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令和2年7月例会報告

日時  : 7月9日 木曜日 18;30 ~ 21;00

テーマ :事業再生と情勢判断

場所  : 港区立商工会館

司会  : 塩沢 貴良

事業再正と情勢判断の要旨
事業再生の現場で役に立った情勢判断
Ⅰ 講演概略
実施企業 創業  50年以上
     業種  卸売業 
     年商  9億円
     社員数 25名
1. 用語説明
⑴ 事業再生とは
事業を抜本的に改革することで収益を 上げられるように改変し、再生することであり、企業が倒産状態に陥った場合に、そのまま会社を清算するのではなく、新たな経営計画を事業主とともに立て、債務の繰り延べなどを行い、収益力のある・事業を再構築すること。ターンアラウンドとも呼ばれる。
⑵ 認定支援機関とは
中小企業・小規模事業者が安心して経営相談等が受けられるために、専門知識や、実務経験が一定レベル以上の者に対し、国が認定する公的な支援機関。
具体的には、商工会議所、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士、中小企業診断士、民間コンサルティング会社などが認定されている。
塩沢貴良は民間コンサルティングとして認定支援機関の業務を行っている。
2.戦略の決定
⑴ 社長の生活を考える。
  私が教えて頂いた事業再生はまず、代表者及びご家族の方の生活を考慮する。年齢を加味し、今住む家に継続して住む方法を考え、場合によっては事業継続を諦めた場合、年金などで生活できるか、その後の生活費の工面はできるかを検討する。
⑵ 事業継続の可否判定
  事業継続可能かどうかは、①有利子負債の元本、金利を止めて、事業が継続できる資金繰り、収益構造が成り立っているかどうか。②黒字化はおおよそ3年以内に可能かどうか。などを元に⑴と⑵を検討し、戦略を決定する。
  今回の事例では事業が3年以内に黒字化が可能と判断し調査報告書を纏めた。
3. 情報収集
  情報収集については城野宏の戦略三国志下巻を参考にしている。
⑴ 戦略なしに集めた情報は役に立たない(P.35)。
改善する上では「後いくら粗利を改善すれば事業が黒字化できる」という戦略がたってこそ、情報収集が生きてくる。学校で習った方法はまずは予断を許さず情報収集とあったが違和感があった。この方法では漠然としすぎており、ヒアリングの数をこなしてもいざ計画を作ろうと見直しても、問題点をつかめない場合が多い。ずっと売上が下がってきている会社は「どこに問題があるのか?」、「何を聞けば良いのか?」は戦略があってこそだと考える。
⑵ 自らの足でつかむ(P.8)
現在のコロナ下であると、Zoomなどのオンライン会議機能を利用する場合も多い。実際に今回の案件に対しても、他のコンサルタントはZoomを利用する場合が多かった。Zoomは否定しないが、現場を見ないとわからない事案が必ずある。Zoomではヒアリングはある程度可能だが、担当者の画面以外の背格好、靴などの情報、仕事を楽しんでいるかどうか、周りを気にしているかなどは実際に会ってお話を聞かないと収集できない。
また、決定的なのは仕事風景を観察知ることである。ヒアリングの内容が正しいか正しくないかは実際の注文の電話の受け方、伝票の入力、商品のピックアップ、梱包、発送のやり方まで自分の足を使って目で見ないと実態がつかめない。情報の甲乙丙の甲情報はZoomではなかなか収集することが難しいと感じている。
⑶ 片耳政治では危ない(P.23)
大韓航空機撃墜事件をわかりやすく解説してくれていて参考になった。
今回の案件でもよくある「営業の言い分」と「仕入事業部の言い分」などは一見ヒアリングすると相反する意見が出る場合が多い。実際の仕事ぶりを見、実際の数字データと照らし合わせ、どちらが戦略に近づける問題点を指摘しているのかを検討する。数字データと発言が一致した場合には甲情報として捉え、計画書に役立てている。
4.改善重点カ所の決定
事業再生計画での重要な部分である窮境要因を決定する。窮境要因とはこの会社がどうして売り上げが下がり、現状に至ったかであり、これをつかむことと、改善することが計画書の骨子となる。
今回の事案の場合は「お客さま第一主義」を忘れて行動していることが実際のヒアリング、仕事ぶり、データから見ることができた。その中で1番の問題点が「在庫管理」にあることが判明した。
5.まとめ
  現在も進行中の案件である。クライアント企業では、コンサルに依頼する会社は当社で3社目である。過去のコンサル会社2社は失敗してきている。
  報告書がまとまり、今後は実施段階に移る。機会があればまた報告させて頂きたい。
Ⅱ 演者として今回重要と思うポイント
1. 戦略の決定
戦略と戦術の意味を理解して使い分けている専門家は少ない。経営を考える上でも「いろはのい」であると考える。高い授業料を払っても決して、学校では教えてくれない戦略と戦術は義務教育でしっかりと教えるべき事柄だと考える。
この考えなくして今回の計画書は立てられなかった。
2. 情報の甲、乙、丙
世の中では区別がついていない。一番わかりやすい例がコロナウイルス情報である。人は恐怖に弱い、政治家も情報に惑わされた民意に弱い。現在はコントロールを失っていると思う。今回の事案では丙情報が非常に多かった。また必要な甲情報は会社に存在せず、非常に手間がかかったが集計し直して作り上げた。この甲情報が結果的にはクライアントの心に
一番届いたように思う。丙情報を元にした計画書は分厚いばかりで、改善の役に立たない。
3. まとめ
戦略が明確であると戦術は不思議と頭に湧いてくる。
具体的にいつまでに4,000万円改善と戦略が決まると、「多分ここ」とあたりが見えてくる。実行計画に日付を記入してやるだけである。情判会のメンバーでは当たり前の考え方だが、このことを世の中の方は知らない。城野先生の残したことを現在ほとんどの方が知らないのは、誠に日本にとっての損失であると考える。
Ⅲ 城野宏の戦略三国志の利用方法
1. 経営のバイブル
本質が見抜けるようになる。時間の節約となる。経営者だけでなく、学ぶ意思のあるもの誰もが勉強になる良書である。
2.事業承継
編者である西順一郎先生に聞いた所、城野先生はこの本は後継者のために書いた本であるとおっしゃっていました。今、日本では中小企業の経営者の高齢化が進んでいる。会社を今後も継続させたいという経営者の思いをつなぎ、ひいては
経営を学ぶ上でのバイブルとなるように章立てされているのでとても読みやすい。
Ⅳ 参加者の意見
1. プロジェクトマネージメントの考え方。
2. 相手と組む場合は戦略的対立であるかどうか。
3. 中心骨組みをまずつかむ。
4. 体系化し他の事業再生の現場で広げる。
以上

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