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少子化と大学淘汰の時代

日時:2005年4月14日(木)19:00?21:00
場所:学士会館
スピーカー:矢澤 昌敏氏

2005年4月例会の報告

「少子化と大学淘汰の時代」

副題:少子化・学力低下・大学全入時代・倒産・フリーター・ニート
発表者:株式会社NES/クイック情報システムズ 
               矢澤 昌敏 氏

A.プロローグ
 企業の採用担当、公務員講座の就職コンサルタントとして35年、大学との付き合いを深めるなかで感じることは。今、少子化という状況で、学が変わっていかなければならないのに、大学が変われない、変わろうとしていない現状があります。
 一部の心ある学長や職員には、変わろうとする気持ちがある人もいるのだけれど、圧倒的な力を持つ専任教員が変わろうとはしていない現状があります。いまだに象牙の塔が健在です。これから国立大学でも独立行政法人となり統廃合をされてゆくことになる。私立大学は学生数の減少により、潰れてゆくことになる。
 団塊の世代が約700万人いて、2007年から定年退職を向かえてゆく、それと同じだけのフリーターが417万人、ニートが85万人いるといわれているが、フリーターやニートもなりたくてそうなっているわけではない。この人たちをなんとかしなければ、国力の低下につながる。自分としては人づくり大学をつくってゆきたい。フリーターにならざるをえない理由は、企業が「即戦力」を求めているからである。企業が求めている「即戦力」として必要なスキルは以下の三点。
1. コミュニケーション能力
2. パソコンスキル
3. 英語力        といわれている。

就職活動は今や紙媒体より、ネット上でのリクナビか就活ナビなどにより行われており、就職課に相談にゆくことすら少なくなった。ネット上で大量にエントリーしてゆくので、大切なのは写真と大学名での選抜になる。写りの良い写真をとり、履歴書の書き方に工夫をすることが大切です。パソコン上のエントリーシートで求められているのは次のテーマ。

1.学生時代に最も力をいれたものは何ですか?
2.社会人になってやってみたいことは何ですか?
3.当社を志望したきっかけは何ですか?
4.あなた自身について、簡潔にアピールして下さい。
これを250字か300字で指定の8割以上を、結論から書くということが必要だ。自己分析が不足しているとなかなか書けない。

B.少子化とは

出生率の低下により、子供の数が減少すること。世界保健機構(WHO)によれば、合計特殊出生率(1人の女性が一生の間に生む子供の数)が2.08人を下回ると総人口は減少に向かうとされ、この数字を目安として少子化と呼ばれることになっている。少子化問題とは、日本において生まれる子供の数が減少し、現在の人口を維持できないばかりか、経済全般/社会保障(特に年金問題)/労働市場などに大きな影響を与える深刻な問題です。高齢化社会の原因にもなっています。急激な高齢化を伴う少子化の進行は、次のような影響を及ぼすと考えられています。
1.労働力人口の減少などに伴う経済成長率の低下。
2.社会保障における現役世代の負担の増大。
3.地域での国土保全能力の低下。
4.子供同士の交流機会の減少などに伴う子供の社会性の低下。
少子化が進んだ理由は
1. 女性の高学歴化、
2. 晩婚化
3. 未婚化
4. 住環境の問題      などが考えられます。

C.学力低下とは
 大学生の学力低下は、ここ10年ほどの短期間に顕著になってきたものですが、その原因としては。
1.受験生の減少による入学者層の変化
2.教養課程解体による大学の教育力の低下
3.大卒の社会的・経済的価値の相対的低下
 特に1番目の影響は大きく、大学における教育水準の低下と学力格差が主因となっている。 文部省主導による「ゆとり教育」は、1970年からすでに導入されていました。1990年台初頭から文部官僚が強力に推し進め、実行してきた「ゆとり教育」の破綻が明らかになったからです。昨年末にOECDの行った国際学力調査で、ゆとり教育導入世代の高校1年生の学力低下が明確になったことで、ついに失敗を認めざるを得なくなった。
D.大学全入時代とは
 文部科学省は先ごろ、21世紀グランドデザインを審議している中央教育審議会大学分科会に、『大学全入時代を迎える:全員どこかの大学に入れる』が従来の推計よりも2年早い2007年度に到来するとの試算を報告した。「全入」と言っても、実際には志願者は人気大学に集まり、定員を満たせない大学が出てくる。「定員割れ」がおこる。私立大学の収入の6?8割は、学生からの納付金で賄われている。定員割れとその前段階の志願者数減は、大学経営に直結する。

