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平成27年5月例会報告

日時  : 5月14日 木曜日 18;30 ~ 20;30
テーマ :城野先生の著書から学ぼう「第三の経済学」を輪読しよう
場所  : 港区立商工会館
担当  :古川 彰久

城野宏著「第三の経済学~『経済学』の崩壊と新生」を参加者で輪読し、情勢判断学を活用してどのように経済問題に対し取り組むことができるのか、お互いに学びましょう。

まずは、「はじめに」を読んで、城野先生がこの本を書かれた意図を理解することからスタートした。
特に以下の内容をお互いに確認した。
「これは問題提出の書であるといえる。解決の具体的戦術書ではない。読者は提出された問題とその方法論を参考にし、各方面の具体的問題を取り上げ、究明してもらいたいと思う。そして、日本国民がそれにのっとって国家の繁栄と国民のしあわせをうちたてていく経済の法則性を探り、新しい日本経済学を建立すべきである。企業の中の経済活動家も戦略方向に合致した仕事だけが栄えるものであることを認識できるはずである。」

今回は、情判会のスタート時点から情勢判断学を実践・推進されてきた山本紀久雄氏がご参加いただき、特にこの著書を既に読んでいるのは、山本氏と私のみでしたので、進め方等いろいろとアドバイスを頂けました。

私の当初の考えでは、今回の参加者は初めてこの著書を手にされるのでしょうから、最初から輪読しながら理解を深めようと考えていました。しかし、山本氏から、すでに著書を読んでいる私から、関心のある項目を取り上げ解説し、意見交換をしたらどうかとのアドバイスを受け、小生は、「アラブ・アフリカ認識の転換と新しい日本国家戦略」を取り上げました。

城野先生のお考えの中に、日本経済における重要な事項として、資源問題をどのように対応するのかという視点があるように思います。
城野先生の経歴の中で、大東和戦争の終結後も「祖国復興・山西独立」をスローガンに、「李誠」の名で資源確保のために閻錫山の山西野戦軍(約6万人・5個師団)を指揮し、日本軍の残留部隊(約1万5千人・1個師団)と共に、毛沢東が率いる中国人民解放軍と戦うとありますが、これは山西の資源を日本の復興に備え確保しようとの意図だとのことです。

