« 理念(志)を基本にした創業の人生 | メイン | 脳力経営 »

現代転職事情

日時:2005年10月25日(火)19:00?21:00
場所:学士会館 310

スピーカー:  人材紹介コンサルタント
         今井 裕幸氏

 厚生労働省の平成15年度職業紹介事業報告によると、新規求職申込件数は、対前年比9.9%増の168万件。常用求人数は、前年比21.4%増の130万人となった。これまでの採用抑制の反動と景気の回復による求人の増加にもかかわらず、求人側のニーズには高いレベルを要求するものが多くなっています。

 給与水準においても、「成果主義」の名の下に勤続年数が増えても年収が上がらない仕組みをとる企業が増えてきた。従来、日本型経営は「終身雇用年功序列型」だと言われてきた。しかし、歴史の全体から考えてみれば、これは第二次世界大戦後の高度成長期にみられたことで、ワンジェネレーション半くらいの間そうだったということに過ぎない。(対比思考)
 今や死語となった「集団就職列車」「金の卵」という言葉も、現在定年を迎える世代が新卒で入社した時には使われていたことで、現在問題となっている「フリーター」「ニート」といった言葉からは考えられないことだが、それほど昔の話ではない。

 法律では60歳定年制が定められているが、職種によりそれぞれ「実質定年」の様なものが存在する。企業が拡大成長している間は、その後の人生も企業の中で抱え、法律の規定を守ることが出来たが、企業の寿命が短く、人の一生を保障すること出来ないなかで、中高年の再就職には困難な点が多い。かつては「田舎に帰る」などして1次産業に雇用の受け皿があっが、このワンジェネレーションの間に、受け皿が極端に縮小している。その結果、中高年になって会社から放り出され、生活の手段を失うことになっている。中高年の再就職や、人生のスタートの部分でフリーターやニートになった人の就職活動は思いのほか大変です。このような状況の中で、就職活動に打ち勝ってゆくにはそれなりの対策が必要です。
 年齢が上がってしまった、実務経験が無い、などの不利な条件の人の就職には、転職成功のための戦略・戦術をしつかりたててゆく必要があります。

 まず中途採用の採用基準ですが、その人を現場に配置した時の「部署の力がいかに活性化するか」が採用の基準となります。新卒の採用基準である、その人の能力やポテンシャルではないのです。「優秀な人だけどウチの部署では浮くな」とか「既存のメンバーとバランスがとれない」、ということで不採用になることもあります。下の人からも、横に並ぶ人からも、是非一緒に仕事をしたい人と思われ、それらの人の「やる気を出させる人」である必要があるのです。だからこそ「年齢相応の実務経験」が必ず必要になってくるのです。

 入社試験は、履歴書・職務経歴書の書類審査と面接審査とからなります。履歴書・職務経歴書の書類審査は、制限時間無制限の筆記試験だと考えてください。誰からアドバイスを受けても良いし、何を見て書いても良い筆記試験です。 ここでの点数が大きく合否を分けます。就職成功の成否は、職務経歴書の書き方と、書くことを通じて自分をどう分析し、そのプロセスの中で、自分を変えてゆくことが出来たかどうかにかかっているということが出来ます。

● 戦略的職務経歴書とは
 まず認識しなければならない点は、履歴書・職務経歴書は自分アピールのプレゼンテーション資料なのだということです。「事実の羅列になっていませんか」ということを最も注意しなくてはなりません。職務経歴書は出せばよいというものではなく、そこで積極的に得点を獲得しなければ合格はありえません。市販されている「履歴書の書き方」の本をみても、単に事実の羅列された職務経歴書を見本にしていることが多く、これでは積極的に合格することは出来ないと思います。
 必要なことは、「これまでの経験を通じて何を身につけてきたのか、それをこれからの仕事にどう活かそうと考えているか」のアピールです。これまでの経験をどの様な切り口で捕らえ、それをどう表現するのか。捉え方の斬新さ、表現力の巧みさこそ、「その人の現在の能力」といえます。人生のストーリーを表現し、その先に志望の動機があることを表現することです。そこにツジマがあっていることが大切です。

 企業の側からは採用したい人と、採用したくない人の明確な規準があります。
○ 採用したい人
・ 明るい人
・ 積極的な行動が出来、自分から動ける人
・ 物事を肯定的に考えることが出来る人
・ 協調性がありチームワークで仕事の出来る人
・ 企業の論理を理解し、それに従える人
・ 自分は、運がついていて、幸福な人生だと「断言できる人」

