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2017年6月20日

平成29年7月例会報告

日時  : 7月13日 木曜日 18;30 ~ 21;00
テーマ :「カエルの楽園」百田尚樹著
場所  : 港区商工会館
参加費 : 1000円
担当  :石田 金次郎

「カエルの楽園」は、寓話です。「カエルを信じろ」、「カエルと争うな」、「争うための力を持つな」という「三戒」を守って平和に暮らしているツチガエルの国(ナパージュ)が、平和はこの三戒のお蔭であると信じているうちに、凶暴なウシガエルたちに滅亡されてしまうという寓話である。
この寓話の大意は、「日本人が時代や環境の変化を捉えきれず、憲法9条や平和主義だけを信じて、相も変わらぬ思考から抜けきれず、自国の防衛や外交に無頓着であれば、いずれこの豊かで平和な国は中国の侵略を受けて滅ぼされてしまうぞ。」である。警告の書としている。
(この物語の登場者とそのプロフィール)
ナパージュに流れ着いたソクラテスというアマガエルを客観的な存在として登場させて、語らしめている。
ナパージュはJapanの反対読みで、日本である。このツチガエルの国ナパージュは豊かな経済、豊かな自然、心優しいカエルの楽園である。
元老院は国会に当たるもので、プロメテウスとカルディアンというカエルを登場させている。プロメテウスは、三戒より現実の命が大切であり、スチームボードという世界最強の相手との協定で平和が守れたのであり、協定は戦争をするためでなく抑止力として必要であると主張している。一方、カルディアンは三戒がある限り平和であり、協定が抑止力というのは詭弁である。問題あれば、誠心誠意話し合えば、争いはないという主張である。
デイブレイクはナパージュのメディアであり、この国で起きた全てのことを話し、カエルの信頼を得ている存在である。三戒を絶対遵守の立場である。また、ナパージュの過去の侵略・残虐行為に対し、常に「謝りソング」を歌うことを主張している。元老院は間抜けばかりで、誰を議員に選んだらよいかを教えている存在と自負している。世論形成に絶大なる力を持っている。謝りソングとは、三戒が出来たときに生まれた歌で、「我々は罪深きカエルである!罪は我に、みんなで謝ろう!」という歌である。ハンニバル兄弟を「カエル殺し」と非難し、存在を評価しない。
ハンニバル兄弟とは、ハンニバル・ワルグラ・ゴヤスレイの力のある三兄弟である(自衛隊)。
スチームボードとは、巨大な鷲(米国)で、ナパージュとかって一戦交え支配したことがあり、この世界はスチームボードの監視下にあると自負している。が、年をとってしまい。往年の力に陰りが見え、ナパージュとの協定の延長については、ナパージュも一緒に戦うことを条件としている。
ウシガエル(中国)は身体も大きく、凶暴なカエルで毎日色々なカエルを食べている。
ヌマガエル(韓国)は、ヌマガエルを曾て奴隷にしたことがあり、ツチガエルを劣等と蔑んでいる。
あと、プロメテウス寄りのハンドレッド・デイブレイク寄りのフラワーズ・無関心派のローラなどの登場カエルがいる。以上が登場者のプロフィールである。
(物語のあらすじ・・・事態と意見など)
1;ナパージュの南の崖に 、ウシガエルが現れ一匹、二匹と増えてくる事態発生!
プロメテウスは、由々しき事態である、石を並べて落とすなど対抗すべき、スチームボードに南の崖を見張って貰うなど提案する。一方、カルディアンは、石を落とす行為は三戒に反するとし、スチームボードに見張って貰うことには諒承。デイブレイクは、ウシガエルは友好的で心優しいカエルである。ウシガエルの節度ある行動で争いは回避されている。謝りソングを歌おうと主張。
2;スチームボードとの協定交渉!
