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平成28年6月例会報告

日時  : 6月9日 木曜日 18;30 ~ 20;30
テーマ : 城野先生遺稿
      古事記中国語原本と翻訳

場所  : 港区新商工会館
担当  : 榊原高明

 城野宏先生の保管資料を整理中、古事記について製本済(上巻)のものと原稿のまま(中巻、下巻)の資料が見つかりました。これは、従来、我々が学んできた古事記とは相当違いがあります。個人的にはこの資料が重要なものではないかと感じました。今月の例会で参加者の皆さんへ説明し、本資料の今後の取り扱いについてご意見を賜りたいと思います。

1. 古事記とは
(1)真福寺写本
    日本最古の文書と言われている。原本は存在せず、写本のみ。写本は岐阜県にある真福寺で発見された。
    写本は上巻、中巻、下巻からなり、中国語で書かれていて、国宝に指定されている。これは、国会図書館でも、また、ネットでも閲覧できます。
(2)本居宣長の翻訳とは
 先生によれば、宣長は日本の古語を研究し古事記の中国語式漢字配列のそばに、自分の知っている古語を当てはめ、こう読むのだと決めてしまったのが「古事記伝」である。
 明治以後の古事記研究は、宣長の古事記伝を出発点とした、難解な日本古代文らしき文章を対象にして来た。人に分からぬ言葉に翻訳しておいて、分からぬから何とか解説しようというので膨大な「研究」がなされた。まるで幽霊と喧嘩しているみたいで、ばからしいし、まるで偽物の骨董をいじりまわして、独りよがりしているみたいである。

2. 城野宏先生の古事記翻訳
(1) 先生の古事記既刊本との時系列的関係
1974年7月 初版 「性と権力の書―古事記」(オリエント書房)
1983年4月 再版 「脳力開発による歴史の解明―古事記と日本人」(PHP)
1983年8月 テキスト古事記(上巻)(文化経済センター)
 なぜ、初版からテキスト古事記まで9年もブランクがあるのかは分かりませんでした。
(2) 翻訳の目的
 古事記は難解で近寄り難いという先入観を突き破り、内容を十分分析し、時代的確証から古代日本人の生活内容の測定まで研究してみればよい。これまでの偽りの歴史から抜け出すための手助けとする。

3. 城野宏先生の問題提起
(1) 古事記の序文と本文はつながらない
 序文の方は神代に始まって、「神武天皇」建国となり、立派な国家が成立し、これに反抗するものを軍事的、政治的に平定していって、統一国家として継承されてきたと書いてある。ところが古事記の本文には、そんな内容は殆どない。序文にある壬申の乱の記述についても、本文には、それに相当する記述は何もない。  
(2) 本居宣長翻訳の問題点
1-(2)ですでに説明しました。
明治以後の古事記研究が、宣長の読み方と解釈が、天皇の「万世一系」を証明する材料に利用されました。原本のやさしい中国語の写本が対象にならないで、難しい古代語訳古事記が、まるで本来の古事記の原本だと誤解されてしまった。
(3) 古事記と日本書紀の年代確定について
 古事記の歌謡は全部、漢字でできた音標文字を使って記述してある。その漢字の意味とは関係がない。イロハニホヘトに相当する漢字による仮名が、伊呂波邇本HE登というようにできている。始めから終いまで、伊は伊、呂は呂というように、統一した使い方になっており、例外はない。つまり当時こういうカナが、ちゃんと確立し、社会的に通用していたとみられる。
 日本書紀でも歌謡は、音標文字として字の意味とは関係ない漢字のカナを使ってあるが、その字の発音はかなり、もとの中国の字音に近い。日本式としてまだ確立していない感じである。こういうところからも、日本書紀と古事記とどちらが先にでき、どちらが古く、どちらが新しいかが確定できる可能性がある。

4. テキスト古事記(上巻)の発行者について
 ネットでもいろいろ検索してみましたが、手掛かりは掴めませんでした。テキスト発行者の西忍さんから城野婦人へ出された手紙を婦人に見て頂き、何らかの情報を頂ければと考えています。
―後日婦人宅を訪問し、これについてお伺いしましたが、手掛かりは得られませんでした。

5. 今後について
 例会参加の方々からいろいろ貴重なご意見を頂きました。まずは、我々自身でこのテキスト古事記(上巻)をよく理解する必要があるとの認識となりました。
 このために、石田様のご厚意により、テキスト古事記(上巻)をスキャナーで読み取り、このファイルを参加者へお送り頂き、各自これを読み次回の例会で討議することとなりました。
                                                    以上

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