○ 採用したくない人
・ 暗い人
・ 消極的で、言われたことしか出来ない人
・ 物事を否定的に考える人
・ 協調性が無くチームワークで仕事が出来ない人
・ 企業の論理を理解しようとせず、それに従えない人
・ 自分は、運がついていないので、不幸な人生だと「思っている人」

となります。 どんな会社でも、どんな場合でもこの基準が逆になることはありません。だから「私は採用したい人です」ということを主張しなければなりません。 具体的なエピソードで、自分から動ける人としてこんなことをして成果を挙げましたとか、職場の雰囲気をよくすることに貢献しましたということを積極的にアピールしなければなりません。これは、自分がこれから入社しようとする会社の、上司に求める条件、同僚に求める条件、後輩に求める条件と同じです。

同じように後から入ってくる人に、同じ条件が求められているということです。一緒に仕事したい人は、お互いがお互いに対して、同じ条件を求めるということです。(他人の利益もはかる姿勢) 採用されたければ、採用したい人になるしかないということです。これは、「楽しみの人生にしますか、嘆きの人生にしますか」という問いと同じです。「楽しみの人生か、嘆きの人生か」の戦略の決定を行い、「楽しみの人生」になるためにはどうすればよいか、自分が「楽しみの人生」のひとであることをどう表現するかが大切です。

 私は、転職をする予定が無い人にも職務経歴書を書くことを勧めています。書いてみて、客観的に見てこの人と一緒に仕事をしたいと思うかどうか、現在の職場の中に新しく採用するとしたら、この人を採用したいと思うか、という視点でみてみます。(多角度思考) 不足している事、こうであればもっと一緒に仕事をしたい人なのにと思う点がみつかれば、その事を実際の仕事の中でやってしまうのです。やっていない事を職務経歴書に書いては履歴書の詐称になりますが。実際にやったことや、やっている事なら、職務経歴書に書いてもウソにはなりません。立派な職務実績として主張することが出来ます。 実はそうして職場の中で求められていることを、実際に行ってゆくことこそ、その職場で高く評価されることなのです。逆にリストラされる心配もなくなります。職場の中で求められるひとであれば、法律上の定年になってからも嘱託としてでも来てくださいといわれます。

 リストラされた時の対策として、資格でも取っておけば良いだろうと、資格取得に励む人がいますが、これは全く逆効果です。自分の実務の分野で必要な資格や、実務の分野を深める資格であればよいのですが、現在の仕事と方向転換するような資格を取得することは間違いです。資格だけで転職できる仕事は絶対にありません。資格は「知識」での仕事。年齢が上がった人に求められるのは、「実務の経験」「仕事の相場観」であるからです。「知識」でやる仕事は20代までと考えて下さい。実務の経験も無いのに「私は資格があるんだ」などと自慢している人と一緒に仕事をしたいと思いますか。
 難関な資格なら良いかというと全く逆です。顧客の立場からして、重病になった時、資格の無いブラックジャックに手術をしてもらいたいか、医師の資格はあるけれど経験の無い医者に手術をしてもらいたいかということです。難しい資格ほどそこでの競争が激しい世界だから、難関な資格ほど「年齢が上がって未経験」のハンデは大きくなります。
 でも、少なくとも資格を取っておくことは、「無いよりは有るほうが良いでしょう」という人がいます。私は、「資格の害の方が大きいです」と申し上げます。実際の仕事に関係のない方向への資格は、人生のストーリーのツジツマが合わなくなります。何をやりたい人なのか、実際にやってきたことに集中して取組んできたのか、人生の方向性が定まっていない人だと評価されるマイナスポイントは致命傷となります。
 
 キャリアの作り方のポイントは、これまでの実務経験の上に実務経験の積み木を積み上げてゆくことです。仕事の幅を広げようと、横に置いたり、離れてポツポツ置いてゆくと、いつまでたっても上に積みあがってゆきません。年齢相応な高さが必要なのにその高さの無い人は、「色々出来そうだけど何も出来ない人」になってしまいます。
 「楽しみの人生か、嘆きの人生か」の戦略決定をせずして、余計な努力をしても何の足しにもなりません。現在与えられている仕事を深く極めてゆき、現在の職場の中で求められる要素を把握して、職場の中で求められる人になることこそが、もしも、やむおえない事情でリストラされた場合でも、次の職場からも求められることになります。

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)