スチームボードより、「協定はナパージュも一緒に戦うこと、スチームボードの敵にもナパージュも協力することの条件」が出され、元老会議などで議論。カルディアンは三戒の遵守を主張。デイブレイクは、協定は戦いをするためであり、三戒違反である。フラワーズという団体は、「戦いは嫌だ!協定を潰そう!」と行動するも、採決では、協定を結ぶことに決す。しかし、これに対してデイブレイクは、協定反対の意見を多いとして元老は失格・罷免だとし、新元老で採決し、協定破棄を決める。スチームボードは、これを受け即時にナパージュを去ってしまう。
3;南の崖にウシガエルが大挙して上陸してくる!
プロメテウスは、三戒破棄を提案。一方、カルディアンはウシガエルに退去を促すも居座る。相手に戦意が無いのだと説明とし、三戒は最高の法規だと固執。デイブレイクは、たまたま珍しくて上陸しただけ、争いは愚かであるとする。この間、南の崖で衝突発生し、ハンニバル兄弟のワルグラがウシガエルを突き落とす(?)。元老会議で、三戒違反でワルグラは死刑となる。
4;ウシガエルが南の崖一帯に住む権利を要求!
元老会議で、三戒の破棄を決定するが、デイブレイクは、カエルの集会で「悪魔が元老会議を乗っ取った」とし、進歩的カエルの集まりを催す。「語り屋」は過去の非道を語り、領土問題は冷静に!謝り続ける!無抵抗を貫く!と主張し、「物知り屋」は世界で唯一素晴らしい三戒は棄てるべきでない、「人気者マイク」は三戒守って、国が滅んでもよい。「フラワーズ」はウシガエルと一緒になって歌を歌い、友達になる、争いは最低だ等、それぞれの意見が表明された。
5;ウシガエルが南の崖から南の草むら一帯を占拠!
プロメテウスは、国を奪いに来た、立ち上がろう!とし、ハンニバルとゴヤスレイを待機させる。一方、カルディアンは無闇に事を荒立てず、冷静に!と対応し、デイブレイクは見学に来たのかもしれない、いつの日か帰る。平和を愛するはずだ。南の草むらは大切な地というわけではない。友情の草むらだ、との論を張る。
6;ウシガエルさらに奥の池に浸入!
 ハンニバルとゴヤスレイがウシガエルの前に立ちはだかり、ウシガエルを追い払う事態があり、デイブレイクは、兄弟を三戒違反、ハンニバルとゴヤスレイの目を潰して腕を切り落させる。三戒は、平和を望み争いを否定するもので、いずれウシガエルも理解するとの姿勢をとる。元老たちがウシガエルに出ていってくれるよう頼むもウシガエルは聞かない。
7;ウシガエル大挙して中央高原に浸入し、完全占拠!
 カルディアンは、ナパージュを平和な形でウシガエルに明け渡そう、長くは続かないといい、デイブレイクはウシガエルがナパージュを統治しやすいよう協力するとし、ウシガエルの為に、情報提供や密告奨励をする。
8;ナパージュの国が滅びる!
