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平成30年6月例会報告

日時  : 6月14日 木曜日 18;30 ~ 21;00
テーマ :城野先生の小冊子「なぜ脳力開発なのか」の再考察、第5回から第6回
場所  : 港区商工会館
参加費 : 1000円
担当  : 榊原 高明

5月の例会では時間切れで、戦略と戦術の区分がつけられれば、脳力は大幅にアップすることの実例として、保険セールスで大成功した牛井渕(ごいぶち)アイコさんを紹介できませんでしたので、今回冒頭で紹介致しました。
1. 五井渕アイコさんの実績
(詳細は「転機の行動学」参照)
・1937年生まれ
・1968年 安田生命大阪支社入社
・1970年 東京転勤(夫の事情)
・1970年頃 情勢判断学会入会(推測)
・1970年 3.5億円契約
・1978年7月 月間契約額24.1億円(世界記録)
・1980年7月 月間契約額41億円(世界記録)
・1985年11月 月間契約額54億円(世界記録)
    同年TOT(Top of the Table)メンバー入会
(1)牛井渕さんについて-城野さん評
彼女は脳力開発の指針通りに思考し、口、手、足をコツコツ動かし行動した。まず相手を選び攻撃との戦略決定をし、戦場を決めて、詳細な作戦行動の計画を作成、これらを一つ一つ実行した。まるで軍司令官が戦争を指揮するのと同じである。
これについて城野さんが彼女に「君は、まるでオレが戦をやってきたと同じことをやってるな」と言うと、彼女曰く、「だって、先生の言った通りのことを自分の仕事でやってみた。同じなのは当たり前では」とのこと。
(2)牛井渕さんのピラミッド・セールス方式とは
企業や団体に法人代理店を引き受けてもらい、代理店はビジネスとして紹介業務と集金業務を担当する。実際の募集活動は彼女が行ない、契約が取れれば代理店へ手数料を支払う。企業や団体の上層部を味方につけているので、紹介や情報入手する点で全面的なバックアップが得られる。大きな企業グループになれば、子会社や、下請け企業、また関連業者なども含まれ、その規模は数千人単位となる。
(3)なぜピラミッドセールスを考えたのか
1)彼女にとっての確定的事実
・保険についての知識、経験不足
・コネや人脈が少ない
・口下手で内気、人見知りの性格
・初契約を取るまでに約2年かかってしまった。今のやり方では大きな契約額を獲得することが期待出来ない。
2)彼女の結論
他の人と違った自分に合ったセールス方法を考えねばならなかった。
3)彼女の立てた戦略と戦術(実際は苦し紛れに)
戦略:企業や団体のトップへ直接セールス
   ここに法人代理店を引き受けてもらう
戦術:相手先の情報を事前にできるだけ収集、
分析して攻略方法を立てる。
アプローチ先を分析し、相手先に合ったきめ細かい保険設計を練り提案
4)実績
大阪の鉄鋼会社のトップへ直接セールスを行って成功。1年間で42件、3.5億円の契約獲得。
5)三大マーケットの選定
それまで14社の法人代理店開拓に成功しており順調であったが、昭和48年の第一次オイルショックで契約高が急減。ノイローゼ寸前まで追い込まれる。
・分析と結論
法人代理店を引き受けてくれた企業がすべて輸出産業であったため、石油ショックをまともに受けて保険どころではなくなっていた。
開拓すべきマーケットを、生活に密着した、"医、食、住"の三大マーケットへと設定し直した。
6)実績
首都圏に135店の食品スーパーチェーンを有するM商事の陰の実力者である専務への攻略に成功。3ヶ月足らずで7億円の契約。M商事本社、135店のチェーン店、その取引先などが形作る大きなピラミッド型地盤を確立。これをきっかけに、医、住のマーケット開拓にも成功し、世界記録となる月間契約高24億円とか41億円へとつながっていった。
7)牛井渕さんと脳力開発
 彼女のピラミッドセールスは、初契約に2年もかかり自身も言う"落ちこぼれ生保のおばちゃん"であった。自分のハンディをカバーするセールス方法を探るところから始まり、彼女はこのために、企業保険の分野で行われていたセールス法に着目してそれを普通保険の分野へ適用し、それを追求し続けることでピラミッドセールス方式を確立していった。彼女が普通の主婦と多少異なる点は、会計事務所に務めていた時に、企業を見る目を養い、また小さな企業で銀行屋さんも一目置く"やり手経理課長"を務めた経歴であろう。専業主婦であったわけではない。彼女の著書の中に、城野さん、情勢判断学や脳力開発について4文字を除いて全く出てこない。しかし、著書の文中ではいたる個所に「戦略」「戦術」の文言が多用されている。やはり彼女が城野さんの思考法を十分に習得して、確実に使いこなしたのだと思われます。正に、「戦略」と「戦術」をしっかり区別して使えていたからこそ、月間契約高で世界記録を三度も更新し得たのであろうと推測します。
脳力開発、中でも戦略と戦術を真に理解し実践した時の有効性の好例でありましょう。

