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令和3年4月例会報告

令和3年4月例会報告

日時  : 4月8日 木曜日 18;00 ~ 20;00

テーマ :城野先生の「情況判断の行動学」の第三章より 続き


場所  : 港区立商工会館

演者  : 石田 金次郎

コロナで時間短縮の例会である。
第三章の「立場の検査」の「外国の立場で論じるエコノミスト」の項では、「石油代金の支払い増を輸出の増で補なった。その結果、輸出比率が増え、欧米から日本に対して苦情が出てきた」ことに対し、「輸出主導型経済を内需主導型経済に改めよ」や「エコノミックアニマル論」や働き過ぎ論が言われ、高度成長にストップをかけるような論調が繁盛した。しかし、輸出比率は9.6%が10.3%になっただけの話しである。これらの論調は、外国情報の引き写しであり、外国の立場を代表した論であり、その論の立場の検査が必要だったのである。
その影響が現れて、日本はゼロ成長、低成長に陥り、今度は安定成長論が唱えられた。が、日本は実際、「不況脱出」までいわれる様になった。
学問や理論というものは普遍性のある原理のような印象を与えるが、それらは、その国や人の立場の表現なのだ。その論を唱える人の立場の検証が必要であると戒めている。
実際、その後の日本経済は、失われた20年、30年ともいわれ、GDPは殆ど横ばいで苦しんでいる。
家電、液晶、半導体などはそれなりに優秀なのだが、最終製品での市場では世界競争に敗れ、価格決定権のない下請けになってしまっている。
GDPは微増に留まり、2019年度のOECD発表の平均賃金では日本は38,617ドル、韓国は42,285ドル、米国は65,836ドルといった状況になっている。労働生産性も低い。経済のグローバル化やボーダレス化での対応に失敗したということになろう。
城野さんなら、世界経済の変化の中で立場の検査を怠ったと、日本の舵取りをしてきた政治家・官僚・経済学者などは厳しく指弾されるのでないか。
ここ数年、地球温暖化が進み、気候変動への対応がパリ協定を梃子に西欧を中心に急速に進んでいる。EUは日本の自動車産業を狙ってか、カーボンニュートラルを標榜し、2030年のクリーン電力が60%で作った自動車でなければ、自動車を売らせないと言っているらしい。自工会代表のトヨタ社長は危機をつのらせている。もはや日本は、先進国、超大国などという意識は改め、日本経済の屋台骨である自動車産業の立場を検証し、褌の締め直しが喫緊の問題になってきている。これも情報を出した側の立場と情報を受ける側の立場を検証する必要がある。
「自由の持つ意味」では、「自由」はそれぞれの時代、それぞれの人たちの立場を表現してきた。フランス革命の「自由・平等・博愛」の自由は18世紀の新興ブルジョワジーの自由であった。アメリカの自由はアメリカの国益を守るもの、日本の自由は日本の国益を守るもの。ぶつかり合いながら、その立場を検査して、その中から真実を探し出すことが必要である、と述べている。
 昨年から世界を巻き込んでいる疫病の新型コロナの対応について、各国の自由への対処の仕方は様々である。これまでのところ、一党独裁・専制国家の中国が、監視テクノロジー、監視カメラや個人情報を全て国がコントロールし、自由民主の国々に比べ新型コロナを押さえ込めている?様にみえる。しかし、言論の自由や信教の自由など新疆ウイグル問題を見るに、欠陥のある市民社会といえる。法より共産党が優先する国のあり方は、自由の持つ意味が我々とは大いに異なる。従って、中国から発される情報は、その人々の立場の意見として聞き置くことが特に重要である。

「立場の分析」では、立場がはっきりすれば、問題の衝突点の本当の姿が分かる。立場の分析はその性質の違いを認識させ、対処する方法を正しく選ぶことが出来るようになるという原則論は正しい。
が、実際の世界での様々な対立や紛争は絶えないし、立場の分析が無用な行動をある程度抑制する効果は理解できるものの、納得できるものにはならない。「和して同ぜず」であろう。
気候変動問題だけは米中が協力できる分野であると言われているが、欧米がカーボンニュートラルは2050年という目標にしているのに対し中国は2060年としている。この10年の差は、米中の覇権争いの中では、決定的な要因になるのでないか。中国は和して同ぜずだろう。

第三章では、情報を出した側の立場と情報を入手した側の立場とを検査すること、そして事実は冷厳で何も変化しない、そして見る側の位置によって情報内容が違ってくるし、認識の対立が起こる。その立場が戦略の方向を示しているのだ。それを様々な例で見てきた。

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