« 教育問題への情勢判断学と脳力開発の応用 | メイン | 教育問題について、発表のまとめ »

教育問題について、今年前半の例会まとめについて

日時  : 10月11日  木曜日
      18:30?20:30
場所  : 港区商工会館
参加費 : 1000円
テーマ :「教育問題について、今年前半の例会まとめについて」
担当  : 榊原 高明

 10月の例会では会誌にも記しましたように、皆様の発表をまとめ、情勢判断して、問題の本質をつかみ、提言まで持っていければと思っておりました。しかし、今例会で議論し会の提言としてまとめるのは、発表された各人の価値観、立場が異なるので、難しいのではないかとのことになりました。ただ、整理は出来るのでその方向で議論することとしました。ここでは、教育問題の立場を整理、明確にし易くするために榊原が作成した、教育に係わる各要素をブロックチャート化した図を使って議論した内容を報告します。今までの発表の整理と言うよりは、今までと多少異なった視点が示されたと思いますので、こちらを中心にしました。
1.ブロックチャート図について
 教育現場の原点として家庭を出発点としています。ある意味で教育の最も重要な拠点である家庭が今、家庭内暴力やいじめ、引きこもり、など厳しい状況に取り囲まれています。
 家庭から始まり、小学校⇒中学校⇒高校⇒大学⇒企業や公的組織(就労先)のタテラインが有ります。ここに、良い学校に入るための受験競争(偏差値教育)があり、この為の塾・予備校通いが平行してあります。
 国は文科省や教育基本法、教育指導要領、また教科書検定を通じてこのタテラインへ影響力を行使します。
 一方、海外からはグローバル化の波が押し寄せており、この外国勢との戦いに勝つための人作り=教育の必要性がタテラインに側面から圧力を加えていることを表しています。
2.何のために勉強するのか
 建前でなく、本音で言えば良い学校へ入り、大手企業へ入社して高い給料、立派なステータスを手にしたいためではないでしょうか。これが故に、良い学校に入るための受験競争が起こり、偏差値教育の弊害が生まれ、大切な”人つくり”教育が歪められ、学校での教育が単なる知育教育の場になっているのではないでしょうか。
また、日本では良い学校⇒大手企業・公的組織のラインに乗らないと社会の中枢に入っていけないという傾向もあります。
 企業の有名校主義や人物評価の基準が変わらない限り受験競争(知識偏重教育)は改善されないでしょう。
3.このタテラインに表現されていないフロー
 大部分はこの、家庭⇒学校⇒企業のタテラインに乗っているだろうが、このラインに乗らない価値観を持っている人間もいるはず。
 例えば、一口にフリーターといってもいろいろな人間がいる。しっかりと自分の考え、方向性を持ってフリーターをしている者もいる。この背景にはこれを受け入れられ豊かな社会や価値観の多様性がある。
 また、登校拒否に始まり様々な理由からタテラインからドロップアウトしてしまう人達がいる。人間の個性、才能、生き方の多様性、チャンスや可能性について教えることも重要である。
 価値観の多様性などに踊らされ、安易にタテラインから外れることには厳しい現実がある。ボランティアや語学留学などで半年から2年位海外へ行ってから日本へ戻って来ても、正規の就労経験も無く、訓練もされていないため、正社員として採用されにくくなる。一旦、フリーターとなって28歳位になってしまうと良い仕事に就くことが困難になってくる。
 もちろん、中には自分で会社を興して成功するような力を持った人達もいるが、割合は少ない。そのような力を持たないものがドロップアウトすると大変なことになる。
 一方、企業はグローバル化が進行する中で勝ち残るために、これら非正社員を安く便利に利用しようとする。
少なくとも、現実的な問題としてタテラインからドロップアウトするものを減らすための教育も重要である。
4.グローバル化と自立
 教育問題=人つくりは国内問題の視点だけではなく、グローバル化が激しく襲ってきている現代は、外国勢との競争にいかに打ち勝つかの視点も必要である。知識はもちろん人間力も彼らと対等以上渡り合えなければならない。これに敗北することは我が国の存立にかかわる重大事である。これには、自立した人間でなければならないとも言える。
 自分の台湾や中国でのビジネス経験から、日本人は彼らと比較すると、優しさ、誠実さ、秩序を守る、といった美点は多々あるが、一方ひ弱に見える。所謂、自立感が不足していると感じる。
 ただ、日本社会では自立というと、直ぐに“自己中”などと取られ易く、逆に自立した人間は胡散臭いとか協調性が無いと判断されることがある。
 一般的に本音のところでは、日本企業は会社に従順で協調性がある人間を求める傾向がある。自立した人間は扱いづらいと感じている。
 自立した人間を企業が欲しないなら、そういう人間を作ろうとする教育も生まれない。
これが今も知育教育偏重につながっているのではないか。今の教育の中に自立を教える場が見当たらない。
 真の自立とは何か、どんな自立がいいのか、自立について真剣に議論する必要があるのではないか。
5.前半の発表とブロックチャートについて
 皆さんが発表された大部分の報告に共通しているのは、“こころ”の問題がいかに重要であるかを述べられています。
 今、中教審で議論されている内容については、マスコミ報道で知っている程度ですが、それを見る限り、教育問題の改善、解決にとって“こころ”が特に重要であるとは言及されていないようです。
 また、仮にたとえそれが重要であり、最優先で取り組む課題とされた場合でも、ブロックチャート図の中で具体的に、いつ、どこで、誰が、何を、どうやって教えるのか。家庭にあっては親がこれを教えられるのか。学校現場では今教壇に立っている教師に教えられるのか。皮肉ぽく言えば、これらまで塾や予備校などの外部に頼ろうとするのか。正直“こころ”という目に見えないものを教え、教育することには非常な困難が伴うと思います。
 外国ではこの役割の相当部分を宗教が担っています。しかし、我が国では現実としてこれに期待することはできません。
 繰り返しになりますが、グローバル化が進行している現代、中国、ロシア、インド、ブラジルなどが今後力を付けてくることは疑問の余地がありません。今はまだ彼らは日本の技術レベルに及ばない分野もかなりありますが、これから五年後、十年後もこの優位性を保てる保障はありません。資源の無い我が国はなんとしても海外勢と戦い、勝ち残らねばなりません。そのためにも、人間力=強いこころを持った人間を作る教育がなんとしても必要です。
 これからますます“こころ”の重要性は認識されてくると思われますが、それを、具体的、現場的にどう実践に移していくのか議論する必要を感じます。
5.ブロックチャート図概要
 ここでは、家庭⇒学校⇒企業のタテラインのみを図示しました。
 ここに、教育の方針に係わる文科省や中教審、教育指導などが影響を与えます。
 タテラインには受験競争が伴い、塾や予備校通いが加わります。
 就労先には、別ラインで自営、アーティスト、プロスポーツ選手、芸能、フリーター
があります。

    就労先
  企業    公的組織


     大学
 理事  教授  学生

     高校
 校長  教師  生徒

     中学校
 校長  教師  生徒


     小学校
 校長  教師  生徒

     家庭
 父親⇔母親⇔子供

・いじめ ・登校拒否
・ 引きこもり ・ニート
・ 受験競争、偏差値教育
・ 携帯電話の普及
・ 豊かな社会・拝金主義
・ コミュニティーの崩壊

*これからの教育―視点を高く広く
 グローバル化の波;手強い外国勢と渡り合って勝てる人間を育てる教育も不可欠。

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)