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令和2年9月例会報告

日時  : 9月10日 木曜日 18;30 ~ 21;00

テーマ :2017年10月の例会で報告した、
      [M] X [H] = ± 論を再度発表させて頂きます


場所  : 港区立商工会館

参加費 : 1000円

演者  : 榊原 高明

1. 式の表現変更
前回発表の[M] X [H] = ±は今回、M・P=±と変更しました。
理由は[H]をhuman と置くと人間全般を指し、M(無記)に対する人間の係わり方が漠然とするため。個人P:Person )の方がMとの係わり方がより明確になると考えました。

2.例会発表後の本式の発展
森政弘さんの著書をさらに読み込んだり、いろいろな事例について考察してみました。
新たに参加された方もおられるので、前回発表の内容について概略の説明をさせていただきました。詳細については2017年10月の例会報告をご参照ください。
それを基に本論をさらに進化させていきたいと考えております。
(1)「三性の理」について
三性とは 善・無記・悪。詳細はコピーで説明。
1)大学研究室のカギの管理
初めは適当な管理(無記)であったが、不心得な学生がいて問題が起きたため助手が厳重に管理する方式(善)に変更。助手がカゼで休んだことで、一台の車も使えず。「善」が不可能に。
ルーズなやり方は「悪」、厳重な管理は「善」とみるのが一般的である。厳重な管理をすれば善が可能と錯覚している。
重要なのは学生の心が整っていなかったために他の人が車を使えなくなった(悪)が現れた点である。カギを厳重に管理しなかった、これは本質的原因ではない。
何か不都合が生じると、直ちに規則を作り、管理を厳しくし、取り締まりを強化する。心の側に手を付けず、「無記」→悪と取り違え、悪が排除できたから良い社会になると早合点する。「無記」が排除されれば、善は生じず、悪がない代わり善もない。
こうなるとやり切れない、しみったれた、活力に欠けた、死んだような面白くない社会になってゆく。善がなくなれば人々の顔つきはいきいきしなくなり、不満に満ちた、むっつりした顔が増えてゆく。
まとめてみると、初め自由で伸びのびした社会→不心得者が出た→取締りを強化→窮屈な社会へ→法律、規則がどんどん増え→矛盾だらけの、にっちもさっちも行かない世の中へ。
大切なのは、人々の心を整えること、心の掃除を皆がやらねばならない。人の心は常に汚れてくるから、これは日々必要である。これなくしてよい社会は訪れてこない。
(2)ビジネスの側面から見る
M・P=±の"-"面に着目してみる。
残念だが、人の心には悪が働くことがあり、現実としてこの世に悪い人も多数存在する。仮にこの世界に菩薩のような人ばかりなら"-"の面は現れようがない。
いろいろな人間=PがMに係るわけであり、どうしても"-"が表出する。であるならば、"-"を事前に予測、予想し、これを十分に考察することが重要である。これは個人のレベルから国家、世界レベルまで渡る。
ビジネスの面からこれを考察すれば、これに対処、対抗する技術、商品、またサービスを提供できれば多方面にビジネスチャンスが見えてくる。立派に事業として成立するはずである。
現実に、インターネットへのハッカーなどの攻撃に対処する企業は多数存在する。トレンドマイクロやソースネクスト等である。
特に人類の存続に係る影響が大きな技術やシステム、仕組みなどについては、政府や世界レベルで"-"面が生じる前に十分な事前対策が大切と考える。
この世にあまりよく物事を考えない人やずるい人、そして悪い人が存在する限り、M・P=±の"-"はどうしても現出してしまう。それ故に、この"-"に注目、注意を払えば、アクティブの反対であるパッシブ(受動的)ビジネスの種はいくらでも見つけられうる。
ここで留意すべきは、ただ"-"→悪を消し去ることを考えるのではなく、森政弘さんが再三言っているように、善は悪転することがあり、悪も善転可能であるということ。こう考えねば「無記」も消し去って、つまらない世の中になってしまう恐れについても心得ておかねばならない。
(3)改めて"P=人"がすべて
M・P=±。これが現わしているのは、Mに対するPの係り方、つまりPのレベル(人間性、精神、心、知識、経験など)ですべてが決まってしまうことを示している。
戦後の我が国のGDPを例に揚げる。
我が国の条件:自給できる天然資源は石灰石のみ。他は鉄鉱石や石油をはじめ、すべて輸入に依存。小さな島国に多くの人口がおり、通常考えれば経済発展には不利な条件である。
2000年まで日本はGDPが世界2位であった。現在は中国に抜かれて3位。
バブル前はエズラエル・ボーゲルの著書で「Japan as NO1」とまで言われました。
注目すべきは"無い無いづくし" の敗戦国日本が短期の内にここまで発展できたこと。何もないところから何かを生み出し豊かになる、これは人々(P)がそのように働き、努力した結果のなにものでもない。
しかし、世界の頂点に近づいたと思ったとたん崩壊(バブル)。それから失われた10年、20年と言われる。高名な経済学者が「バブルは人々の道徳が低下したときに発生すr」という趣旨のことを述べている。正にPの質の低下がバブルを招いたのではないか。
私見であるが、台湾でのビジネス経験から、日本の特に大企業の経営者は世界レベルに達していない者が少なからず居るように思われる。台湾の経営者は無茶じゃないかと思うような事業に果敢にチャレンジする。アクティブである。
昨今の我国の超大企業、松下、東芝、シャープ等々の不祥事や経営不振を見るにつけ残念で仕方ない。従業員は世界レベルから判断してもそれほど劣っているとは思えない。つい口ぐせで「日本はトップ不況、経営者不況なのだ」と言いたくなる。
上場企業の社長の資質、レベルを格付けする企業は出ないのか。商売になるはず、投資家にはきっと受けるでしょう。
別の事例――
(株)ジャパンディスプレイ:2012年、日立、東芝及びソニーの液晶事業を統合し、「日の丸液晶」として設立。
政府ファンド3500億円支援(税金)、さらに追加1500億円(産業再生機構)を支援。これだけ巨額の支援を受けたにもかかわらず、社長が何人代っても、やることなすこと失敗続きで、赤字体質から脱却出来ず。海外企業に買い取られる話まで出ている。
対して、先ほど不振企業例で挙げたシャープは、台湾企業である鴻海精密に買収後、鴻海流の経営で立ち直ろうとしている。
経営の無記(M)が「企業の運営の仕方」とすれば、企業の業績はM(経営)・P(人、経営者)=±で決まってしまう。
米国の事例――
古い話だが、米国の中規模ステッパー企業が、先端装置の開発遅れで苦境に。社長が交代し、中位装置でも使える汎用デバイス分野に市場を見出し業績が回復した実例がある。前の社長時代は業績不振、後から来た社長で復活。この間会社自体は何も変わっていない。社長=Pが代っただけである。

