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ビジネス成功にはセオリーがある

日時:2005年1月13日(木)19:00?21:00
場所:学士会館
スピーカー:山本 紀久雄氏

2005年1月例会の報告

 今年最初、1月の例会は、山本紀久雄さんに「ビジネス成功にはセオリーがある」とのテーマで講演いただきました。最近出された著書「笑う温泉?泣く温泉」を題材としたビジネスの成功法則について。他に、我々が陥りやすい、戦略・戦術の考え方、情勢判断学会の運営についてもお話いただきました。レポートは、榊原高明さんが担当いたしました。

* 戦略、戦術を立てても簡単に挫折する

 先日、知り合いの女性が日本を改めて知りたくなって、山岡荘八の日本小説太平洋戦争全9巻を読み始めたが、すぐに挫折して止めた。彼女は日本のことが知りたいという戦略を持ち、戦術として太平洋戦争を買ったが挫折した。彼女には情勢判断学的アドバイスをした。 もう一人の女性、この女性から「結論が出ました」と言って来た。「自分は花が好きだからガーデニングプランナーになります。」カルチャースクールを受講したが、数ヶ月したら止めてしまった。ガーデニングプランナーになろうと決めた。戦略です。これが簡単に挫折してしまう。この程度の戦略策定が多いのではないでしょうか。

* 戦略は大胆に、戦略はロマンだ

? 情勢判断学の皆さんはよくこの様に城野先生が言われたと発言されると思います。ロマンとはあまりハッキリしないものです。それが不変だという訳です。大胆なんだから、言葉を変えれば、いい加減だって良いわけです。これは、城野先生がそう言ったらといって、果たして我々の立場で妥当なのか、検証が必要だと思います。現代は世界の情勢が一瞬にして伝わるスピードの早い時代です。スピードが早い分、少し違った戦略を取った場合、1年経ったら取り返しがつかないことがある。昔と違って修正出来ないスピードで動いている。だからこそ、スタート時点での戦略策定が非常に大事です。それなのに、そこをいい加減にして置くと、「挫折しました、止めました」ということの連続が続く。

* バブル崩壊?国家的戦略の誤り

 バブルが崩壊した時に最も戦略的失敗をしたのは日本。歴代の首相は何をしたか。今の国債が750兆円ある。世界一の赤字。これは一瞬にして出来た。それまでの日本は健全財政。どうして起きたんですか。皆一生懸命にやった。あの植草さん、リチャードクー、堺屋さん、皆50兆円、100兆円出せと言って来た。小泉さんがこれを止めた。その結果、2002年辺りから何となく景気が上向いて来た。バブルが崩壊した時、このような政策を取ったのは日本だけ。イタリア、イギリスも財政を締めた。経済の体質が変わったのに、そこが読み込めないで同じ政策をずっと取って来た。その失敗で国家財政が苦しくなって、年金や医療費などの問題が起きて来た。先行きが不安になれば国民は金を使わなくなる。今になってみればケインズ政策の効果が無いのは簡単に分かる。専門家も皆誤った。戦略の失敗というのはオソロシイ。

* センスなき戦略は戦略ではない

 大胆にケインズ政策で巨額の金を支出した。その結果今皆さんは苦しんでいる。城野先生は、戦略は方向性だ、打撃の方だと言われる。脳力開発のダイジェスト版にもそう書いてある。そんなことで戦略は構築出来るのだろうか。疑問を持ちます。そんな時、長田弘さんから「森の絵本」を頂いた。読んだ瞬間、「これは凄い方向性を出している。この中に今の日本のこと全てが入っている」と思った。長田さんに会って、「こういう方向の文面を書けるとはどういうことなんですか」と聞いてみた。こう聞いたら一言、「方向性とはセンスですよ」。ナルホドと思った。センスなき方向付けはダメだ。センスがあって戦略を作るということです。センスが無い人が戦略を作ると、山岡荘八の本を買ってすぐやめてしまう。ガーデニングプランナーに挑戦してすぐやめてしまう。
非ケインズ効果の時代が来ていたのに、これを妄信して今日の赤字財政を招いた。センスなき戦略だったということです。戦略を作る前に、自分自身の、国家の、企業の、情勢判断学会の、センスを磨かなければ、戦略は出来たとしても大きな誤差が起きる可能性が高いと言うことです。だからセンスを磨いてほしい。

