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新発電システム事業化への戦略と戦術

日時:2005年2月16日(水)19:00?21:00
場所:学士会館
スピーカー:榊原 高明氏

2005年2月例会の報告

スピーカー:榊原 高明 氏
テーマ:「新発電システム事業化への戦略と戦術」?気液ポンプ利用を利用した発電
 
[講演内容要旨]

* はじめに

今日お話しする内容は、まさにロマン、大胆にです。 前回、山本氏の講演の直後と言うこともあり、少しやりにくく感じています。特に、戦略を決める前に、つかむ、分析の作業が不十分だなと反省しています。今後はこれを再度行ったうえで、情勢判断学、脳力開発を活用して今回のテーマに挑戦します。

* 気液ポンプ(以下GLP略す)とは

茶筒のような円筒形の物体の外周に中空チューブを巻きつけた物が基本構造です。水面にこの円筒がほぼ半分水没するようにセットし、この筒に回転するためのハンドルを取り付け回転させると、チューブの一端から回転に合わせて水と空気を交互に吸い込み、他端から水と空気が交互に出てきます。チューブの巻き数に比例して揚程(液体を上方に上げる高さ)が大きくなります。実験的には手回し式で20mの揚程が得られています。

* このポンプを使ってなぜ発電出来るのか

チューブを巻いた円筒に水車のような羽根を取り付け、川などの流れの中に設置すると、ハンドルで回す代わりに水流の力で回転することで水を上方へ押上げることができる。この水をタンクやため池に貯め、この落差を利用して発電機を回し発電することが出来る。詳しい説明はのちほどします。尚、このポンプが学会で発表された時、これを見た学者先生たちは「何でこんなことに気付かなかったのか!」と驚いたそうです。

* GLPを見つけたきっかけ

私は現在中古の半導体製造装置を中国で販売する仕事をしています。中国は近年の急速な経済発展に電力の供給が追いつかず深刻な電力不足に陥っています。この問題を何とかビジネスチャンスに出来ないかと頭をひねっていました。⇒ 「戦略がないと情報が集まらない」このころ、新聞でJパワー(電源開発)が農業用水路に設置した小水力発電システムが、落差僅か2mで30kwの発電能力を持ち、一年間で200万円の売電が出来るとの記事を見つけました。中国にはこのような農業用水路は無数に存在し、この発電システムは電力不足に悩む中国では大きなビジネスチャンスがあるはずだと考えました。しかし、残念ながらJパワーは大企業過ぎて我々のような小さな企業は相手にしません。しかし、それでもなんとかならないかとさらに可能性を探っていた折、この気液ポンプに出会いました。?昨年の「産業展」を見学していた時、面白そうなブースがあるなと近寄ってみると、チューブを巻いた円筒形にハンドルが付いたものをクルクル回すと、水と空気が混じった液が3mくらいの高さに押しあげられているのが見えました。ここで、いろいろ質問をしている内に、このGLPで発電も出来る事が分かり強い興味を持ちました。? ⇒「手、足、口を動かせ&戦略が無いと偶然を活かせない」さらに詳しい情報を得ようとここの出展社の社長と後日会い、中国市場やアジア市場開拓で協力し合うことで同意を得ました。

* なぜこの発電システムに挑戦しようと決心したのか

1.今、地球環境に負荷を掛けないエネルギー開発が求められている。特に自然エネルギーとして、風力、太陽光などが期待されている。
2.京都議定書が本年2月に発効する温暖化ガス排出削減が各国に義務づけられる。この議定書に盛られている CDM(途上国でのクリーン開発メカニズム)に注目した。CDM事業で削減された削減量を途上国と分け合い、これを排出権取引市場で売買することが出来る。削減目標を達成できない企業はこの市場から不足分を購入してつじつまを合わせなければならないことになる。この市場規模は20兆円ともいわれている。

