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平成29年1月例会報告

日時  : 1月12日 木曜日 18;30 ~ 20;30
テーマ :アメリカ大統領選について
場所  : 港区新商工会館
参加費 : 1000円
担当  :石田 金次郎

2017年1月7日までの日本経済新聞記事からトランプに関する記事を抜き出し「トランプ大統領と世界」としてまとめた資料をネタにして意見交換しました。

(アメリカ大統領選)
先ずは、アメリカ大統領選について、11月9日の記事で選挙人の獲得結果がクリントン232人、トランプが306人で最終的に確定した。このような結果をもたらした要因は何なのか、12月2日の記事では、ニューヨーク市立大学のブランコ・ミラノビッチが世界規模での所得変動を分析した「象のチャート」、と米国国家情報会議がまとめた国力指数をグラフ化した「グローバルトレンド2030」を掲載していた。
「象のチャート」では、縦軸に1988年~2008年の20年間の実質所得の伸び率、横軸に所得、のグラフである。これを見ると、世界の所得のトップの1%と30%~60%の所得層の実質所得が60%増加している。が、先進国の中間層は10%以下の低い伸び率になっている。これは、グローバル化とIT化で一握りの金持ちと中国やアジアで勃興した中間層に恩恵を与えたと分析している。
近未来予測の「グローバルトレンド2030」では、米国の国力は2040年代までは当面揺るがないとしているが、その後中国に抜かれる表が描かれている。その国力とは、GDP・人口・軍事費・技術投資・健康・教育・統治という要素から算出した国力と説明している。
 12月19日のコラム「エコノフォーカス」では、1980年代末から進んだグローバル化では新興国経済が急成長し、国家間の所得格差が縮小し、取り残されたのが欧米の低中所得層で、格差が広がった。技術進歩はITを使いこなせる一部の人と、仕事を奪われる人の二極化を招いた。そして、グローバル化の進行と並行して先進国の低成長が中間層の所得増を阻み、格差を助長した。米国の白人労働者層の不満の爆発でトランプの勝利となったと大統領選を分析している。
 12月15日の毎日新聞では、フランスの歴史人口学者であるエマニュエル・トッド氏の意見を載せている。「トランプ氏が勝ったのは真実を語ったからだ」、「トランプ氏の勝利は経済グローバリズムの流れを作った米国がグローバリズムに耐えられなくなってきた事を意味する。世界にとって転換点となるだろう」などである。
現在世界では、色々な問題を抱えている。シリア問題、IS、米ロ、米中、BREXITなど有り、トランプが勝った要因の分析は、今後の世界の予測を考える場合大いに参考になるものと思う。

(トランプ政策)
 トランプの政策であるが11月15日にはトランプ氏のネット演説をしている。
 それによると、最初の100日で実行政策を提示するために、政権移行チームを作って、新政権の人選を進める。トランプ氏の政策の原則は、「米国第一主義」、「雇用を作り出す」、「TPPは脱退する」、「雇用創出の妨げになっている規制の撤廃」、「サイバー攻撃から基幹インフラから守る」、「移民問題」、「退職した政府高官のロビー活動禁止」などで、中間所得層を立て直していく」としている。

(トランプ政権移行チームと現れた陣容)
 11月13日の記事で、トランプ政権移行チームは身内中心であるとし、副大統領予定のマイク・ペンス氏を委員長に6人の副委員長と4名の委員で構成されている。11月30日には、ホワイトハウスの大統領主席補佐官には共和党全国委員長のフリーバス氏、同大統領補佐官(国家安全保障担当)にフリン氏、上級顧問にバノン氏、閣僚級として司法長官以下6人、12月12日には、国務長官にエクソンCEOのティラーソン氏、12月15日には、対テロ・市場を意識し、国家経済会議議長にゴールドマン・サックス出身のコーン氏、国土安全保障長官に海兵隊退役大将のケリー氏、国防長官は中央軍司令官のマティス氏など、トランプ政権の陣容があらかた固まってきた。軍人・CEO政権といえると記している。

