武道ではない。脳力開発をベースのした人間の生き方、指針になる人間学だ。」言われ、「動作から学ぶ脳力開発」位置づけられておられます。
また護身道常連の方に護身道を続けている理由を聞いて見ますと「脳力開発の武道なのでよく考えられており、日常生活に役立つ」と言われ、「脳力開発講座」を再開することにしました。

その内容をいくつか紹介します。

〔胸を取られ、押された時〕押されないように頑張れば、力と力がぶつかり喧嘩になります。相手は押したいのだから押させてあげればよい。でもそのまま押されると、自分が倒れてしまい、自分に不満がたまります。そこで体を後ろへ捌きます。相手は押すことが出来て満足、自分も相手を受け入れることが出来て満足し、【相手もよし、自分もよし】の状態なります。(写真1~2)
また後ろに捌いた後、一緒に座る感じで膝を抜くと相手は倒れます。(写真3)


  写真1   写真2   写真3
他に、胸を取られた時、相手としっかり向き合うこと、そして相手の力の方向、強さを感じ、それに合わせることが重要です。逆に言えば相手の押す力に合わせて体を後ろへ捌くためには、相手の力の方向、強さを感じなければ出来ません。相手の力の方向、強さを感じるためには相手にしっかり向き合い、相手を感じようとしないと感じることは出来ません。
それで、この技を繰り返すことによって、【他人の利益を図る姿勢】【確定的事実から出発する習慣】を身につけることができます。
面白いことに、相手を倒してやろうと思ってこの技をやるとうまく出来ない時がありますが、しっかり向き合って「押したいのであれば、押したいだけおして」と言いながら

後ろに捌き、一緒に座る感じ、いい稽古をしようという気持ちで「一緒に座りましょうね」と言いながら、膝を抜くとスムーズに技が決まり、又相手も気持ちよく転げます。
〔胸を取られ、引かれた時〕も同様です。相手が引くと、相手は引きたいのだから引かせて上げます。その時自分が崩れないように、力がぶつからないように、胸を張って一歩足を出します。そうすると相手は崩れます。さらにもう一歩足を出すと相手は倒れます。(写真4~6)

   写真4  写真5  写真6
〔胸を取られ、押された時〕の関節技、小手捻りについて。相手の手を捻り押さえ込む時、相手の中心線を下に向かって攻めます。少しでも中心線を外れると技は全く決まりません。相手の中心を体の感覚として感じることが稽古の重要なポイントになります。(写真7~10)

 写真7    写真8

   写真9     写真10
この技を通じて「要は何が中心はなのか」の【中心・骨組みで考える習慣】を身につけることができます。

(2) 身体の法則につて、「操体法」では身体の法則を①重心安定の法則(身体の重


心・中心(丹田)を明らかにする。身体の軸を明らかにする)②重心移動の法則(身体が伸びる側に重心が移る)③連動の法則(中心と抹消を筋肉を連動させてつなげる)と説明しています。武道では「立ち3年」と言われるくらい身体の法則を体得することは難しく時間がかかります。
城野先生が作られた「鍵手の構え」(写真11)では、身体の法則が誰でもできるように作られています。「鍵手の構え」をすると、重心・丹田から手までつながったような感じで、身体がふわふわせず、ぴたっと決まった感じで安定します。相手が手を上下左右に押しても動きません。(写真12)筋力の力でこの形を維持しようとしたときは、相手に押されると簡単に動きます。「鍵手の構え」は手首から先を真っ直ぐに伸ばし、手首を90度にしっかりと折ることがポイントです。

 写真11      写真12
〔両手を取られたとき〕の相手を押す時も鍵手で押すと、重心からの力が手に伝わり、重心の移動をスムーズにすると相手を楽に押すことが出来ます。このとき自然と前側が伸び、重心移動の法則もできています。(写真13)

写真13

「鍵手の構え」で身体の法則を体得すると、鍵手の構えをしなくても身体の法則はできるようになります。そうすると身を守ることはかなり高いレベルで出来るようになると思います。
このように護身道の真の目的を再認識し、稽古に励んでいきたいと思います。


10月護身道協会「脳力開発講座」ご案内

日時:2006年10月21日(土)14~16
場所:スポーツ会館(新大久保、大久保)
内容:中心骨組みで考える習慣
・相手の中心を攻めることが原則ですが、その前提である自分の中心・丹田から動くことを学びます。
これまでの内容:
   4月;他人の利益を考える
   5月;確定的事実から出発する
   6月;全面観察
   7月;主体的にやる姿勢
   8月;中心骨組みー中心を攻める