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平成24年7月例会の報告

日時  : 7月11日  水曜日
      18:30 ~ 21:00
場所  : 港区立商工会館
参加費 : 1000円
テーマ :「LCB式組織の健康診断R 」を活用した
     エラーの低減、撲滅活動

担当  :中田 邦臣
     (LCB研究会 代表、NPOリスクセンス研究会 副理事長、NPO失敗学会 理事)

 1.はじめに
 企業や行政機関等各種組織では、事故や不祥事等が発生しないようマネジメントしているにもかかわらずなかなか効果が得られていないようである。この原因の一つとして、組織内に在った拙い事象よりは当事者となった個人の過失やヒューマンエラーが原因で起きたとして処理し、それら拙い事象が起きていた組織の背景要因にまで遡って原因究明し、対策をとらないで済ましてきていることとの指摘がある。
 組織内に顕在化した拙い事象を、人が自分の身体のいつもと異なる状態に気付くようにセルフケアし、すぐ対応すれば組織内での事故やトラブル、事故や不祥事等は、初期の段階で食い止めることができる。組織内の拙い事象に気が付く知識力とそれらへの対応力をリスクセンスと称してリスクセンスを向上させる手法の普及活動を実践しているので以下に紹介する。

2.事故・不祥事等の予兆把握法とは
組織内の事故・不祥事等は、J.リーズンの提唱しているスイスチーズモデルを日本の組織になじみやすいよう言い換えた組織事故の発生モデル「防護壁モデル」(図―1)に基づき起きるとし、防護壁の劣化にいち早く“リスクセンス”を身につけ、磨き、いつもと異なる事に早く気付き“未病“の段階で事故・不祥事等を発見し、対処する方法である。

 図―1  防護壁モデル(内容省略)

このモデルでは、組織内に事故やトラブル、不祥事等が起きないようにと設けられている管理すべき項目群(本稿では「防護壁」という)が、経営方針に基づく指揮/監督者による拙いマネジメントの結果、多くの防護壁が機能しない状態に陥り、それらが同時に存在した時にトリガーとなる作業で大きな事故やトラブル、不祥事等が起きると考える。このモデルに基づき、産業界はもとより、大学や行政機関内で起きた事故や不祥事の多くの事例解析結果からLCB式組織の健康診断法Rを開発し、機能が低下しやすいため常日頃から特に監視が必要な防護壁として11個、採り上げた。

図―2 11の組織の診断項目(内容省略)
これら11の防護壁がいつもより劣化が進み何か変だと感じる事象に組織及び組織の構成員が早く気がつくリスクへのセンスの程度を測定する手法として、約20分程度で簡便に実施できるLCB式組織の健康診断法R を用いる。この診断法は、東京大学環境安全本部とLCB研究会によって開発された。

(1)組織のリスクセンスを測定する手法
  組織内の3階層、部門長(部長などの上級管理職)と課長、グループマネージャー等中間管理職と第一線で実務を担当する層の3階層が11の診断項目について同じ診断シートで同時に組織の状態を診断し、診断結果の差異の有無と差異の程度で組織自身のリスクへのセンス度を測定する。即ち、3者の診断値が目標とする管理レベル以上(6段階診断中4段階以上)で差異が小さい場合は組織のリスクセンスは良い状態に在るとし、診断値が4以下の場合や差異が大きい場合、その診断項目が遠因でリスクが早く発見できない、拙い組織の運営状態にあると診断する手法である(診断はWebで行う)。

  図-3 化学系企業の工場での診断例(内容省略)

 この組織診断の精度は、診断する人が11の項目に精通している度合いが高ければ高い程、診断精度が高くなるので、併せて個人の11項目への精通度をリスクセンス度として測定を勧めている。

(2)個人のリスクセンスを測定する手法
  個人のリスクセンスの測定は11の項目への精通度で測定し、11の項目を3つの視点で分類、L(Learning),C(Capacity,B(Behavior)の3つの視点の知識力と対応力で測る(所用時間は40分)。そして社会から組織の構成員に求められている最低源のリスクセンスのレベルを各項目60%以上とし、総合点で80%以上の場合、認定証を発行している。
  個人のリスクセンス度と診断者が属する組織の診断を同時に測定する手法は、NPOリスクセンス研究会が「リスクセンス検定R 」として実施している。(参考:ご関心のある方は私達のHP(http://risk-sense.netを覗いて下さいますよう。)
現在は、団体受検のみ受検を受け付けている。受検は、Web方式(ペーパー受検も可)で自分の都合が良い時間に受検出来、化学系企業を中心に受検が拡がっている。

(3)組織と個人のリスクセンスの向上
組織と個人のリスクセンスを向上させるための具体的な施策については、写真―1の受検の公式テキストを参考にする他、失敗から学ぶとして、失敗事例の共有、失敗の現物の見学会、失敗の擬似体験をする等を、また日頃から5S活動、ヒヤリハット(HH)活動、KY(危険予知)活動等に努めるなど多くの手法を提案している。

写真―1 受検の公式テキスト(内容省略)

(出版社:大空社、定価:2000円税別)

 3.まとめ
  現在、ものつくり分野では、前項で紹介した組織内で起きる事故や不祥事の未然防止策として「リスクセンス検定R 」が普及しつつある。それ以外の分野、医療・介護分野、サービス分野に於いても同様な手法で事故や不祥事を未然に防ごうと私達は手法の開発を進めている。

追:例会で本内容を発表させて頂いた際、執筆者割引があったとはいえ、参考書を多くの方にご購入頂いたこと、心からお礼申し上げます。
                                以上 

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