(トランプ新政権と外交)
オバマ政権が対立したロシアのプーチン大統領と親交のあるティラーソン氏を政権の要に置き、米外交を刷新、経済閣僚に経営者を多く登用し、国内経済を第一とする姿勢を鮮明にしている。

(TPPなどを巡る動き)
11月21日、トランプ大統領は公約通りTPPから脱退すると表明し、雇用を取り戻すために二国間交渉を進めると宣言した。19日からペルーのリマでアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議をして、TPPの重要性を改めて確認し、発効に向けて国内手続きを進める事の認識の共有しようとしていた会議に水を投げかけた。経済だけでなく政治的意味も持つTPPが暗礁に乗り上げた。

(トランプと中国)
米国の対中貿易赤字は、赤字拡大の一歩たどり、過去最悪の状況になっている。対中国対策は最重要課題の一つといえる。
トランプ氏のツイッターでは、中国が南シナ海の人工島を造成し軍事複合施設を建設していること、中国の為替操作については、「通貨の価値を下げることや中国に入る我々の製品に重い税金を課している」として批判した。又、12月3日の記事では、経済政策の主導権を狙ってか、トランプ氏が台湾の蔡総統と協議したことを報じている。そして、一つの中国論に縛られないとしている。
中国については、アメリカの潜水機奪取事件、台湾への恫喝、南シナ海での空母遼寧の訓練とこれから激突する経済問題には荒波が立っている。かっての日米貿易摩擦を彷彿とさせるような事態である。
なお、中国については、WTO協定上、米欧日とも鉄鋼問題など重視し、「中国、なお非市場経済圏」の立場を取っており、中国の反発も広がっている。

(NAFTAと米国産業政策)
トランプ氏曰く、「NAFTAは、米国にとって最悪である」。11月16日の記事で、米通商代表部資料によると、メキシコ、米国、カナダの輸出入相関図で、米国対カナダ、米国対メキシコは共に三千億ドル輸出入の規模であり、相互に依存しあっている。NAFTAをどうしようというのか、
現在、トランプ流で、キャリア社、フォードなど米国凱移転に警告を発し、メキシコへの移転は抑制されてきている。米国の雇用確保を理由に、トヨタにも口先介入してきている。

(トランプ相場と金融など)
大統領選語に米長期金利が1.8%から急上昇した。大統領選語に円安が105円から加速した。トランプの政策は、大型減税とインフラ投資、エネルギーや金融の規制緩和で米景気が刺激されると囃し、円安・ドル高となった。新興国の通貨もドルに対して下落した。これは、新興国経済の先行きに不安を生じる悪循環のリスクか。
リーマンショック以降、ドット・フランク法、グラス・スティーガル法などの金融規制が出てきた。経済の潜在成長力は鈍化の一途を辿っていること、世界の中央銀行は金融緩和で対応し、中央銀行の資産規模は拡大の一途であり、先進国では、マイナス金利で対応している。
こういう中で、トランプ氏の唱える積極財政への期待は膠着状態を解くかとの見方が出てきているが、トランプ構想が空手形となり、米国が保護主義やドル安志向に走れば混乱の展開になるとの論もある。

(今後の世界の動き)
12月5日の記事では、世界の政局について、欧州では重要な選挙・投票が続くとして、イタリアの国民投票でレンツイ首相が辞任、オーストリア大統領選ではリベラル派が勝利し極右の台頭を抑えたが、17年3月にはオランダ議会選、春にはフランス大統領選、秋にはドイツ連邦議会選と続き、極右勢力の拡大の見通しや影響が関心事としている。
クリミヤ問題やシリア問題での対外強硬路線をとっているロシア経済について、リーマン色以降立ち直ってきたGDP成長率は、経済制裁により15年、16年とマイナスに落ち込み、ロシア経済は不振が鮮明になっている。
BREXITについては、ほとんど触れられていない。

以上がその折に論議した内容である。
が、TPP離脱、7カ国の入国禁止など大統領令を頻発し、7カ国の入国禁止令は法廷闘争になっている。閣僚の認証もまだ5人と遅々として進んでいない。まだ激しく情勢は変化しており、フォローしていかなる政策がとられるのか注視していきたい。

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