3、P(人)の質を上げるには
M・P=±の式を考察するにつれ、改めて"人"がカギ、すべてだと考える。
良い方の事例が発表の中で取り揚げたシンガポール。
小さな漁村で赤道直下の熱い国、教育レベルもそれほど高くなく、人口も少ない。こんな発展には不利な条件の国家。しかし、ここにリー・クアンユーというトップリーダーが誕生し、国を引っぱって、今やGDP世界ランキング8位である。日本は26位。仮定として、もしリー・クアンユーという指導者が出なかったら、シンガポールはここまで発展出来たでしょうか。P=人の影響力の偉大さをまざまざと感じます。
P=人次第でいか様な結果にもなるわけです。
M・P=±の式から、最も重要なのは人の質を向上させることでしょう。
ここから、我が国の政策プライオリティー №1は当然教育にあるべきでしょう。当然、知識ばかりでなく森政弘さんが言われたように心、精神が重要です。
私見ですが、文科省の旧文部省部門は教育政策で失敗を繰り返しており、到底これから激変して行く、時代に先駆けた人作りには全く期待できません。どんな教育政策を採るのか、国民全体で議論する時期ではないでしょうか。
なお、OECDの発表では、日本の公的教育支援は対象38ヶ国中下から2番目。
今、本気で"P=人"に国が総力を上げて投資すれば、まだ間に合うと期待しています。
海外で仕事をし、外から日本を見た経験のある者として、日本人にはまだまだやれる力が十分にあると信じています。
                  以上

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