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平成30年1月例会報告

日時  : 1月11日 木曜日 18;30 ~ 21;00
テーマ :中山正和氏及びHBCモデルについて
場所  : 港区商工会館
担当  : 榊原 高明

中山さんの思考、思想は多くの仏典を引用して解説されており、十分に理解するのは大変です。
そこで今回は中山さんの思考の重要な位置を占める、HBC(Human Brain Computer)モデルの解説とさせて頂きます。中でも、「刷り込み」を重点に取り上げます。
1.HBCモデルの概略
このモデルは物理学者の、マッカロとピッツの形式ニューロンモデルが原型です。このモデルは動物の神経系はコンピューターと同様に、and,or,notの三回路により情報処理している、との仮説によっています。
中山さんがこのモデルを使い、分り易く進化させたのは、脳生理学はまだ脳が完全に解明されていないことと、人間の脳の働きに従って機能を再構築することで理解し易くするためです。
【HBCモデルの構成】
情報→   計          算  ←計画
      ↓         ↑
      コ ト バ   記 憶  
      ↓         ↑
      イ メ ー ジ 記 憶  
      ↓         ↑
      刷  り  込  み   
刺激→   い    の ち  ←行動
(1)【いのち】
「いのち」には地上に生命が誕生して以来のプログラムが組み込まれている。このプログラムは、外部からの刺激に対応して、自動的に「いのち」を護る方向に行動を指令する。
虫なら火に近づいたら→逃げる。人間の場合、暑いと感じたら意識せずとも汗が出て体温を下げる。
(2)【刷り込み】
この言葉は本来的には、K・ローレンツの鳥類の研究で使われたものです。もう少し広い意味では幼児体験と呼ばれるものですが、HBCモデルでは「刺激」→「行動」の反射系でとらえて、あえて「刷り込み」としています。
鳥の場合、"一鳥前"になるまで全て「親」することを習慣として学びます。
人間の場合は三歳ごろまでに生育した環境、つまり、親や家庭の雰囲気から生きていくためのルールを脳に記憶します。これは例えば、白い紙にインクで印刷するのと同じで、一生変えることはできません。この時期にその子の潜在的な好き嫌いがインプットされます。食べ物で言えば、この時に食べたものが、オフクロの味として記憶されます。特に「お母さん」の行動の影響が大きい。
(3)【イメージ記憶】
自分の感覚器官を通して体験した記憶。
五感から得た情報なのでこれを「真実のデータ」と言う。
直観とは、刺激→【いのち】→【イメージ記憶】→【いのち】→行動 です。コトバを持たないトリ・ケモノは直感と直観だけで生きています。
【いのち】は必要に応じてこの【イメージ記憶】の中を探し、役立つ経験のイメージ記憶から【いのち】の方に行動の仕方を指令する。ここではまだ言葉は関与していない。
(4)【コトバ記憶】
もののイメージとコトバを結び付けて記憶します。この脳は九歳ごろに完成します。
幼児は欲しいものを「ン」「ン」と指さし、母親はこれは「マンマ」と教える。この時、「マンマ」というイメージと「マンマ」という「コトバ」がつながる。
イメージに直結したコトバを言語学では「パロール」と言う。【イメージ記憶】と【コトバ記憶】のつながりを→の細線で現わしている。
この年令くらいまでに憶えたコトバは母国語になる。いくつかのコトバをこの時期に憶えれば、それらのコトバはすべて母国語となる。語学は少年期にマスターすべしは,、実験的にも確かめられている。
(5)【計算の(脳)】
コトバによる「情報」を受けとって、【コトバ記憶】のコトバによって「あれこれ考え」、その結果をもとにして行動の「計画」を決めることが出来る。
理屈を言うのは原因と結果を論理的に結合すること、これはコトバを使って「計算」する能力で、この脳は20歳くらいに完成すると言われている。
2.具体例について
(1)立派な仕事をした人=「有能な一人」とする
この人たちはみな「好きなこと」しかやっていない。
アインシュタイン、エジソン、――。誰かに「やれ」と言われてやったのではない。
ゴッホは郵便配達人に「看板絵を描いたらもっと生活が楽になるだろう」といわれた時、こう答えた。「私は好きな絵を描いていて幸福なのだ。この上、何を求めることがあろうか」。
「有能な一人」は自分の問題を自分で設定する。自発的だ。つまり、それに興味があり「好き」ということ。         
「興味」の根源は「刷り込み」にある。もっと根源的には「いのち」にある。「いのち」を保つための餌をさがす行動が「探求心」の原型。
「気づき」-「創造の瞬間」について
