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平成31年1月例会報告

日時  : 1月10日 木曜日 18;30 ~ 21;00
テーマ :城野先生遺稿「経済摩擦と日本経済発展の秘密」
場所  : 港区商工会館
参加費 : 1000円
担当  : 古川 彰久

1月10日 木曜日 18;30 ~ 21;00
テーマ : 城野先生遺稿「経済摩擦と日本経済発展の秘密」
場所  : 港区商工会館
担当  : 古川 彰久

城野経済研究所発行の「月刊脳力『脳力開発の理論と実践』」最終号:昭和61年4月号に掲載の城野先生遺稿、「経済摩擦と日本経済発展の秘密」を論題にし、30年以上前と現在の日本経済について考えてみよう。
要旨
1. ちがいがわからねば協調はできない
(1)経済摩擦:欧米の主張、すべて日本が悪い。輸出ばかりして、他国の品物を買わない。不当に輸出を抑えている。
(2)日本の品物が外国に買われ。外国のものがそう入ってこないのは、外国の人が日本品を大歓迎しており、日本人の方では、外国製品よりも日本品の方が質もよく値段が安くいつでも手に入るからでしょう。
(3)欧米と日本との社会体制の違い:欧米は人口の10%ぐらいの大金持が富の40%を所有しているといった体制。
(4)日本の経済はいいものをたくさん作って安く売るという根本にのっとり、欧米のような大きな上下の格差がなく大衆市場である。
(5)この東西の差異は当分つづくものとみねばなるまい。協調はその差異を残して行われるという限度がある。
2.日本経済の解明は、欧米の「経済学」ではできない
(1)戦後の日本は人口が増え土地は四つの島だけとなり資源は何もない。世界で最も貧乏になる条件である。そこで世界中の「経済学者」が、日本経済が戦前までに回復するには百年はかかるとか永久に回復はしないという「予言」をしていた。
(2)ところがこの「予言」とは反対に数年にして日本経済は回復し、その後もどしどし発展しとうとう世界一に栄えた経済をつくりあげてしまった。欧米の「経済学」からいうとどうしてもこうなる筈はないのである。
(3)日本人は戦後の経済発展の中でいくつも欧米の「経済学」で悪といわれていることを実行してそれを善に変えてしまっている。
(4)インフレとは欧米の経済学によれば物価暴騰で民衆生活はひどい苦しみを受け経済は崩壊してゆくという悪である。ところが、生産が爆撃その他でストップして極端な物資不足であった戦後の日本経済は、生産回復までの不足状態の継続をインフレという手段で少しずつ調節してゆきちゃんと回復して継続生産が発展するようにもっていったのである。インフレは消費規制として作用するとともに資金集中化と貸出資金の進出として作用したのである。こういうことをやってのけた経済は日本以外にないのである。
(5)日本の国債は百兆円を越え日本人は赤ん坊に至るまで一人が86万円の借金を背負い、このままゆけば国債という借金はますますふえ、日本人は借金地獄に苦しみインフレは進行し生活は低下する。これがこれまでの経済学、財政学で説かれてきた国債亡国論である。日本の国債は、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ四か国の国債の合計よりも多い。しかし、インフレにはならず物価は安定しており生産は発展し世界一の黒字国になっている。欧米大国の合計よりも日本の国債が多いのはそれだけ日本国民が資産に余裕あり、階級差別がなく上下のギャップの落差の少ない日本社会は国債という形での財産保全を全社会的なものにしてしまっている。
(6)労働組合が勢力をもって賃上げをつづけると企業の利益が減り自己資金の蓄積が阻まれ経済発展を阻害するというのがこれまでの「経済学」の見方である。ところが日本では賃上げで何千万という国民の収入を豊かにし、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、自動車とあらゆる生活物資の需要を増大させ、松下、日立、東芝、トヨタ等大企業を育て上げた。
(7)欧米の「経済学」の観点の束縛から脱出せねば日本経済発展の秘密はわからない。

論点:
1. 国債について
城野先生がこれを書かれた当時から、30年以上の時が経っており、この間に日本経済にも大きな変化が起こっているといえよう。
まずは国債についてどのような変化があったのか見てみよう。
国債残高は、昭和60年度末では133兆円でしたが、平成30年度末は883兆円の見込みである。大幅に増加しているが持ち分シェアーをみると、海外の持ち分は10%程度であまり変動がなく、日本銀行のシェアーがこれまで20%以下であったものが近年45%強と大幅に増加している。
これは国債が日本国の借金というよりも、日本国内の経済対策に活用されており、近年の金融緩和対策としても活用されているとのことである。
ただし、今後の問題として国債の循環が国家財政の負担になってくるとその回収の為に消費税等税金の増税になってくる恐れがあります。

