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学園再生の事例研究

日時:2006年2月9日(木)19:00?21:00
場所:学士会館 310号室
スピーカー:矢澤 昌敏氏

「学園再生の事例研究」

            矢澤 昌敏 


 脳力開発のケーススタディの研究対象として、品川女子学院の学院再生の事例を取り上げることとしました。

 わずか19年前、1987年に東京都の内部資料で、財産、応募者、偏差値などを勘案してつけられた「廃校危険度ランキング表」にて、廃校の危険度が高い学校として上位に挙げられていたこと。2005年3月は、東京大学2名をはじめ国公立大学、名門私立大学の合格者を多数輩出する実績を作り出していること。
この事実から、学園再生にどう取組んで実績を挙げたのか、6月に現地調査をした上で、7月にもう一度、調査結果をまとめてゆきます。今回は、その前提となる資料を提示します。

品川女子学院のプロフィール
所在地 京浜急行 北品川駅 徒歩1分
創立 1926年(大正15年)4月15日
創立者 漆(うるし)雅子
理事長 漆 邦臣
学校長 漆 邦臣
副校長 漆 柴穂子

沿革
大正15年 荏原女学校として創立
昭和 4年 品川高等女学校として設立
昭和22・23年 学制改革により中学校・高等学校設置
昭和62年 廃校危険度ランキング
平成 2年 新制服制定
平成 3年 品川女子学院へ校名変更
平成6・8年 新校舎完成
平成 8年 女優の広末涼子が入学
平成16年 中高完全一貫制スタート
平成17年 創立80周年記念式典挙行

在籍数  1,276人
中等部    673人
高等部    603人
クラス
1年(中1)標準クラス6クラス、
2年(中2)標準クラス5クラス、
3年(中3)標準クラス6クラス
4年(高1)標準クラス3クラス
      英語選抜クラス2クラス
5年6年  文系選抜クラス1
(高2高3)理系選抜クラス1
      文系標準クラス2
      文理混合標準クラス1

生活
3学期制、週6日授業。8時20分登校。
「一足制」、教室、廊下は上履き不要。
カフェテリア(食堂)も利用できる。

改革の旗手
漆 柴穂子 品川女子学院 副校長
1961年(昭和35年)東京生まれ
品川女子学院を設立し経営する一族、漆家に生まれる。小さい頃から学院の経営に奔走する両親の姿を見て育ち、教師の道を志す。
中央大学卒業後、早稲田大学教育学部専攻科修了し、学校法人田園調布学園での教員修業を経て、曾祖母が創立した品川女子学院に戻り、学院経営に携わる。制服のデザイン、カリキュラムの大幅な変更など様々な改革を成し遂げた。

品川女子学院 ミッションステートメント(抜粋)

☆ 学校としての存在意義
「私たちは世界をこころに、能動的に人生を創る日本女性の教養を高め、才能を伸ばし、夢を育てます。」

☆ 具体的な未来像(ビジョン)

1. 10年後の卒業生の姿
9割以上が社会進出し、やりがいを持って仕事をしている。「目標値」28歳を目標に社会で活躍する女性を育てる
仕事満足度調査(5段階評価で)「4」「5」が8割以上

2. 10年後の在校生の姿
進学校として認知されている。
「品女の品は、品位の品」として認知される。
「目標値」大学合格者数 国立延べ50人
早稲田・慶応・上智延べ100人
海外留学延べ10人
3. 10年後の受験生の姿
第一志望率の高い上位校として認知される。
「目標値」偏差値60 第一志望率50%

4. 10年後の教員・職員の姿
全員がミッション・ビジョン・バリューの貢献をし、評価される。


☆ ミッション・ビジョンを実現するためのバリュー
品位・誠実さ・プロ意識・スピード・相手の立場に立つ

☆ 改革の5つのキーワード

1.「有言実行」
やると決めた時点で広報し、必ず実行する。

2.「生徒が主役」
生徒の立場から考えて、良いと思えることを実行する。

3.「改革をおそれない」
過去に拘らない。成功体験にも捕われない。

4.「オープンにする」
良い面も悪い面もオープンにした上で学校を選んで欲しい。

5.「未来主義」
未来像(ビジョン)を見つめ、そのために今何が必要かを考える。

☆ 提案のルール
1. 背景や前提
なぜ提案するのか
2. 目的
願い(だれのために、どうなることを期待しているのか)は何か。
3. (達成)目標
数値目標など、実施後の評価ができる具体的な目標を設定する。
4. 実行体制
だれが中心となり、どのような連携で実行するのか。
5. 実行項目と実行計画
最終期限は何時か。実行計画はどの様な物か。
6. 費用
実行に伴う費用はどうなるのか。
7. 予想される課題
実行に伴うハードル、予想されるリスクは何か。
○ 28Project
28歳になったとき、社会で活躍している女性を育てます。学院が目標とするのは、高校を卒業する18歳ではなく、28歳の一人前の女性です。学力は、一つは大学に入学させる力をつけること。もう一つ、社会で通用・活躍する力、社会に貢献する力をつけることだと思います。そのことによって、自分も充実した生活を送ることが出来るのです。       具体的には、大学・大学院を卒業して28歳になったときに社会で活躍している女性となるよう、様々な教育内容を実践しています。

○ 制服
 可愛らしい、高級素材の制服に作り替え、生徒に自慢の出来るものを与えることによって、自信を持たせた。

○ 学校の特色 1
英語運用能力を養うため、中1から週7時間の英語授業を実施し、中2では英語圏の方を英語で浅草を案内する機会あり、中3ではファームスティを含むニュージーランドへの修学旅行を実施しています。
希望者にはオーストラリア・ニュージーランドの留学のチャンスがあるだけでなく、(居ながら留学)が出来る環境づくりを目指し、留学生を多数受けいれています。

○ 学校の特色 2
 学習に関しては大学進学を見通した6ヶ年一貫のシラバスを持ち、大学に合格できる力を育成しています。
 自学自習力を養うため、ほぼ1ヶ月おきに、個別面談を実施し、個別に沿った指導を実施しています。自学自習に至る過程として、一定ラインに到達しない場合は個別指導や補修が行われ、更に上位を目指す生徒に対しては補習が行われます。本校は、週6日制(週34時間の授業)を採用しているため、ゆとりを持って学習することが出来ます。

○ 結論
 私学の存在価値は「何のために、この学校があるのか。」を明確にすること。
 「こういう生徒に来て欲しい。」ということを、ハッキリさせると同時に、学校として、出来ることと出来ないことを明確にし、その学校に合う生徒が集まるのが理想と考えます。

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