E.大学倒産の時代とは
 「大学全入時代」の影響として、最も懸念されているのが大学経営危機だ。日本私立大学振興・共済事業団の調べによると、2004年度の私立大学の3割に当たる155校が定員割れしており、過去最高となっている。 私立大学の実質的な経営破綻が始まっている。今後、バタバタと私立大学が経営破綻する。自分の母校が無くなる社会人が増えるし、現役の大学生は路頭に迷う。 学生が大学に望むのは、豊かな人生を送るための教養であり、卒業時の就職に役立つ専門知識だ。その経営危機を真剣に取り組んで欲しいと「大学倒産シナリオ」として、 第一段階の「財政窮迫」は、学生数の減少から納付金が減り、人件費の増大は消費支出を招く。 第二段階の「資金枯渇と借金依存」は、金融資産を費消し、借入金に頼ると債務超過になり、資金繰りが悪化する。 第三段階は、債務の支払不能、銀行取引の停止、そして倒産、差し押さえ、競売実行という「資金ショートと競売実行」というものである。 最後は、いよいよ最終段階の「倒産と清算」である。 整理、統合、吸収、合併、系列化など。大学にもそういう時代が来たことを、大学関係者全員が、もっと目を見開いて危機意識を持たなければならないと、警告する関係者は多い。

G.フリーター、ニートとは
 「フリーター」とは、会社や団体組織に正社員や職員として所属せず、時給や日給による給与を主な収入源として生活する人のことを言う。2001年には417万人と飛躍的に増大しています。417万人といえば全国で10番目に人口の多い静岡県の総人口を上回ります。このペースで増え続ければ、2010年には経済成長率を1.9%押し下げるという試算もあります。 フリーターの増加は、就職市場を巡る需要と供給の問題、キャリア探索の理念と現実の状況との情報の乖離、フリーター経由者に対する社会の視線など、複合的な要素が絡み合って発生しています。そしてまた、現実の日本の産業構造が今やフリーター抜きには成り立たなくなってきていることも注意する必要があります。
 「ニート」とは、就業、就学、職業訓練のいずれもしていない人のことを言う。また、就業意欲があっても求職活動していなければ「ニート」になる。 「ニート」は、働くという意味での社会に対する意欲を喪失し、または奪われている。 現在、日本には「ニート」に分類される若者の数は、85万人と言われている。

H.エピローグ
 今まで述べてきたことより、現代の大学事情の構図が浮かび上がってきます。ひとつの見方としては、迷走を続けている多くの大学で、入り口(入試)と中身(カリキュラム)、そして出口(就職)の3つの改革にしのぎを削っている。 人気の無い大学なら、まず入学定員を満たすことに必死になる。定員割れの懸念が無い大学でも、質の高い学生の確保に躍起になる。結局、大学の生産物は卒業生です。その卒業生が良い商品であるかどうか判定されるのが就職市場ですから、その市場でのパフォーマンスが悪ければ大学の教育の付加価値のつけ方が不十分であることになる。だから少しでも就職市場で評価されるよう努力すべきで、それが長い目でみれば、結果的に入試に反映されることになる。今も昔も、教育機関の最大の役割は、次世代の若者を育成することだ。

大学の生き残る具体的なポイントを挙げると
1.キャンパスの立地が至便かつ閑静
2.いたずらな拡大方針をとらない
3.真面目な学生が多いイメージ
4.良家の子女が集うイメージ
5.専門分野に特化した大学、資格取得で実績のある大学
 最もこうしたポイントを満たせるのは、少なくとも歴史があり、財務面でも余裕のある大学だけであり、新興大学がいかに努力しても追いつかない。

 最後に唯一つ言えることは、目的を持って、それを達成するために頑張っている人は、いつの時代でも輝いているし、幸せになることが出来るということです。

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