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2月例会 報告

日時  : 2月10日  水曜日
      18:30 ~ 20:30
場所  : 港区立商工会館
テーマ : 「政権交代劇の情勢判断学的考察」
担当  : 古川 彰久

1.スローガンの持つ戦略的な意味

世界的な金融危機も覚めやらぬ間に我が国では政権交代が実現した。新しい民主党政権で我が国がどのような方向に進んでいくのか今年は節目の年になりそうですね。
これからどうなっていくのかが皆さんの最大の関心事でしょうが。これからのことを考えるためには、これまでの歴史的経緯や取り巻く環境の把握が必要ですね。
民主党の政権奪取にはいろいろな要素があるわけですが、今回はスローガンと戦略の観点から観察して見ましょう。
かって、城野先生が日本の敗戦後にも中国に留まった時の、スローガンが「祖国復興、山西残留」だったそうですね。スローガンには戦略方向を指し示すと同時に人の力を結集する目的があります。
いったん政権を手放さざるを得なかった程の自民党を小泉元首相は選挙で大勝させた。そのときの小泉さんのスローガンは「自民党をぶっ壊す」と「官から民へ」でした。結果的に大勝したことにより自民党は復活したが、小泉さんの後継者、特に麻生さんに至っては小泉さんの獲得した民意の上に胡坐をかいて小泉批判をしたということで、結果的には古い自民党が復活したということでしょうね。
これに対し、今回の民主党はスローガンとして「脱官僚依存」「コンクリートから人へ」等を掲げ、社民党、国民新党との共闘体制を組み、選挙に大勝した。民主党はマニフェストで訴えたものが認められたといっているが、多くの人はおそらくマニフェストをじっくり研究する機会などなかったのではないか。それよりも国民の間に現状打破を期待するエネルギーが如何に鬱積していたかでしょう。そのエネルギーを民主党のスローガンで票として集約し、まずは民意を集めて選挙に勝つという大目標は獲得したことになる。
このスローガンを掲げ、民主党政権樹立の最大貢献者が小沢さんですから、政治資金問題を抱えているものの民主党内部の力関係か


らは小沢さんを排除することが難しいということになるでしょう。

2.「脱官僚依存」の持つ意味

第2次世界大戦後、敗戦国日本は「経済復興」を目指し、当時の冷戦構造の中で、日米安保体制のもと経済発展の礎を築き、その後経済大国を実現してきた。勿論その時々の政治家が意思決定をしてきたのですが、形としては行政機関としての官僚機能を通して実現してきた。
一方で冷戦構造が崩壊し、中近東問題等世界情勢も変化し、国内も戦後60年を越え年齢構成等大きな変化が出てきています。
組織特に官僚組織は組織自体が硬直化し、自己目的化し自己増殖しやすく、環境の変化についていけず効率が悪くなるといわれています。これらに対応する方策の一つが「官から民」へということでしょうが、「国鉄」とか「郵政」等外郭機構ならばともかくも、「官」の持つ縦割り行政の弊害等に対しては「官」そのものの変革が必要ということでしょう。
これまでの自民党政権がある意味では官僚機構を通して築いてきた利権構造を批判し、国民の変革への期待に応えるスローガンとしては効果があったといえるが、現実に官僚に依存せずに、政治主導で具体的に何がどうできるのかが今後の大きな課題であろう。

