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平成23年2月例会 報告

日時  : 2月9日  水曜日
      18:30 ~ 20:30
場所  : 港区立商工会館
テーマ : 「カウンセリングについて」
担当  : 今井 裕幸

 人材紹介を本業としているのに、カウンセリングの勉強をちゃんとした形で行ったことが無かった為、昨年、産業カウンセラーの勉強を行った。今回のテーマは、カウンセリングの学習を通じて得た知識に、これまで学んできた、天風哲学についても考えてみたい。

カウンセリングの基本は、「傾聴」という技法が基本となります。「傾聴」とは、積極的に相手の話を聴くということで、「受容」、「共感」、「自己一致」という基本的態度を前提条件とします。
「受容」とは、相手がどうであっても、たとえその人の考え方や行動が容認できなくても、選択したり、評価することなく、全てをそのまま受け入れるということです。
 「共感」とは、相手の見方、感じ方、考え方を、その人の身になり立場になって、見たり、感じたり、考えたりすることです。クライアントの私的な世界を、あたかも自分自身のものであるかのように感じとるということです。ただ、本人と同じ様に感じ取りながらも、カウンセラーは決して怒りや混乱などに巻き込まれず、平静で客観的でなくてはならないということです。
 「自己一致」とは、カウンセラー自身が、心に感じた事と言動にずれがないこと、ありのままの自分として、誠実で正直でいられることです。
 これらのことは、理屈では理解が出来ても、実際にやるとなるとなかなか出来る事ではありません。それを実際に行う為に、実技のトレーニングを行って繰り返し練習するわけです。カウンセリングの第一段階として、まずは「傾聴」が出来るようになることが必須条件となります。

 相手の話の中で、事柄への応答、感情への応答、意味への応答を拾ってゆきます。特に、感情の表現を拾うことが重要となります。「つらい」とか「不安だ」とか、感情を表す言葉がクライアントから出た場合、特に注意して拾ってゆくことがもとめられます。それをそのままの表現でもって、相手に伝え返す。あたかも、鏡になったかのように、キーワードを拾ってクライアントに伝え返すことを行います。
クライアントは自分の話を聞いてくれて、受容してくれたという共感で、次の一歩を踏み出すことが出来ます。カウンセラーが鏡のように傾聴したことを伝え返すことにより、自分の言っていることを客観的にとらえることが出来るようになり、自分の気持ちや考えを正確に伝えようとする。自分に対する洞察がすすみ、今まで気付かなかった新しい自分と出会えるようになる、ということです。自己理解が進んでいくと、周囲に対する新しい見方が出来、色々な事象や他人を受け入れられるようになります。自己受容が進むにつれて、自分の経験を素直に見つめ、自己防衛的態度を捨てるようになる。そして、自分の解決すべき問題をとらえ、その結果行動変容への展開が図れるようになります。

 この、問題解決の方法は、クライアント自身の中にあるという考え方が、「来談者中心療法」というもので、カール・ロジャーズが提唱したものとして、産業カウンセラー協会を中心としたカウンセリングで、今日の日本でもベーシックな理論として基本にあります。「産業カウンセラー」という資格は、社団法人産業カウンセラー協会の認定資格で、この理論を基本においているものです。

 カウンセリングの技法的な面から考えると、「精神分析的カウンセリング」や「交流分析」「論理情動療法」「認知行動療法」「家族療法」など色々な療法があり、それぞれに研究会が作られたり、認定資格をつくったりしています。
 「交流分析」とは、個々のパーソナリティを自我状態が呈する様々な現象に基づいて分析する方法で、相手との交流パターンを分析して、脚本分析を通して自らの人生計画を主体的にコントロールすることが出来ます。
 「論理情動療法」は、人生の悩みは、非合理的な根拠の無い信念(イラショナル・ビリーフ)によって起こるので、その非合理的な信念を取り除くことによって解決してゆこうという療法です。実行出来る具体的な目標を設定して、行動変容を起こさせることが大切です。
 「認知行動療法」は「認知が感情や行動を規定する」という考え方に基づいて、思考・推論・信念・価値観・期待・評価などを変容させて、不快感情の低減や不適応行動の改善を図ろうとする心理療法のことである。