第5回「欠点をとりたてるより優点をのばせ」
この項の結論:「人間関係は優点指摘でつくるべきで、欠点指摘でやってはいけない」
積極的な仲間同志でお互いの研鑽のために、「いろいろ欠点があったら指摘し合おう」、「悪い点があったら遠慮なく言ってくれ」といったことが言われるようである。しかし、これは結局は仲が悪くなり、目論んだように前進的な協力関係になって行くのは難しい。
「欠点を指摘し合ってお互いに磨き合う」を大々的にやってきたのは共産党である。その結果は、ひどい権力争いが起こり、「反党」の名目で指導者たちが逮捕されたり、殺されたりするという事態が起きた。
あまりにひどかったため、毛沢東が「批判は政治的な方針だけに止めよ」と指示を出した程。このクセは今も直っていないようである。
これは、欠点指摘を活動の根本とした悪果。
1. 欠点とは
指摘された"欠点"だけを切り離して、孤立的に処理することは不可能である。
欠点とされた当人の脳回路の中には、他の無数の事柄とのつながりで組み込まれている。従ってそうしなければならぬ理由も無数にある。その「欠点」をなくしたり変化させるためには、その無数のつながりのある事柄もみな変えてゆかねばならぬ。
人は歴史と経験、つまり脳回路中のインプットがそれぞれ違うから、他人の通りに動くことはできない。
「欠点」を指摘する者と、される者とでは戦略が違う場合が多い。これを考慮せずに「欠点」を言いだすと、これは「戦術手段」をとりあげたことになる。戦術に善悪の区分はない。
指摘するなら戦略が間違っていると言わねばならない。それを当人が自覚してくれればよいことである。
人は脳の指令としての口と手と足の動かし方はそれぞれ違う。他人の自分と違うところを欠点としてあげてゆけば、欠点の種は無数にあるだろう。だから「欠点指摘」は止まることのない争いに発展するのも当然である。
2. 優点について
真の協力関係は、優点指摘から生まれる。
優点は常に「足らない」ということを本則とする。もし、「優点」を自画自賛して満足しているなら戦略的には現状維持であり、そこから発展は生まれてこない。優点は常に小さく、足らないから、それが大きく発展してゆくことに人間は喜びを感じ、生き甲斐を見い出す。
優点と企業活動:
お互いの優点の小さな芽を発見し合い、大切にこれを伸ばし育ててゆくという人間関係を作って行けば、人間の力を十分に発揮させる組織体系ができ、楽しい協力関係が発展する。これで企業実績が上がらなければ嘘である。
技術開発について:
これも優点の発見と、大事にこれを育てて伸ばしてゆくようにすれば、どしどし発展する。
たいていは新しく出た技術プランに対して、欠点指摘から始めてしまう。
ここがダメ、あそこがダメ、これを直すと、今度はまだこの辺がダメと指摘。この繰り返しで、担当者がやる気をなくしたり、移動してこのプランは中止になってしまう。
今までになかった技術だから、発見になり特許も取れる。新しいからこそ、その優点は小さく弱いのであり、欠点が大部分のはず。90%以上を欠点が占めているとすれば、目をつぶっていても欠点はわけなく指摘できる。

第6回 「現状維持と現状打破」
 戦略や戦術ということばはすぐ覚えて、口でしゃべれる。しかし、実際問題にあてはめ、両者を区別し、実践できるようになるには、相当の実践訓練が必要である。その区分ができないと、いつまでも、戦術を戦略とまちがえて、無用な「討論」で時間をつぶしてしまうことになる。
 人間行動の戦略的区別は、現状打破か現状維持の二つしかない。人の脳はどちらかに立って初めて戦術的指令を出せる。
【戦略的動揺】
 その時々で戦略的立場の指令が変化すれば、現場は混乱する。部下は戦略の中心がつかめず、目先の場当たり的行動に終始し、仕事はうまく行かない。従って組織体としての強力な活動は不可能となる。(最近の東芝や他の大企業の不祥事を言っているようだ)
【ワンマン社長の特徴、思考と行動】
1) 口では現状打破、変革だといっているが、実際行動は部下の革新的意見に耳を貸さないなど、現状維持である。
2) 他人の話にすぐ割って入り、自分の意見ばかり振り回し、自分の意見を人に聞かせようとする。
3) 社員の戦術的活動にまで一つ一つ指図して、自分はいつも忙しい忙しいと言っている。自分の意見を押し付け、反対意見は吸収しない。
4) おれがこれほど変革を叫んでも、社員は一向に応じてこない。人材がおらん、ダメだ。信用できる人間がおらんと腹を立てて、ますます戦術の細部にまで指図してくる。
城野さんはこれはかなり見られるケースであり、社業の発展はないと請け合っている。
榊原のいた半導体装置の会社の社長は、まったくすべて上記が当てはまり、結局、格下の企業に買収されました。
ワンマン社長の戦略が現状維持だというのは、他人や外部の情報を取り入れずに、自分の過去のインプットだけで思考しているので、新しいコンビネーションを作って、新しい創造を生もうとしないからである。つまり、今まで通りにしかやらんと言っているに等しい。
【ワンマン社長の罪】
 このような社長の下では、戦術実行者たる社員は、自分の行為が社長の発言に合致していると見られるかを行動判断の中心に据えてくる。その日がうまく過ぎていく調子合せとなってゆく。これでは社業の発展は難しい。
【他人頼りの姿勢】
 昔、「歴史の涙」というテレビ映画があった。終戦時の陸軍将校が行なったクーデターを扱っていた。一言でいえば、彼らの行動は"他人頼り"の行動であり、成功するはずがない。
クーデターは現状を変革するのが目的であるから、現状維持派を打倒しなければ成立しない。現状変革を目的にしながら、彼らの行動は現状維持派(近衛師団長や東部軍司令官)に変革を依頼している。戦術だけは現状変革のような恰好を取ろうとしても、行動は前後一貫せず、敗れ去るより外ない。他人頼りとは現状維持戦略である。
                    以上

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