« 2021年6月 | メイン | 2021年9月 »

2021年8月26日

令和3年9月例会報告

令和3年9月例会ご案内

日時  : 9月9日 木曜日 18;00 ~ 20;00

テーマ :城野先生の「情況判断の行動学」 の第三章(7)成果と欠陥の点検より


場所  : 港区立商工会館

参加費 : 1000円

演者  : 古川 彰久

7 成果と欠陥の点検
(1)新たな条件に、いかに対応するか
戦術は、実行可能な具体的プロセスだから、一歩一歩と実現していくうちに、はじめは予定しなかった条件が、絶えず加わってくる。
戦略目的が達成できたかどうかが問題であり、戦術面での条件の変化に対しては対応方法を検討する必要があるのに、これまでの条件で達成出来ないことを失敗だと思うことは、戦略を変えることにもなり、問題である。
(2)戦術によって戦略を変更するな
戦略は、二つに一つの選択である。甲と乙とに、同時に行くことはできぬ。乙に行かなければ甲に、甲に行かなければ、乙なのである。しかし、戦術は無数にあり、どれをとってもよいのであり、二つに一つではない。
戦術実行の途中で現れてくる新しい条件は、新しい戦術上の対処をすれば、ちゃんと解決できるものである。そうした条件を、戦略と対立した解決不可能なものと思い込む必要はない。こういう新条件は、いくら事前の調査を十分にやっても、やはり出現してくるというのが現実の世界である。全部お見通しということは、できるものではない。世界は常に動いており、固定してはいない。
新条件の出現を予期しなかったから失敗だ、という人もあるかもしれない。予期できないのが新条件であって、予期できることは新条件ではなく、旧条件である。旧条件とは、処理の方法が慣習化されており、新しく処理反応を引き出す必要がなくなっているのである。予期されていないからこそ、新しい反応を出さなければならない。
それが人間が生きていく不断の活動であり、脳は、常に新しい反応を、自己保全を核にして作り出せるようになっている。だからこそ、生きていけるのである。旧条件にしか反応できず、新条件への対応力がなければ、その生物は死んでしまう。
(3)戦術に失敗はない
戦術の実行には、戦略を変えぬ限り、失敗とか、成功とかの評価はできない。
成功、失敗は、戦略上の評価であり、戦術実行には、成功、失敗の争論の場はない。
戦術の実行においての成果と、欠陥の点検とは、戦略上の成功、失敗の問題とは、全く別の問題である。戦術実行の点検には二つある。一つは、実行の途中で、一歩一歩の動作が、ちゃんと戦略に従属しているかどうかの点検である。
成果も欠陥と同様、戦略達成の効率上の技術問題であって、戦略上の成功とは関係ない。
戦術上の効率問題を、成功だ、失敗だと大議論をし、戦術上の「失敗」を理由にして、戦略変更をし、戦略変更になるのも知らないで、戦術上の効率だけを比較しているのである。
(4)公害・自動車・教育
「公害排出」、「自動車事故」、「教育退廃」等の問題が議論されている。
これらの議論において、戦略上の成功、失敗と、戦術上の成果と欠陥という二つの問題を区分する必要がある。
(5)戦略の成功と欠陥の是正
日本は世界一の長寿健康の国となった。こういう立派な成果を出したのは、日本の教育が、基本的には、立派な人間をたくさん作りだしたからである。
「教育の退廃」とは、大成功を収めた日本の教育の中にある欠陥の是正である。正しく原因をつかんで、一つ一つ処理すれば、一つ一つ直っていく戦術上の効率性の処理問題であり、教育の全体的評価とは、本質を異にしている。

参加者の意見交換
1. 戦略内容と条件についての意見
(1)戦略を実行する戦術レベルで条件の変動に対応すればよいとのことですが、戦略内容の決定にあたって、だれがどのような条件に基づいて決めたのかによっては、その条件の変動が戦略の変更につながる恐れがあるのではないか。
(2)戦略を決定する際の前提となる条件を事前に精査した上で戦略を決定し、実行に移すことが必要ではないか。前提となる条件が簡単に覆ってしまうと戦略を実践していく意味がなくなってしまわないだろうか。
(3)国家とか企業とか、組織として戦略を実践していく場合に、その組織の責任者が変わった場合に、これまでの戦略を実践していく条件が変化して、戦略内容に影響を与えることも生じるのではないか。
米国のアフガニスタン支援戦略について、アフガニスタンの支配体制が親米者から敵対者に変われば、当然のことながら支援戦略を継続できずに撤退せざるを得なくなります。
また、米国の国家戦略であっても、戦略を遂行する責任者が変われば、その人の考え方によって変わることもあろうかと思います。例えば、トランプ前大統領からバイデン大統領に代わることによって、戦略内容の変更は否めないであろう。
2. 日本の環境変化について
「戦略の成功と欠陥の是正」の中で、「日本は、世界一の成果を上げたのだといえる」とのことですが、城野先生がこの本を書かれた昭和50年ごろはそうだったでしょうが、その後、日本の経済成長は停滞しているようである。
戦後、日本の貧しさからの脱却に国を挙げて取り組み大いに成果を上げたといえる。
ただ、成果を上げたらそれに満足してしまい、そこからの新しいステップが踏み出されていないのではなかろうか。
その点を解明していく意味で、次の
第四章<ケース・スタディ>偉大なる日本経済
を学んでいこう。