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令和3年11月例会報告

令和3年11月例会報告

日時  :10月11日 木曜日 18;00 ~ 20;00

テーマ :城野先生の「情況判断の行動学」 の第四章(1)何が問題なのかと(2)「秘密」の探求より


場所  : 港区立商工会館

演者  : 石田 金次郎

日本経済は明治以来欧米社会が経験したことのない急速な成長を遂げた。(1)何が問題なのかであるが、欧米の経済学は、欧米社会の経済経験を材料にしてつくられたものだから説明がつかない。日本の経済学者も判断の基準を欧米の経済学から出してくる。自分たちが正常で日本は異常、専らクサス姿勢である。
一方、中国をはじめ新興国は自国の遅れを自覚して、日本の実績を高く評価し、これを学んで高い発展を目指す姿勢がある。
このように日本の経済発展に対してはクサシとホメの二つの反応が世界的に存在していた。
(2)秘密の探究よりでは、日本の経済発展秘密の解明を求める声について、それに対して、財閥解体、農地改革、朝鮮戦争、日本人の勤勉さ、国家の介入、軍事費の減少、豊富な労働力の存在、設備投資の急増などの内容が並べられていた。
設備投資について、日本は、明治以来一貫して次の生産拡大のために、他国より多くの比率を設備投資に割いてきたのは歴史的事実である。
多くの著名な経済学者の立場を点検してみると、日本の発展をクサシ、発展をやり遂げた時代の政府を非難するという立場であった。日本は設備投資を他国より多い比率でやってきたのは、国民生活を犠牲にして成長だけやったのであり、成長率は高く、国民生活は下がった、自民党政権は大資本に儲けさせて、国民の生活を悪くした。高度成長は戦略的失敗であると、結論づけていた。
投資と個人消費を、戦前=昭和9年~11年と戦後=昭和44年を比較してみよう。
戦前の総生産は210億円、昭和44年の総生産は69兆円。物価水準は凡そ300倍として、総生産は210億円→2,300億円で10倍弱増。
個人消費は戦前には53%109億円→戦後46%1058億円となり、10倍弱増。投資は戦前には12%25.2億円→33%759億円で30倍ある。
事の実相は戦前に比し戦後の昭和44年は投資は30倍に増やしたが、個人消費も10倍増やしたのである。人口がそう増えるものでないから,それだけ豊かになったのである。
日本が投資にこれだけ割けるのは総生産の大幅な増加があるからであり、個人消費を減少させたからではないのである。
秘密を解くためには,全面的材料を集めて,国民の立場から原因を明らかにする原則がある。
① 戦前、戦後の高度成長の要因は,一貫して作用するものであること。
② 日本経済に存在する特殊性だとしても、日本社会としての普遍性の要素であること。
③ 今のところは日本の特殊性といっても、人間性に合致し,全世界に適用され普遍性を持つ可能性があり、他国民も日本のような高度成長をやり遂げる法則性を持っていること。
 日本人だけに出来て,他国民には出来ないというのではない。日本人はこの世界的普遍性を持ちうる法則性をつかみ,日本も更に発展させると共に発展をねがう他国の人にもそれを学んで高まることが出来るようにしなければならいない。
「城野先生の高い識見」に感服するばかりである。

現今の日本の置かれている状況をGDPの推移、その構成要素別推移、一人当たりGDPのランキング、世界の主要市場の株価指数の推移などを見て、城野先生のこの本を書かれた時代と様変わりしていたのをみて、その状況にみな慨嘆した。
2021年のIMFのデータから「上位5カ国名目GDPの推移」を見ると、日本は1995年以降一向にGDPが増加していない。失われた何十年である。日本だけが歩みを止めている。アメリカ、中国の急伸、インドやドイツも伸びてきている。日本の停滞が目につく。
GDPの構成要素であるが、民間消費支出、民間資本形成,公的資本形成、輸入が増え,純輸出が殆ど増えていない。
株式市場に至っては米国株式、世界株式の指数,グルーバル債券の指数は、ITバブル崩壊、リーマンショック、コロナショックをこなして伸びており、日本株式(TOPIX)は1989年から殆ど横ばいである。
日本は衰退の道を辿っているのであろうか。

(参加者の意見交換から挙げてみよう)
日本が高度成長できた要因は,江戸時代から藩校や寺子屋などが盛んで教育水準が高く、幕末の日本に来た外国人が、その識字率は世界一である驚いていると記していること、また、武士道精神というか清潔、金銭感覚にもきれいであると述べている。
こういったものが近代技術をいち早く使いこなせた要因でなかろうか。そういう意味では,勤勉さや豊富な労働力が江戸時代から用意できており、これが素早くテイクオフ出来た理由でないか。明治6年には,学校制度が確立され、早くから義務教育が開始されたのも、教育に対するリーダーの意識は文明開化に向き合ったといえるのでないかと。
私見ではあるが、日本は韓国・台湾などに関与したが、教育行政の面では、制度や施設の整備の面では評価されるものがあり、今日両国とも発展が著しいのはそれが貢献しているのでないかと思う。
中国も共産党は教育に精力をかたむけたのは,既に学んだが、その影響があるのでないかと思う。
韓国については,日本クサシの姿勢はやむを得ぬにしても、教育や身分制度などを変革し, 60校程度しかなかった小学校には、国家予算を投入し敗戦時には4200校余まで増やし、文盲率80~90%を大幅に改善した。
先日、一橋大学の名誉教授が、全国の大学の水準と情報化度というタイトルで、日本の大学は「情報化度」で韓国にも完敗、低成長を招く大問題、という論を載せていた。
世界のトップ100大学の「機械工学、ビジネスと経営とコンピューターサイエンス」という分野で、物作りは良いものの情報化度が一番劣るといって、世の中のニーズに対応できていないのでないかと論じていた。グローバルな世界で、教育に問題を投げかけていた。
衆議院選挙に絡んで、政策が論議された。成長か分配かの主張があったが、GDPの状況を見るに成長を加速するような政策が必要でないかと思う。
城野先生の問題提起と今日はいかなる乖離を生じているのか、戦略の方向と意思決定の仕組みをもう一度しっかり考え直す必要があるように思う。
思い切って若返りを計ったらと思う昨今である。

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