平成29年12月例会報告
日時 : 12月14日 木曜日 18;30 ~ 21;00
テーマ :「森 正弘」氏について第2回
場所 : 港区商工会館
参加費 : 1000円
担当 : 自由討論
榊原氏が10月の例会で、森 政弘氏の考えをその著書「矛盾を活かす超発想」から引用され、お話しされたことで森 政弘氏への関心が高まり、そのお考えを掘り下げることになった。
森 政弘氏について、
現在の科学の最先端の分野であるロボット研究において我が国の第一人者でありながら、仏教者として心の問題を取り上げておられることに興味を持った。
11月例会では、森 政弘氏の以下の著書を読んでの要約が報告された。
1.古川彰久氏は、『「退歩を学べ」ロボット博士の仏教的省察』
2.石田金次郎氏は、「親子のための仏教入門・・・我慢が楽しくなる技術・・・」
更に森 正弘氏のお考えを掘り下げるべく12月例会にも意見交換を行うことになった。
まず、古川彰久より、森 正弘氏がロボットと人間の意識との関わりをどのように受け止めているのかを知りたくて「ロボット考学と人間-未来のためのロボット工学-」を読んでみましたとし、以下のような報告があった。
要旨
序章 「ロボット考学」とは何か
「ロボット工学」のほうはあくまでも工学、つまりロボットを設計したり作ったりするための技術に関する、物理的な学問だが、「ロボット考学」は、ロボットについての技術という範囲だけに留まらずに、幅をうんと広げて、人間存在とは何かということにも密接に関連しながら、ロボットに関係した心理的な論議や哲学的考察までをも射程に含めたものである。
「人間から学んでロボットを作る」のだが、これには限界があり、「ロボットから人間を学ぶ」という姿勢が肝要であり、更には「ロボットに人間が育てられる」という状況を作り出すのである。
第1章 自然と人間から学ぶ、ロボット工学-ロボットの設計思想-
「カニから学んだ骨の形」:自然の見事さ、不思議さ
「右と左」:自然は底知れず神秘である
「ロボットに演奏させる意味」:プロセスも結果もともに大切
「指の機能」:機能の多様性-創造主の偉大な設計理念
「寸法体系とロボット」:介護・家事ロボットとモジュール
「すき間のない機械」:動物の身体では、諸器官がびっしりとすき間なく詰まり、すべてが生理的な役割と機能を担っている
「周辺視野と中心視野―あいまいな全体把握の大切さ」:人間は無意識のうちに、常に全体の中での位置づけを行いながら生きており、さもなければ五里霧中、暗中模索のきわめて不安な状態の陥ってしまう
主客の対立を超え統一体を形成する
第2章 ロボットから考える、人間というもの―ロボットの哲学-
「ロボットに対する人間の認識-ロボットは第三の特別なものか」
「ロボットと顔」
「意識とロボット」
「ロボットと自己」
「ロボットと煩悩」
「ロボットと所有」
第3章 ロボットの世界-ロボット独自の発展を考察する-
「時間・空間・第三の間」
「ロボットと時間観念」
第4章 設計への警告―幸せとは何か―
「自動化して良いことと悪いこと」
「賢明な自動化と愚かな自動化」
「人間型ロボットの人間以上の効果」
「ロボット工学と退歩」
「貪欲と足るを知る心」
「不気味の谷現象発見」
「目的とプロセス」
「今日の技術の問題点」
「複雑化への警告」
第5章 ロボコンに学ぶ―「技道」の哲学―
「ロボコンと技道」
「金剛経とロボコン」
「ロボットから習う-向こうから来るのがよい-
「第25回目を迎える高専ロボコン」
「ロボコンを超えたロボコン」
「ロボコンと評価」
第6章 ロボット工学者へ―創造的な研究のために-
「『ロボットは総合』の意味」
「古人の跡を求めないロボット」
「形相工学とロボット」
「ロボットと個性」
「指が示す宇宙の重層構造」
「個と全体・中枢と無中枢」
「性格の先天性と後天性」
「技術をまねる条件」
「『なる』と『する』」
以上、「ロボット考学と人間-未来のためのロボット工学-」の要旨を書き出したが、この本は森 正弘氏がこれまで実践されてきたことをまとめられたものと言える。
これまでの私たちの意見交換の中で、大きな課題の一つはロボット科学者の森 正弘氏がどうしてこれだけ仏教に傾倒されたのかということであった。
この点に関しては、この本の序章の最初にあるように、
「ロボット工学」のほうはあくまでも工学、つまりロボットを設計したり作ったりするための技術に関する、物理的な学問だが、「ロボット考学」は、ロボットについての技術という範囲だけに留まらずに、幅をうんと広げて、人間存在とは何かということにも密接に関連しながら、ロボットに関係した心理的な論議や哲学的考察までをも射程に含めたものである。
とのことである。
この様に森 正弘氏がロボットの研究を深めていくとロボットの元になっている人間とは何かという哲学的な考察が必要になり、それに対して仏教が有する哲学的な視点が役に立つということのようです。
榊原氏から科学者と仏教哲学ということでは、中山正和氏という先達がおられるということで1月例会にて榊原氏から中山正和氏についてお話をいただくことといたしました。