昭和39年に帰国後、昭和44年に城野経済研究所を設立し、情勢判断学、脳力開発を提唱されます。
一方で、日本アラブ協会の理事長に就任されました。昭和46年にアラブ諸国訪問経済使節団に参加された時のことを纏められたのが、「アラブ・アフリカ認識の転換と新しい日本国家戦略」です。
以下にその要点をピックアップします。
1. 誤ったアラブ・アフリカ認識
昭和46年1月11日から29日まで、私はアラブ諸国訪問使節団のメンバーとして、アラブ連合共和国、リビヤ、チュニス、アルジェリア、モロッコの5ヵ国を訪問し、親しくこれらの国の大臣諸侯と会談し、日本の経済発展にとって緊急な問題につき討論し協議し、その人情、風俗に接し、観察する機会を得た。
日本はこれまでその燃料源のほとんどすべてを海外に頼り、特に原油の90%を中近東に依存していたが、そのまた大部分を国際石油資本のメジャーより安易に入手することばかりやってきた。アラブ諸国の自主性独立性が低い時には、この方法がいかにもうまい方法かのように当事者は考えていたかもしれぬが、アラブ諸国の自覚と自立が高まってきた今日、この方法はまことに危険で、不安かつ非経済的なものと変化してきた。
これまで日本で横行している対アラブ・アフリカ認識は、まったく無知のための先入観に基づくか、それともアラブから直接原油を買わさせぬための国際石油資本の謀略宣伝と心得てよい。こうした誤ったアラブ・アフリカ認識をすてて、事実を直視すれば、日本経済の発展にとって障害となっている問題、近い将来には日本工業と国民生活存続の死活に迫る問題を解決し、国民経済のさらに新たなる発展をはかる道がひらかれるのである。
2. 日本への信頼感
第1に強く印象されたことは、訪問した5ヵ国のどこに行っても例外なく、日本に対する尊敬信頼と、強い親近感と共同連帯の意識であった。いつもアラブ連盟その他の会合などで話が出るらしく、各国の大臣がいずれも「日本は近代化と伝統の保存とを同時に達成した。我々もこれを模範として国家建設をしているのだ」という発言をしている。
日本の対アラブ・アフリカ認識、特に「現地情報」のでたらめさは、リビヤに対して著しかった。カイロでの日本側の「情報」によると「リビヤに行かれるのでしたら用心してください。とにかくデタラメきわまる国でしてね。ヴィザもくれませんし、ホテルなどとれはしませんよ。何もないところですがね」というのである。しかし、来たからには当たってみろ、飛行場に野宿したって乗り込んでやろうと、1月19日、リビヤの首都トリポリの飛行場に到着した。するとリビヤ政府の外務次官はじめ、ずらりと出迎え、貴賓室での接待である。
アラブ各国とも、長年欧米白人に圧迫され、しぼりとられてきた体験が独立後、その白人と果敢に闘い、国土を焦土までにして頑張った日本人への共通連帯の意識をもたせ、親近感をいだくものと思われる。
3. アラブ・アフリカの政治的安定性
第2に、政治的安定性についてである。
ア連など、ナセルの死後は分裂して現政権の保持は危ないのではないかという見方もあるようだ。危ないなど軽々しくいうが、どういう勢力がとってかわるかというのか考えてみたらよい。ナセル以来、現政権の支持者は王政打倒によって政・財界の表面に浮かび上がったエジプトの民族資本家とインテリ中堅層に、大地主が王とともに追い出されて、その土地を分けてもらった多数の自作農層である。これらが人口数の大部分を占める。
リビアも、莫大な石油収入を2百万の国民に分け与える政策をとって、政府首脳は質素に暮らしている。国民に支持されるのは当然であろう。
むしろ今後スエズ東の王政か土候政権の方に問題が起こりそうである。
4. 巨大なその経済的力量
第3にアラブ・アフリカの経済的力量である。
アラブ・アフリカ諸国は、日本とちがって資源的に「もてる国」である。そして日本が国民経済をまかなう根本をなす石油という商品を、世界で一番もっている国なのである。
ではなぜ日本にとって「購買力」にならぬのか。日本が石油をもっぱらメジャーから買って、その支払いはほとんど米、英などにカウントされてしまい、アラブ国家のカウントにならない。
この関係を改め、アラブに直接金が落ちるようにしてくれとは、訪問各国の大臣から要請された。
いろいろな提案が各国からあったが、アラブ・アフリカ諸国は、日本の協力に大いに期待もしているし、それが実現されれば、距離の遠さにもかかわらず、日本家材にとって、現在のアメリカ市場相当の新市場にとなり、同時に日本に日本工業の原動力である原油獲得に大きな役割をはたすということである。
アラブ・アフリカの日本経済の発展に対する役割は一般の想像を絶する巨大なものがあることを、改めて認識しなければならぬ。
5. 国家戦略を新しい軌道に
これまでわたくしがしばしば、経済国家戦略の転換を主張してきたが、今回のアラブ・アフリカ訪問によって、その転換の可能性が実証されてきたのである。アメリカ経済にだけ頼ったり、アラブ東部の小国とメジャーにだけ燃料を依存することの危険性と非経済性が、今年に入るとオペックの石油値上げ交渉などの過程の中で、ますますはっきりしてきた。日本は九五%の燃、原料を国外に依存し、輸出貿易の付加価値差だけで1億人の口を糊しているという基本的事実は、工業化以外に人口を養うすべはなく、同時に、世界のあらゆる場所から原燃料を獲得し、あらゆる国々を市場にしなければならぬという国家戦略の根本が結論される。その中においてアラブ・アフリカは最も日本の協力に期待し、同時に、日本に与えるべき何十億ドルの重大商品をもち、それを引当てにすれば、財政的に十分支払能力のある地域なのである。これまでのようにアラブ・アフリカと石油対策について、生半可の知ったかぶりでアラブ・アフリカを評価し、これに対処する道を誤ることは、日本の経済発展にとっての大損失である。日本は積極かつ急速に、アラブ・アフリカとの協力提携を具現化すべきであろう。しかし石油の問題がからむと、必ずアメリカを中心とした国際石油資本の圧力がかかり、うやむやのうちにご破算になる可能性が強い。日本国家百年の大計を腹におき、こうした圧力をはねのけ、戦略を貫徹する政治家と経済人が必要とされる。
戦術的にはいろいろあろうが、現在の日本経済は、アラブ・アフリカに対する正しい認識に基づき、国家戦略を新しい軌道に乗せる必要がある。
 
以上の内容ですが、昭和46年当時の状況を自ら行動し、情報を集め整理して方向を定めていく過程が良く理解できます。
その後、44年も経過し、現状では、我が国の状況も、世界の情勢も大きく変わってきています。
まずは情報を集め、整理していくことが肝要であり、それに合わせて当然国家戦略も変わるはずです。
ただ、世界の情勢となると直接情報を集めることが難しいですね。アラブ・アフリカについて論じても現地に行ったこともなければ机上の空論になりかねないですね。

山本氏の意見では、現在の日本の大きな課題は、人口の減少であり、今のような出生率では2100年には総人口が3千万人に減少するとのことです。これにどのように対応するのかに取り組みつつあるとのことです。

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