* センスを磨くには

 センスを磨かないで戦略、戦術を論じても難しいと思います。戦略は計画すること。これをやる場合はまずやることがある。掴む作業?分析、検討です。歴代の首相もうまく行かない原因をじっくり分析してみればケインズが効かないのがもう少し早く分かったはずだ。 分析、検討するには前提として資料の整理、整頓が不可欠。自分は何月何日の何の資料というとぱっと出せる。材を集める、分ける、比べる、組み合わせる、選ぶ、この五つを思考作業という。これを考えるともいう。これをやって欲しい。自分はいつでも、どこでも、これをずーと繰り返しやってきた。これをしっかりやっていると、時代や物事の奥が分かってくる。ムダがなくなってくる。行う方向性が割合妥当になってくる。それが私はセンスだと思う。これを十分やらないで、戦略は大胆、戦略はロマンと言うことは凄く危険だと思います。センスは地道に持続して作って行くしかありません。

* 情勢判断学会もホームページの活用を

 自分の山岡鉄舟研究会のホームページは1ページ目をどんどん更新している。これで、ヤフーの検索では1年しないでトップになった。昔やっていたように、身近な話題をフィクション形式で載せたら、情勢判断学会のホームページもどんどん良くなるのではないでしょうか。

* 日本の温泉とヨーロッパの温泉

 日本の温泉業界は昔からずーと変わらず来ている。偽装問題も昔からあった。 温泉は使う国民によって利用法が違う。自分が本を書く戦略は、それは人の書かなかったことを書く。牡蠣の本もそれで書いた。「笑う温泉、泣く温泉」も日本の温泉と世界の温泉を同一視点で書いた本が無かったから。日本人はヨーロッパの温泉に行くと、飲泉したり、水着を着て入っているのを見て驚く。これは前提が全然違う。ヨーロッパの温泉は治療が目的。温泉成分が身体に効き目を出す為には長時間入らねばならない。その為には温度が25℃?30℃がいい。だから水着が必要。午前中だけ入って、午後は散歩。

* 長湯温泉は絶好調

 温泉が違っても成功するためには同じセオリーがある。ここの人気はいろいろ言われているが、持続的に成長するためにはそうなるための思考がある。長湯温泉文化本という物語りを作っている。自分の温泉の泉質から分析し、同じ炭酸泉のドイツのバードクロッツインゲンへ辿り着き、教えて貰って、長湯にドイツ風浴場を造った。

* これから日本の一番の問題は人口減

 人口が減るとGDPが落ち、国力が下がると皆さん心配している。今までは全てが人口が増えることを前提に成り立っていた。今は逆に、公共事業をしようとすると反対が出る。人口が減るからだ。2006?7年頃から減少に転じる。 フランス、ドイツ、イタリア、皆人口は日本よりずっと少ない。どうしてこれらが大国なのか。人口減は怖くない。ただ、戦略的に人口を増やそうとすると混乱を起こすことになる。今の人口でない人口でやっていく思考に逆転しなければならない。

* 日本の温泉の問題

 日本の温泉はほとんど日本人客だけで経営している。人口減で壊滅的打撃を受ける。日本人が温泉に来なくなるなら、外国人、しかも金持ちに来てもらわないとだめ。戦略を作ったら、その戦略から現在を見なければいけない。情勢判断学会の人にはこの逆転した思考をして欲しい。どうしてフランスに8000万人の観光客が来るのか。それはフランスはブランドの国。牡蠣でさえブランド化している。初めから作り方が全然違う。一泊二食付きスタイルは世界でも稀。萩では朝食だけの民宿が外国人に大人気。外国人に来てもらうには、欧米の温泉を良く知って、彼らが来る形にする必要がある。しかし、形を作ってはいけない。欧米流のものを作っても彼らは来ない。思考力が先だ。成長する戦略の思考をして欲しい。成長するためには、住民、観光協会、市が協力しなければならない。これがうまく行っているのが、イタリアのアバノ。ここの市長が来日した折り、住民、業界、自分が常に打ち合わせて三位一体の展開をしていると語っていたし、現地でそれを確認した。ここは1945年からずーと伸びている。外国人客で伸びている。これが理想。 自分の得意、強味、は何かを早く知り、それを出していったところに自分の将来の戦略が出来ると思う。野沢温泉は室町時代の惣組織が今でも残ったお陰で歴史が残っている。草津温泉も観光業の使命をはっきり掴んでいる。だから感動が有り、また来てくれている。アベンヌ温泉(フランス)は山の中の一軒家のスパ。ここへ世界中からお客が来る。その地に徹するローカルスタンダードをやれば、世界に通用するグローバルスタンダ?ドの経営になる。これを選ぶにはセンスが要る。だから戦略的思考がいかに大事か、と思います。

山本紀久雄氏 主な著書

「フランスを救った日本の牡蠣」 1500円 小学館スクウェア

「笑う温泉?泣く温泉」 2000円 日本図書館協会推薦図書 小学館スクウエア

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