 ヌマガエルが三戒破棄のツチガエル達を検挙。デイブレイクは奴隷として生きながらえる。カルディアンは元老から地区の自治会長に左遷された。
あらすじは、概略以上のような内容である。
(所見並びに雑感)
 「カエルの楽園」の寓話の対象は、「中国の脅威」であり、百田の中国人に対する鑑識眼・鋭い洞察力で一つの中国に対する見方を提供している。日本列島の近隣に中国・韓国があり、「今の政治とマスコミの報道を続けていると、こんな結果になりかねませんよ」という一種の警告のつもりで書いたと述べている。
百田尚樹と石平の対談「カエルの楽園が地獄と化す日」(飛鳥新社出版)で石平曰く、中国共産党は、インドシナ戦争でフランスがベトナムから撤退するとすぐさま西沙諸島の東側を奪い、ベトナム戦争の末期米軍が南ベトナムから全面撤退すると翌1974年には戦争をしかけて西沙諸島全域を南ベトナムから奪い、軍事占領し、1988年には南沙諸島(スプラトリー諸島)に侵攻してベトナム軍を撃破し、占領。フィリッピンでは1992年に米軍が撤退すると、1994年にフィリッピンが実効支配していた南沙諸島のミスチーフ礁を占領し、2012年にはフィリッピンの排他的経済水域内のスカボロー礁(中沙諸島)を軍事占領して人工島を埋め立て、軍事拠点を建設している。これが中国共産党の行動様式であると。
南シナ海の領有権に関してフィリピンが中国を相手取って起こしたオランダハーグの国際司法裁判所の判決も、中国は一片の紙切れと言って相手にせずと国際常識も一顧だにせず、との姿勢を表明している。
現在中国は、日本が実効支配している尖閣諸島は中国の革新的利益であるといって尖閣をとると公言している。2010年中国漁船と巡視船の衝突以来尖閣諸島の接続水域、領海への中国船の侵犯が急増しており、今までは魚政や海警の船であったが、2016年6月軍艦が侵犯するようになって来ている。
寓話の草むらや奥の池が何を指すのか分からないが、中国の沖縄に対する姿勢も気になる。沖縄は、1609年に琉球を薩摩藩が植民地化し、1879年廃藩置県の時に琉球処分にて沖縄県設置して、清国との関係を清算した。が、2016年第二回琉球・沖縄先端問題国際学術会議が北京で開かれている。内容は沖縄の自己決定権や米軍基地問題、独立などである。主催者は中国戦略・管理研究会、北京大学歴史学部で本部は釣魚台国賓館にある。沖縄は米軍基地の問題で揺れている中、中国が沖縄に関する国際学術会議を勝手にやることに対して、日本は抗議してしかるべきと考えるが。
沖縄は、「沖縄の不都合な真実」大久保潤・篠原章著によれば、全国一の格差社会であり、一人当たりの県民所得も全国最低であり、様々な指標でワーストな数値で脆弱な社会経済構造といっている。そして、その社会は琉球大学OBのエリートを中心にした閉鎖的な支配階級がメディアなど県内権力と一体化しており、超保守社会を形成している。そして反基地運動は経済的に恵まれた県職員や外部からの力も加わって、極めて舵取りの難しい問題を秘めていると述べている。米軍追い出しの動きは中国の望むところであろう。
韓国については、崔碩栄著「韓国反日教育」、百田尚樹著「韓国に謝ろう」、崔基鎬著「日韓併合の真実」、イザベラ・バード「朝鮮紀行」等読んでみた。
中国と韓国や北朝鮮との歴史的関係は、1392年に李成桂(太祖)が李氏朝鮮を建国し、中国明王朝に臣従する、つまり属国になることを喜んで選択し自ら小中華を名乗り、それ以外は蛮夷としたこと。その蛮夷なる日本に1910年併合されるまで518年のあいだ中国に臣従し、中国的制度を取り入れてきた。
李氏朝鮮は僅かな王族と両班の支配層が生殺与奪の権力を握り、多くの人たちは支配層の搾取で無気力な社会となって、文盲率も1905年で80~90%と極めて低く、近代文明から取り残された国であった。日本は併合後、この国に対して、近代化の諸政策を行った。例えば学制の面では、小学校や専門学校・中学校・実業高校や大学など36年間で5000校近く作り、莫大な資金と人的投資としてきた。が、この国は、これを愚民化政策としてしか評価していない。身分制度も王族以外は全て平等にする身分社会などの変革を進めた。が、小中華としては蛮夷日本の進めた諸改革には抵抗があり評価していない。今でも両国の歴史認識は、事実認識から乖離している状況でないかと思う。
百田も石平も、マスコミの重大性を重ねて言及している。マスコミの論調を見て策を打ってくるのは中国の常套手段である。中国は日本の世論を動かすようあらゆる工作をしてくる。特に中国の脅威を語ろうとしない新聞社やNHKの言論空間を危惧している。
北京に記者を置くことの条件として①中国を敵視してはならない、②米国に追随して「二つの中国」を作ることに加担しない③両国関係が政情に発展するのを妨げない、の三原則があると記している。
また、NHKにはCCTV支局、朝日には人民日報の支局が入っていると、記している。   以上