3.「政治主導」への可能性

「政治主導」ということだが、どのような政治を進めるのか、マニフェストには戦術レベルの方法論は述べられているし、理念として「コンクリートから人へ」とか鳩山首相の「友愛」が掲げられているが、現実の世界の中でどのような国家を目指していくのか。必ずしも明確ではない。
現実に自民党から政権を奪取したものの、政権与党としては、国民新党から社民党までの幅がある。国民新党は小泉元首相の郵政改革に反対した人達で、どちらかといえば大きな政府あるいは行政を目指す人達である。また、社民党は労働組合がベースにあり、企業においても経営内容よりも自分たちの権利意識が高い。
現在、事業仕分けが注目を浴びているが、これまでの政官癒着あるいは官主導の問題点を洗い出し、国民レベルで論議していくということはステップとして意味のあることであるが、現実の時間軸と環境の中で成果を挙げていくには戦略的な方向付けが重要であろう。
政と官の関係あるいは中央と地方の関係に注目を向けているが、財あるいはいろいろな組織との関わり、更にはその構成員や国民レベルの課題等にもどのような姿勢で臨むのか、国としても国民に厚い処遇をしようとすれば、その原資をどこからどのように得るのか、その手当てが必要であろう。

4.多角度からの論点の整理と今後の方向の見極め

このような大きなテーマを論ずる場合には、立場の問題が内在する。同じ国民といっても、企業人、自営業者、公務員、政治家、年金生活者、学生、主婦等々、更には企業人でも経営者とサラリーマンとは異なってくるでしょう。また、育った環境等(たとえば年代)による価値観の相違なども出てくる。
このような問題を情勢判断学的に論ずるならば、まずは自分の立場や価値観を棚に上げて、いろいろな立場あるいは価値観が含まれるように、多角度の観点から論点を整理する必要がある。自分の立場や価値観にこだわっていると、それに合わない考え方を最初から排除してしまい、結果として判断を間違える恐れもある。
従い論点の整理は、自分の考え方を整理するのではなく、そのテーマに対し論じられている色々な角度からの意見が網羅されることが望ましい。そこに自分の考えと会わないものが入ってくるのはむしろ当然といえる。論点を整理することは、それで結論を出そうということではなく、まずはどのような考え方があるのか、冷静に整理し比較してみようということです。あくまでも次のステップに進むための土俵作りのようなものです。

このような観点から本題に戻ります。
現在の民主党は山積する課題に対し、「当面対処」で凌いでいるといえる。
たとえば、沖縄の基地問題についても、単に基地をどこに持っていくかという問題ではなく、日米の関係をどのような方向に持っていくのか、日本として自国の安全をどのように保障していくのか、今後の近隣諸国との関係をどのように位置づけるのか軍事問題だけでなく経済問題も絡んでくるはずである。このような重大の問題に対し、国内でどのように論議し、どのようにコンセンサスを得ていくのか見えてこない。
また、国内における福祉厚生施策等についても、官僚依存を政治依存に切り替え短期的に遣り繰りしたとしても長期的には財政負担は増加するはずであり、国民の依存体質、親方日の丸体質にメスを入れない限り、国民経済的な改善は難しいであろう。
いずれにしろ、どのような国を目指すのか、「当面対処」で済ましていくわけにはいかないと考えます。
脳力開発的な観点から「抜本改革」を検討するとすれば、以下のような論点について、論議を深める必要があると考えます。

先にも述べましたが、論点の整理はそれ自体が結論を出すことではなく、それぞれの課題に対して、まずはどのような意見や考え方があるのか、冷静に整理してみることが必要です。
次のステップでそれぞれの考え方について、どのような立場あるいは価値観からの主張なのか、今後どのような環境変化が考えられるのか等から、方向が求められていくものと考えます。

論点
1.政権交代の歴史的経緯
2.環境の変化
(1)世界経済のグローバル化進展と金融危機
(2)情報化の進展
(3)少子高齢化問題
3.政治のあり方
(1)政、官、業の関係
(2)中央と地方
(3)組織と個人
(4)個人の意識の変化
(5)財政問題
(6)諸外国との関わり方(米国、中国、東南アジア、北朝鮮等々)
4.当面の課題
(1)小沢幹事長の政治資金問題
(2)参議院選挙:民意の動向

論点の整理をした上で、どのような方向付けをするのかという検討に入る場合には、当然その人の立場を明確にして、大きな流れの中で、自分の希望がどのように実現できるのかということになります。

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