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平成30年7月例会報告

日時  : 7月12日 木曜日 18;30 ~ 21;00
テーマ :城野宏著「中国の発想」とマイケル・ビルズベリー著「CHINA49」を読む
場所  : 港区商工会館
参加費 : 1000円
担当  : 石田 金次郎

中国についての2つの著書を読んで、纏めてみたものを説明・議論した。
(説明した要点)
一つは、城野宏著「中国の発想」(昭和43年初版発行)であり、もう一つはマイケル・ピルズベリー著「CHINA49」(2015年初版発行)の2冊である。
時間軸でみると、城野宏は昭和39年に26年ぶりに帰国して記した1938年頃から1964年の間の中国体験記であり、1937年の盧溝橋事件で、日中戦争が始まった頃からの苛烈な体験を通しての中国観が綴られている。
一方、マイケル・ピルズベリーは、本書執筆に50年を要したと述べており、1965年から2015年の間、CIAなどに在籍し、米国の対中政策を助言・勧告をしてきた中国観である。中国は民主化が進み米国の良き同盟者に成るに違いないと信じ、多大の支援をしてきたが、中国は密かに建国100周年の2049年までには、米国を抜き世界覇権を握るというマラソン戦略を進めてきていた。中国の国家戦略を見抜くことができず、騙され続けてきたとの告白記である。今や、米国の競争力を強めることが大切だと述べている。
この2冊は、視点は違うが略80年間の一つの中国観である。日本においては、2つの中国観がある。一つは、波乱興亡を繰り返してきた中国社会は東洋的極地を表現した文化の国、もう一つは、清朝政権のもろさを露呈したアヘン戦争以降の中国蔑視、また西洋諸国のいうアジア的停滞の国という視点である。
城野宏によれば、当時の中国山西省の農村の姿は、4%の地主と5%の富農で70%の土地、20%の中農が24%の土地を所有する、従って70%の貧農が6%の土地しか持てず、収穫の70%が小作料であった。
赤軍(八路軍、人民解放軍と変化)は、1930年代貧農・雇農と連絡し、地主を調べ地主の土地を貧農・雇農に分配して自作農とし、罪科のある地主は処刑し、蒋介石と通じていない資本家、小商人は保護し、自らの勢力に取り込み最後は全国で8割が協力するまでになった。
人民解放軍は、兵士の教育を重視し、人民の為に尽くすという目的のため、独立して自主的に判断し行動できる人間形成を教育の中心に据え、兵士間、部隊での討論、全師団での大会などで精神的基礎を固め、具体的戦闘任務を与えて戦った。
戦闘に当たっては、部隊は農村に置き、民衆は解放軍の情報機関の機能を果たし、当たり前の戦略・戦術「優秀な勢力を集中、各個撃破で敵を殲滅」でアメリカに支援された国民党軍を撃破して、1949年中華人民共和国設立した。
中華人民共和国設立のあと、党内にいろいろな考え方があり、党の正しい路線の執行の為、毛沢東の考え方を中心に据えて、党の整風をすすめ、3反、5反と紅衛兵など文化大革命に進んだ。
城野宏は斯様な時代の推移の中で、中国人は、事実の中に正しいものを求め、ひとりの目で見た事実は一つの事実に過ぎず、多くの人の目と多くの角度から観察されればされるほど、全面的な事実に近づくと考えており、「人間は必ず過ちを犯すというものだ、潔く過ちを認めることが評価されるのだ」という現実的に対処する姿勢を持っている。そして、「戦国策」にあるような戦略的思考の特質、独自性の歴史がある。
そして、中国人も独立の意志と行動をもつ人間である、という出発点を踏み外さなければ、常に客観的に正確は判断が得られるはずである。古くさいアジア人観、アジア人軽視の土台から問題を眺め、ヨーロッパ的形式に材料を当てはめるあいだは、中国の国際情勢に対する分析と判断、その決心と行動も測定できない。日本と世界に影響力を持つ重大問題の解決は不可能である、と断じている。
マイケル・ピルズベリー著は、中ソ対立から始まっており、1969年新疆国境で大規模な軍事衝突あり、同年、中国政府からニクソンとキッシンジャー宛に内密のメッセージがあったところから始まっている。
1971年キッシンジャーの歴史的秘密訪中、1972年のニクソン訪中があり、毛沢東はニクソンに対し、支援と保護を渇望する嘆願者を演出し、米国から数々のプレゼント・支援を得る。その後、鄧小平は技術が第一の生産力だと考え、米国の技術を拝借したい旨申し出、これを受けてカーター大統領は中国に最高レベルの科学者の代表団の派遣、科学技術交流の協定、科学界の要人の派遣、多くの科学分野の留学生の受け入れなど、また、レーガン大統領時代には、先進的軍事技術を中国への売却許可、米中の軍事協力、米中協力の作戦や武器輸出など、米中の密接な関係強化を図ってきた。
1980年代初期、米国の生活様式や文化は中国を破壊する「精神汚染」とした中国の過激民族派タカ派の思想集団が存在していたが、少数派と説明されていた。が、天安門事件を境に、中国共産党の指導者が国民に描いてみせる米国のイメージは大きく変わり、米国政府は悪魔のような存在と思わせる組織的活動を始めた。中国の教科書の米国に関する記述はそのように書き直され、中国国家博物館の常設展示の内容もそれに沿ったものになった。
経済面での動きとしては、WTO加盟問題と世界銀行の動きがある。
2001年、中国は国営企業の商業的決定に関与してはならないという条件を受け入れてWTOに加盟した。これに先立ち、アメリカ議会は、中国は自由主義経済に向かっており、国有企業が減り、国は通貨を操作せず、多額の貿易黒字を蓄積せず、米国の革新と知的財産権は尊重するという中国からのメッセージを前提に、対中通商関係正常化法案を通過させた。が、この中国の契約は守られていない。
世界銀行については、1983年に世界銀行総裁A・W・クラウセンが鄧小平にアメリカに追いつくための助言をし、1984年に世界銀行チームがいくつかのアドバイスをしている。そして、中国チームと世界銀行のエコノミストは、詳細にわたる研究ののち、民営化と政治改革を進めないことを決めた.経済成長を支える安定した道は、社会主義的経済政策と中国共産党による政治の独占を維持することだと判断した。(1993年世界銀行機密文書)
民間企業を重視する世界銀行と国際通貨基金だが、中国政府の利益を守るには国有企業が必要であるとの中国政府の主張を認めた。巨額の資本を投入し、ナショナルチャンピオンの国有企業は外国技術の導入と原料の確保など後押しされ欧米の企業に対する大きな競争力が与えられた。以上が説明骨子。
(所感)
世界銀行の性格、公的性、手続き等で疑問が呈された。が、G20等でも中国の助成金は問題になっている状況にあるし、TPPでも国有企業の扱いについて、国有企業と民間企業との間の対等な競争条件の確保のための国有企業の規律について定めてきている等など。次回ももう少し議論しようということになった。
資料;中国の発想 城野宏著 26年の中国生活
   CHINA49  マイケル・ピルズベリー著 50年越しの著作

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