問題が解けないと本人は苦しい。これは「いのち」の方へ「イメージ記憶」から「不快なイメージ」が送られる。「いのち」はこの「不快なイメージ」から逃れたい。「いのち」は自動的に「イメージ記憶」の中から、問題解決に役立つ過去に記憶はないか「探求」始める。「いのち」に役立つ記憶イメージを「直観」できたら、「コトバ記憶」に手渡され、イメージはコトバによって評価(計算)され、真に役立つ「仮説」が得られる。これが「気づき」、「インスピレーシ」などと呼ばれる。このあと真実であるか否か「実証=実験」して真実であれば完成となる。
真の科学者の問題解決とは-
第一は、彼は「真実のデータ」しか取扱わない。
真実のデータとは①自分がこの目で見、この手で触れたもの。②「法則」:過去の人々が確かめ、ほんと油であると証明されたもの。
第2は、この真実のデータを分析して仮説を得る。但し、これには「気づき」が必要。
大成果を挙げた「有能な一人」はみなこのやり方によっている。失敗する人はこの手順を踏んでいない。
(2)「刷り込み」-親の立場
この話になるとよく、「自分は子供の教育を誤った」という。しかし「刷り込み」はその子供の回りの「雰囲気」によるもので、親が意識して刷り込めるものではない。出来るのはせいぜいTVの俗悪番組を断固として見せないことぐらい。もう一つは、家庭内で大人同士がケンカしないこと。この時期の子供は何でもそのまま取り入れてしまい、ケンカは良いことと刷り込まれてしまう。
親が勉強嫌いなのに子供に勉強好きを刷り込もうとしてもそれは無理。
子どもが親の職業を引継ぎやすいのは、その子供の回りの雰囲気の影響が強い。
これは潜在的に「好き」と刷り込まれたもので、学者の子は学者に、商人の子は商人になる傾向が高い。職業を選ぶときはこの「好き」を十分考慮することが重要。
極端な言い方をすれば親の「刷り込み」が子供に「擦り込」まれるということである。問題は親も潜在意識下にある「刷り込み」は意識できないことである。この「刷り込み」に気づく手法に「内観法」があり、自分の過去を順に思い出すことで潜在意識下を意識できると言われる。
(3)日本人的/西洋人的 好き嫌い
・西洋人:1.「ウソ」を言わない→「嫌い」
    2.「ディベートの精神」→「好き」
1.について-神様(-神教)はなんでもお身透し。
ウソを言うとイザというとき助けてくれない。
欧米の議会でウソ証言をするとドキドキするので、ウソ発見器で分ってしまう。
対する日本人はこの擦り込みがないので「神に誓わせて」もビクともしない。従ってウソ発見器にかからない。
1.について-人間だからケンカするのは当たり前。自分の思うことを言って、相手の云うことも聞く。そこで決まらなかったら第三者が決める。(基本的に)
潜在意識でディベートが「好き」という社会では法律が優先し、ルールを守ることが「善」で破ることが「悪」であり、白か黒しかない。
・日本人:生きとし生けるものは生きる権利があるのだから、その「いのち」を大事にするのは当たり前。
「ケンカ」するのも相手の「いのち」を多少なりとも傷つけることだからいけない。
実例:ダッカ・ハイジャック事件
日本政府は「超法規的処置」と称して、多額の金を払った。乗客の「いのち」を最優先した。
これに対して、ヨーロッパやアメリカの新聞でこっぴどくたたかれた。「日本人は善悪の判断さえできないのか!!」彼らにとっては、「法を守る」ことが禅の基準。そのためには、やむをえなければ、いのちも捨てるのが当たり前。
この時、日本の新聞は黙して語らず、何故、「われわれはいのちを守ることを以って善とするのだ」と言わなかったのか。日本人はこの自分の潜在意識に気が付いていないのだろう。
良い悪いの問題ではない。日本人には日本人のやり方があっていい。ヨーロッパ、アメリカのやり方とは違うのが当たり前である。
(4)日本人はブームに乗り易く、流行に流され、権威に弱いといわれる。
古いところでは「紅茶キノコ」、相当のインテリも夢中になった。脳トレでは「右脳ブーム」などあったが、今は誰も口のしない。
この理由の一つに教育がある。正解が一つあり、これに〇をつけないと不正解。「事実」を教えられ、これが正解と違うとどう判断していいかわからなくなる。時には教えられたことをタテに事実を無視することもある。
日本人はこのことに気づかねばならない。
3.「莫妄想(まくもうそう)」
禅修業の一つに莫妄想:「妄想するなかれ」がある。
これは自分のコトバによって不快なイメージを自分で作り出し、【イメージ記憶】→【いのち】へこのイメ-ジを送るため【いのち】の働きが阻害される。
済んでしまったことをクヨクヨ考えない。不快なイメージがあったら.そこで切る。他のことを考える。その不快なイメージを深追いしない。これが直感を良くして、運を引きつけ、元気で長生きする秘訣。
                      以上

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