日本もCDM事業に参入を計っていて、住商や石川島などが組んで中国の炭鉱でのメタン回収発電や、風力発電所の建設事業など大手企業が力を入れている。尚、最近中国は2020年までに、風力、太陽エネルギーなどの新エネルギー発電所へ1兆9600億円投資すると発表した。以上のような市場環境を分析した上で、このGLP発電システムは追い風を受けられ、成長性、市場規模も大きく、挑戦するに値する事業であると判断して、これに取り組むことを決心しました。⇒(戦略確立)

* GLP発電の詳細

概略は先ほどお話しましたが、ここでこのシステムが他の発電システムに対してどこが優れているか説明します。

1.水の流れさえあれば、小川から大河まで、浄水場などの放水路など、あらゆる水流が利用可能。
2.地形的な落差が不要。ダムなどせき止めることも不要。ダム建設は本体の建設費用のほか、さらに住民の立ち退き補償費などの追加費用も大きい。また、ダムの寿命は30年程度と言われこれの撤去費用も必要となる。 
3.システムが簡単で、製作費、メンテナンスが安い。
4.自然エネルギー発電方式であり、CO2排出権獲得対象事業である。 
5.風力や太陽光発電と比べて24時間電気を生み出せる。 
6.途上国の、特に農業発展に寄与できる。

* 他の発電方式との比較(火力、原子力は除く)

1.太陽光発電
 晴天でないと十分な発電量が得られない。当然夜間は稼動しない。
2.風力発電
 十分強い風が吹かないと発電できない。この分野ではデンマーク、ドイツ企業が強い。これの市場規模2004年は80億ドル、2010年には150億ドルと推定されている。

?デンマーク製の発電機は羽根の直径が90m、価格は4億円である。ただし、風力の発電コストは石炭火力発電に比べ約2倍である。

* GLP発電システムの欠点と問題点(物事は両面を見よ)

1.欠点
 (1) 水の流れがない場所では発電できない。
 (2) 地形が平らな場所では貯水タンクの設置が必要。ただし、適度なV字谷地形であれば谷の上方にため池を掘るだけですむ。
 (3) 大雨、台風時の増水時の対策が必要。
 (4) ポンプのチューブ内部のゴミや水草などによる目詰まりに注意を要する。
2.問題点
 (1) このポンプの特許は日本国内だけしか出願していない。外国では誰でも使える。
 (2) 構造が極めて簡単なために、簡単に造れてしまう。
 (3) 実績がない。試作レベル止まり。
 (4) 発電システムについても実証されておらず、経済性について未確認。

* GLP発電システムの推定コスト

?前述したJパワーの小水力発電の記事を参考にします。
 (1) Jパワーの例;落差2mで発電量が30kw。
   年間売電額200万円。設備投資資金の回収は補助金を利用して7年。
   200万円×7年+補助金=約2000万円(推定)
 (2) GLP発電システムの概算コスト
   発電量をJパワーと同じ30Kwとした場合、GLPは水車部分と貯水タンクが必要な分コスト高になる。しかし、発電量はほぼ落差に比例する点に注目すると、貯水タンクの高さを10m、つまりJパワーの5倍とすれば、逆に本テーマの発電システムのほうが割安となる。
    1)発電機;2000万円
    2)GLPポンプ(水車)×5台 1000万円
    3)貯水タンク;1000万円
     建設、設置費;1000万円
     合計5000万円
     売電量?200万円×5倍=1000万円
    従って、5年で回収できる計算になる。7年のJパワーよりも割安な発電システムと言える。

* 今後の進め方

この事業を進めるための経営資源はほとんどありません。まず資金調達のため各種補助金の申請をします。もしこれがうまくいかなければ、中国の投資家に話します。本年末までに実証機の製作とデータ取りを目標にします。発電コストの競争力と実用性が実証された段階で、第二ステップとして本格的に事業化を進めます。

* 最後に

ないないづくしの条件下ですが、城野先生の情勢判断学、脳力開発を活用してこのテーマに挑戦します。皆様のお知恵をお貸し頂ければありがたく思います。

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