2. 世界情勢の変化と日本経済
(1)貿易収支に見る経済情勢の変化
日本の貿易収支はバブル期をはさむ1980年代から1990年代までは他国を上回る大きなプラス(黒字)を記しており、この時期、世界最大の貿易黒字国だったことを示している。1980年代末に日米貿易不均衡の是正を目的にはじまった日米構造協議の結果、内需拡大の掛け声の下、バブル崩壊後に景気浮揚策として公共事業がかってないほど増やされ、その後の膨大な国の債務拡大につながった。
日本の貿易収支は、東日本大震災・福島第一原発事故が起った2011年に天然ガスの大量輸入によってマイナスに転じて以降、マイナス幅が拡大した。その後、2015年から回復に向かい、2016年には再度黒字化した。
先進国の中では、米国がかなり以前から大きな貿易赤字が継続・拡大しているのに加え、英国、フランスが相次いで貿易赤字国として目立つようになった。
今や世界の工場と呼ぶにふさわしい国となった中国は、2005年から貿易収支の黒字を大きく上昇させて来ている。
一方、石油・天然ガスといった資源輸出が拡大し経済の屋台骨となっているロシアでも2000年頃から貿易黒字が拡大基調にあったが、2015年以降は低下傾向に
転じている。
最近では、中国、ドイツ、ロシアの貿易黒字、米国、英国、フランスの貿易赤字の対照が目立つようになってきている。
日本は2010年代前半には貿易赤字化が目立っていたが、その後、円安の影響で貿易赤字は大きく縮小し、黒字転換したのが目立っている。
2015年に中国の貿易収支の黒字が大きく拡大したのは、輸出入ともに減少する中で、特に輸入が、石油など一次産品価格の低下、及び「新常態」移行に伴う構造調整のもとでの内需の低迷によって、大幅に鈍化したためである。

(2)米国トランプ大統領出現に見る世界情勢の変化
①トランプ体制出現の背景
 トランプは、「反エスタブリッシュメント」を支持基盤にしている白人労働者たちの、「われわれは既存のシステムの被害者、犠牲者である。そのようなシステムは壊れてしまえばよい(破壊願望)」という主張をうまくすくい取り、その「救世主」のような立場に立って大統領選挙に勝利した。
②それに対して「米国の民主主義も終わり」だと批判することは簡単だが、その一方でそのように変容する社会の中で「居場所」を失っていた人々を、(そのやり方が多少荒々しい方法であったとしても)もう一度政治プロセスの中に戻したという点をみると、米国の政治制度が機能していると評価することもできる。つまり「米国民主主義の終わり」を意味するのではなく、むしろ「米国民主主義の健全さ」を示しているということもできよう。
③トランプは、国内的には排外的なトーンの主張を繰り返し、国際的には多国間の枠組みやルールに対する懐疑の念を表明した。そうした一連の既存のシステムによって白人労働者が苦しんでおり、それを破壊することに自分の存在意義を求めた。
既存のシステムに主なものとしては、政治的・道徳的タテマエ(PC)、ワシントン(職業政治家、ロビイスト、シンクタンク、メディア)、グローバリゼーション(移民、自由貿易、地球温暖化対策)、多国間枠組みなどがある。それらは米国を豊かにしているというよりは、「足かせ」になっていると見ている。
この流れの中で、トランプ大統領は、TPP、NAFTA、UNESCO、パリ協定などからの離脱を表明し、イランの核合意の見直し、エルサレム首都認定問題なども懸念されている。さらにこれまでの歴代大統領の多くが常に語ってきた民主主義の重要性、報道の自由、人権・法の支配など普遍的な価値について、トランプ大統領はあまり語ることがない。

(3)日本のとるべき方向性
トランプ政権に対して、日本がリベラルな国際秩序を守るという点から、日米関係を基本としながらインドやオーストラリアなどとの連携を強化していくことは重要である。
トランプ大統領はあまり理念・理屈で説明しても通らないので米国の利益に結び付ける形で説得していくのがいいという意見もあるが、一方でアメリカに縛られない自主・平和の国、アジアの共生を求める方向もあります。

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