３回にわたって、古川元晴氏から、「原発事故から学ぶ“正しい戦略”」について同氏の戦略展開について、意見を伺った。戦略展開に当たっては当然のことながら、その人なり、所属する組織なりの立場が反映することとなる。同氏の法律家としての立場、それも立法にまで踏み込んでいることは、これまでの同氏の経歴が反映しているといえる。
今回論点になった課題を情勢判断学あるいは脳力開発的アプローチで考察した場合に、それぞれの論者の立場によってどのように論点が異なってくるか考察してみよう。
１．法律に対する立場
（1）法律を利用したり活用する立場
　　弁護士や、判事、検事、警察等、それぞれの立場で法律に対する姿勢あるいは考え方が要求されることになるでしょう。
　　このような中で、古川元晴氏は立法にまで踏み込んでいるといえる。
（2）法律で規制される（受身の）立場
　　一般の人の場合には、法律によって自らの活動が拘束されることになるので、法律に対しては、受身にならざるを得ないでしょう。
　　ただ、これまで加害者なり、被害者なり、法律に関わった人はその体験が反映することになるでしょう。
２．原発事故に対する受け留め方
（1）原発事故の責任問題について
　①加害者としての立場
　　イ、東電の立場
　　　加害者としては、出来るだけ、損害の負担を軽減しようとするのは当然の行動である。その規制として、法律が前面に出てくることとなる。特に電力事業は、独占事業であり、特殊な立場といえる。
　　ロ、国の行政機構の立場
　　　電力を独占事業として位置づけ、それを推進してきたのが国の行政機構であり、電力事業を管理するという名目になっているが、相互に依存関係にあり、責任問題については共同責任ともいえる。
　　　国の行政機構という強力なバックアップを背景にした独占事業者の行動には歯止めが掛からないといえる。
このようなあり方が国としてよいのかどうか問われることとなろう。
　②被害者としての立場
　　被害についても、直接身体や財産に影響を及ぼすものから、生活環境の問題、風評被害まで、さまざまな被害の内容と程度、更にはそれに対する補償のあり方等、さまざまな立場が想定される。
　③国民の立場
　　これらの被害に対する負担が、税金とか電力料金の引き上げという形で押し付けられることとなる。
３．エネルギー問題に対する考え方
（1）日本国としてのエネルギー政策
　①東電等独占的電力事業者の立場
　　現在の独占的な利益を享受している電力事業者には現状の改善は期待しがたいといえる。
　②新エネルギー供給事業者の立場
　　これまで独占的電力事業の影に隠れて存在が注目されて来なかったが、今後どのように力をつけていかれるのか注目される。
③国の行政機構の立場
　　これまでの独占的な電力事業を前提にしていく限り、大きな変革は期待できない。
国民的立場更には、これから予想される政策的立場から、電力事業を新事業者にも開放し、新規エネルギーの育成にも注力できる体制への変更が求められていると考えられる。
（2）国民の立場からのエネルギー対策
　　これまでと同様に特に意見の無い人が多いのかもしれないが、原発反対を唱える人も出てきており、今後の方向としては、安心と安全を前提とした電力供給が求められてる。
　　ただ、新エネルギーに関しては、これまであまり論議されてこなかったことから、社会の中に具体的な方策が蓄積されていないことが懸念される。
　　この点では、新エネルギー対策の先進国とも言えるドイツやデンマークでの経験に学ぶことも重要と考える。
（3）政治のあり方
　政治がこれまでのように官僚任せの事なかれ主義でいる限り新しい展開は期待できない。
ただ前項にもあるように、国民の中に変革を期待する声が高まってきており、新しいエネルギー政策が求められている。
　　
　　　国民をリードできるような対応策を打ち出すためには、新エネルギー活用先進国におけるこれまでの推進対策の研究や、我が国における新エネルギー開発事業者に対する協力体制や、新エネルギー開発研究者への助成等、相当な努力が求められる。

　　　我が国の既存の体制の中で、これほどの政治的エネルギーを期待することは現実には非常に難しいように思える。