 「家族療法」はクライアントの家族全体を視野に入れて行うカウンセリングで、相談された問題や症状を家族全体の問題としてとらえ、家族のメンバーの関係に介入してその関係が変化するように援助します。症状を出した人を、単に本人の困った問題として取り扱うのではなく、家族全体のシステムとしてとらえることが大切で、症状を出した人がよりよく機能できるようになるための契機として肯定的に考えることが多い。

 2002年にキャリアコンサルタント5万人構想というものが、厚生労働省から出され、官民合同で5万人のキャリアコンサルタントを養成することを目標にして、各種団体がそれぞれ厚生労働省の認可を受けて養成講座と認定試験を行なっている。社団法人産業カウンセラー協会もそのなかの一つとして、キャリアカウンセラーの資格も認定しています。これらの資格は、標準レベルキャリア・コンサルタントと呼ばれこの資格保有者は2008年4月の段階で約4万人といわれている。現在では5万人を超えています。

 私自身、人材紹介の仕事をしていく中で、求職者の方と面談することが多いが、その面談の中では、「入社試験に合格するためには」ということを通して、求職者の行動変容を促す工夫をしている。
求職者の中には、退職の理由として、これまで在籍した会社の問題点ばかりを指摘して、これまでいた会社がいかに酷い所であったか、労働環境が悪く、不正なことまでやっていたかなどと言う事を説明しようとする人がいます。「だから退職しました」ということを正当化しようとする人がいるのでかす。自分は向上心が強い人で、前の会社を退職してまで、留学に行ったり、資格試験の取得に励んできました、などと言う事をアピールになると思って強調しているひとがいる。そんなことを言っている間は、次の会社の入社試験に合格するはずかないことに気づかない。
自分は一生懸命やってきたけど、評価されなかった、自分はもっと評価されるべきだから周りの環境を変えたいという転職理由を持ってくる人が実際に多い。しかし、そのままの否定的な固定観念を続けていたのでは、職場を変えたり仕事内容をかえたところで上手くゆく事はありません。
 「入社試験に合格するため」という共通の目標を掲げて、ポジティブで肯定的な考え方に変化しなければ、「入社試験に合格」することはできませんよということで、求職者の行動変容を促します。
 まず、面接試験では、これまでいた会社のことを「とにかく褒めろ」ということを助言します。自分を育ててくれて、ここまで仕事ができるように指導してくれたのは、これまでいた会社のおかげです。上司に恵まれ、同僚にも恵まれ、後輩にも恵まれてきました。だから私は仕事の上で大変高いスキルを身につける事ができました。残業が多く、土日出勤も多くそれもすべてサービス残業で・・・などと否定的な表現をするのではなく、残業も多くほとんどの業務を自分に任せてもらえたので、1年間の実務経験ですが3年分以上の経験と実力をつけさせて頂く事ができましたと面接でアピールすることをアドバイスしています。面接で上手くアピールする為には、本気でその気持ちになり、これまでいた会社の人に感謝する気持ちにならないといけません。「今日、この面談を境に過去に感謝してポジティブな発想に切り替えましょう。」とアドバイスします。
ほとんどの方は理解して頂き、良い話が聞けました、考え方を変えてみますと言って、職務経歴書からポジティブな表現に修正してきます。

 私のこの理論は、中村天風の天風哲学に基づいています。天風哲学は、「今日ただいまの状況がどうあろうと関わらず」というところからスタートしています。「たとえ身に病があっても、心まで病ますまい。たとえ運命に非なるものがあっても、心まで悩ますまい。否一切の苦しみをも なお楽しみとなすの強さを心にもたせよう。」ということです。病があろうがなかろうが、運命が良かろうが悪かろうが、それには関わりなく、「元気です! !」ということを信念しようということです。
 天風理論では、観念要素の更改法という技法を使って、消極的な考え方から積極的な考え方へと行動変容させます。行動療法的に、積極的な行動を、強度と頻度を使って繰り返すことにより、積極的な行動や考え方がとれるようになってゆくのです。
 中村天風先生は、天風理論を組み立てるまえに、心理学や哲学のカウンセリング技法を研究していました。そのような理論のなかから、ご自身の技法として編み出されたのだと思います。
 私自身は人材紹介の面談を通じて、一人でも多くの人がポジティブで肯定的な気持ちで新しい職場に適応していって頂きたいと願っています。転職相談の面談を通じカウンセリングの技法を応用してゆきたい。そのためにもカウンセリングの技法を高めて実際に応用できるように、修練してゆかなければならないと思っています。

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